著者
底田 辰之 澤井 俊宏 岩井 勝 野村 康之 竹内 義博
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.55-59, 2007-04-15 (Released:2007-11-15)
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

症例は8歳,男児。3歳時に自閉症と診断され,養護学校に通学中である。平成17年11月16日,生来初めてのインフルエンザHAワクチンの接種を受けた。接種3日後より発熱があり,近医にて解熱剤,抗生剤を処方されていた。改善がないため再診したところ,強い炎症反応がみられたため入院となった。熱源不明のまま抗生剤投与を続けられたが,発熱の持続とともに急激な腎機能低下が判明したため当科に紹介入院となった。軽度の尿異常および尿中β2ミクログロブリンの著明な高値などから急性尿細管間質性腎炎を疑い,持続血液濾過透析を行いながらステロイドパルス療法を実施したところ,透析開始後6日目で利尿が得られ,以後順調に回復した。腎生検の結果から急性尿細管間質性腎炎であることを確認した。患児に投与された種々の薬剤を抗原としてリンパ球幼若化試験を実施したところ,インフルエンザHAワクチンの関与が疑われた。
著者
竹内 義博
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.451-455, 2008-11-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
20

神経伝達の視点から注意欠陥/多動性障害 (attention deficit hyperactivity disorder; AD/HD) の病態をみると, 前頭葉-尾状核・被殻・淡蒼球におけるドパミン神経系の機能異常が主体で, これにノルアドレナリン神経系, セロトニン神経系の異常が関与していると考えられる.一方, 自閉症スペクトラム障害 (autism spectrum disorders;ASD) では, セロトニン神経系の異常が基盤にあり, 細胞異動の障害, 抑制性神経伝達と興奮性神経伝達の不均衡, シナプスの形成・刈り取りの異常が関与していると考えられる.ASDに対する今後の研究は, セロトニン, グルタミン酸の神経伝達の異常と, reelin, neureXin, neuroliginなどを中心に展開して行くであろう.
著者
松井 潤 髙野 知行 龍神 布紀子 安齋 祐子 吉岡 誠一郎 竹内 義博 後藤 雄一
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.363-366, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
13

Leigh症候群を発症後に, mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes (MELAS) を合併し, ミトコンドリア遺伝子の10191 T>C変異が同定された1例を経験した. 症例は26歳女性. 11歳時に外斜視で発症し, juvenile Leigh症候群と診断された. 26歳時に頭部MRIで血管領域に合致しない梗塞像が多発し, MELASを合併したと診断された. 文献考察からMELAS/Leigh overlap症候群の臨床像は発症年齢, 症状, 予後の点でLeigh症候群とは明確に異なる点が推測された. Overlap症候群の表現型の多様性はヘテロプラスミーを含めた多面的な遺伝要因の関与が推定された.
著者
澤井 俊宏 阪上 彩 野澤 正寛 岩井 勝 野村 康之 竹内 義博
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.172-175, 2008-11-15 (Released:2009-07-10)
参考文献数
10

症例は11歳,女児。生下時よりEllis-van Creveld症候群 (EvC症候群) と診断され,経過観察されている。平成18年の学校検尿で軽度の尿蛋白を指摘された。近医を受診し,早朝尿蛋白および臥床での尿蛋白が陰性であったことなどから起立性蛋白尿と診断された。翌年の学校検尿でも尿蛋白を指摘され,早朝尿蛋白も軽度陽性となっていたが,この時は精査されなかった。EvC症候群の定期受診の際に高血圧に気付かれ,血液検査で腎機能低下が判明し当科に紹介入院となった。腎生検の結果はネフロン癆に合致する所見であったため,腎機能の回復は困難であると判断した。患児は現在,腹膜透析を実施しながら腎移植待機中である。