著者
竹本 亨 赤井 伸郎 沓澤 隆司
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.163-180, 2019 (Released:2021-07-28)
参考文献数
13

コンパクトな都市の方が1人当たり歳出は低いが,コンパクトな都市へ再構築することは簡単ではない。しかし,何もせずに手をこまねいていたらならば,今後予想される人口減少によって,今以上にコンパクトでない都市へと変貌(非コンパクト化)してしまう可能性がある。本稿では「基準化された標準距離」を都市のコンパクト化の度合いを示す指標として用いて,人口減少に伴って進む非コンパクト化が財政に与える影響をシミュレーションした。その結果,非コンパクト化による歳出増加額は,全体で2030年度は2867億円,2045年度は5549億円となった。特に,人口規模が小さい市町村において,非コンパクト化の影響が大きく出ることも明らかとなった。さらに,「基準化された標準距離」を現在よりも10%および20%縮小するという政策を実施すると,最大で10%の場合に4568億円,20%の場合に8640億円の削減効果が示された。
著者
沓澤 隆司 赤井 伸郎 竹本 亨
出版者
会計検査院
雑誌
会計検査研究 (ISSN:0915521X)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.31-52, 2023-03-17 (Released:2023-03-17)
参考文献数
19

「コンパクトシティ」は,都市内での移動距離が短いため,歩行や歩行を伴う公共交通が移動手段に選ばれることが多く,その結果として歩行時間が長く住民の健康に良い影響を与えている可能性がある。しかし,都市のコンパクト度と歩行時間との関係や歩行時間と健康状態との関係は先行研究で分析されているが,コンパクトシティの形成が住民の健康状態を改善するかどうかは十分に解明されていない。 そこで,都市のコンパクト度が住民の健康状態に与える影響について,パネルデータを用いた固定効果分析を行った。本稿では、住民の健康状態を示す指標として「要介護の認定を受けた者が高齢者に占める割合(要介護認定率)」や「国民健康保険の被保険者1 人当たり医療費」を,都市のコンパクト度を示す指標として「基準化された標準距離」を使用した。 分析の結果,都市のコンパクト度が高い市町村ほど,①要介護認定率は低い,②健康の悪化がより深刻な要介護度の高いグループごとの認定率は低い,③国民健康保険の被保険者1人当たり医療費は低い,という3 点が明らかとなった。 この分析結果を前提とすれば,コンパクト度の高い都市を形成していった場合には,歩行時間の増加を通じて住民の健康状態も良好となり,将来的に要介護認定者に対する給付額や住民の医療費は低くなると推察される。よって,本稿の分析は,コンパクトシティの形成が介護や医療といった社会保険に係る財政 支出を抑制する効果を持つ可能性を示唆するものと言える。
著者
沓澤 隆司 竹本 亨 赤井 伸郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.190-212, 2020 (Released:2022-01-19)
参考文献数
22

都市の中心部に人口が集中した都市(コンパクト度の高い都市)においては,住宅地等の地価が上昇する可能性がある。その背景として都市のコンパクト化が行政サービスの効率化および,住民の利便性の向上や経済活動の効率性の上昇をもたらしている可能性が推測される。本稿では,都市のコンパクト度が上昇する(都市がコンパクト化する)ことが公示地価等にどのような影響を与えているかについて,コンパクト度の違い,用途の別,都市の中心点からの距離帯ごとの異なる効果を考慮して,パネルデータによる固定効果分析を行った。この結果,都市のコンパクト度が上昇すると地価が上昇する関係が見られること,その影響はコンパクト度の違い,住宅地や商業地の用途の別によって異なること,距離帯別の分析では,用途全体,あるいは住宅地において,都市の中心点に近接した地域ではコンパクト度が上昇する際の地価の上昇幅は大きくなる傾向があることがわかった。
著者
竹本 亨
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.227-247, 2013 (Released:2021-10-26)
参考文献数
9

本稿は,ロシアの財政調整制度である「Федеральный фонд финансовой поддерЖки субъектов Российской Федерации(連邦構成主体財政支援連邦基金)」と同様のシステムを地方交付税制度に導入した場合をシミュレーションし,都道府県間の財政格差について現状の地方交付税制度と比較した。その結果,1人当たり歳入を指標とした場合にはその格差がより小さくなることがわかった。さらに,使用されている公共サービスの要素価格の相対的な指標を,基準財政需要額を基に本稿で作成した指標に置き換えることで,地方交付税と非常に近い配分額となることがわかった。
著者
竹本 亨 鈴木 明宏
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 社会科学 (ISSN:05134684)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.31-61, 2008-07-31

概要:本稿は、現在の地方交付税制度とオーストラリアの財政調整制度を日本に取り入れた場合との比較を行った。地方交付税による国から都道府県と市町村への財政移転をオーストラリア型に置き換えた場合をシミュレーションし、47都道府県と3,200市町村の財政格差がどのようになるか分析した。その結果、調整の原資が十分な場合には、オーストラリア型財政調整は行政コストを考慮した歳入の格差を縮小させることが分かった。