著者
杉村 真美子 竹本 正明 金澤 将史 今村 友典 中野 貴明 戸部 有希子 伊藤 敏孝
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.275-277, 2018-12-31 (Released:2018-12-28)
参考文献数
3

症例は, 14歳女子2人。2カ月ほど前から2人で自殺することを計画してインターネットで情報を集め, 通販サイトで浮揚用のヘリウムガスを購入していた。ヘリウムガスをビニール袋で互いに吸わせ合ったが死ねず, 警察へ連絡し, 警察から救急要請となった。ヘリウムガスを密閉状態で吸入できていなかったため, 身体的にも検査上も明らかな異常は認めなかった。様子観察のため入院としたが問題なく, 精神科診察の後, 退院となった。浮揚用のヘリウムガスには酸素が添加されていないため, 密閉状態で吸入すると窒息死する。この情報はインターネットで気軽に得ることができ, さらにインターネットの通販サイトで誰でもヘリウムガスを気軽に入手することが可能である。今回のように若年者でも身元確認なく手軽に購入できるため注意が必要であり, 早急な対策が必要である。
著者
高橋 哲也 武居 哲洋 伊藤 敏孝 平野 雅巳 竹本 正明 八木 啓一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.504-508, 2014-08-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1

目的:診断が遅延したWallenberg 症候群の特徴を検討すること。方法:2005年4月1日から7年間に横浜市立みなと赤十字病院へ入院した新規発症脳梗塞1,331例のうち,神経内科医によりWallenberg症候群と診断された症例の特徴を後方視的に検討した。また初診時に正診された群(初回診断群)と後日診断が確定した群(遅延診断群)の比較検討を行った。結果:調査期間内のWallenberg症候群は23例で,神経学的異常所見は失調歩行が47.8%と最多であった。遅延診断群は11例(47.8%)で,初診時診断名と外来転帰は末梢性めまい(帰宅3例/入院5例),片頭痛(帰宅2例/入院1例)であった。初診時に頭部MRIを施行された3例中2例に異常所見を認めなかった。遅延診断群は初回診断群と比較し,発症から来院までの時間が有意に短く(4.1 ± 5.7 vs 17.8 ± 19.5時間,p<0.05),神経学的異常所見数が有意に少なかった(1.2 ± 1.0 vs 2.5 ± 1.5,p<0.05)。結論:発症早期に神経学的異常所見が少なく,MRIでも偽陰性となる場合があることがWallenberg症候群の診断遅延の要因と考えられた。
著者
竹本 正明 岡本 健 福田 健太郎 盧 尚志 井本 成昭 中澤 武司 松田 繁 田中 裕
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.231-235, 2012-04-01 (Released:2012-10-01)
参考文献数
9
被引用文献数
2 4

動物の常在菌Pasteurellaが,ヒトへの全身感染を引き起こすことは稀である。今回,軽微な猫掻傷後に敗血症性ショックに至った症例を経験した。症例は68歳男性。胸部打撲後のショックとして搬送されたが,来院時の炎症反応が強く,左肘・左前腕・左側胸部に軽度腫脹・発赤を認めた。外傷は胸部打撲痕と11日前に受傷した左前腕の猫掻傷のみであった。全ての発赤部を切開したところ,壊疽性筋膜炎は否定的であったが,同部浸出液および血液培養よりPasteurella multocidaが同定され,同菌による敗血症性ショックと診断した。来院日より広域抗菌薬投与を含む集中治療を行ったが,第2病日にdisseminated intravascular coagulation(DIC)を合併した。DICは一時改善したものの,耐性菌による混合感染を併発し,第24病日に死亡した。
著者
木村 龍太郎 竹本 正明 杉村 真美子 金澤 将史 今村 友典 中野 貴明 伊藤 敏孝
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.262-264, 2018-12-31 (Released:2018-12-28)
参考文献数
1

【症例】14歳, 女性【主訴】左示指刺創【現病歴】家庭科の授業中にミシンを用いて裁縫中に誤って左示指の末節にミシン針が刺さり救急要請となった。救急隊はミシンを破壊し本体の一部をつけたまま搬送した。【来院後経過】救急外来にて針に付着した布押さえの部分を工事用ペンチで破壊した。針と糸が共に指を手背側から手掌側へ貫通している状態であった。左示指に局所麻酔し, 針の末端部分の一部を切断し, 手掌側の針の先端をペンチで把持して引き抜くように糸と共に除去した。除去後, 止血を確認し, 帰宅とした。【考察】ミシンの縫い目は2本の糸が絡み合うことによって作られる。その構造上ミシン針の糸通しは針の先端についているためミシン作業中の刺創では針と共に糸が必ず体内を通過する。その構造を把握しないで針だけを抜去すると糸が皮膚の中に残存することがある。ミシン針の貫通創の処置では抜去時にミシンの仕組みを知る必要があると考えた。
著者
金澤 将史 竹本 正明 中野 貴明 若山 功 田井 誠悟 杉村 真美子 大野 孝則 朝比奈 謙吾 井上 幸久 伊藤 敏孝
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.51-54, 2023-02-28 (Released:2023-02-28)
参考文献数
5

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波では,高齢者施設で多くのクラスターが発生した。高齢のCOVID-19患者に対してその使いやすさもあってモルヌピラビル(ラゲブリオ®)が投与された。今回われわれは,COVID-19罹患後にモルヌピラビルを投与され症状が改善して療養解除となった後に,呼吸困難を発症し入院した症例を2例経験した。同じ抗ウイルス薬に分類されるニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッド®)使用例では,COVID-19から回復して2〜8日後の症状再燃または検査での陰転化後の再陽性で定義されるリバウンドの報告があり,モルヌピラビルでもリバウンドが認められた。リバウンドは療養解除後の時期に起こり得るが,その際の救急診療における感染対策や隔離解除などの対応に注意が必要である。今後の対応のため疫学調査ならびに病態解明の必要性が示唆された。
著者
竹本 正明 浅賀 知也 金 崇豪 宮崎 真奈美 中野 貴明 広海 亮 稲村 宏紀 山本 晃永 伊藤 敏孝
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.516-520, 2017-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
7

背景:現在日本では高齢者が増加しており,高齢者の救急搬送数そして高齢者施設からの救急搬送数も年々増加している。目的:高齢者施設からの救急搬送例を検証し,その傾向と問題点を検討した。方法:2014年1月から2015年12月までの24カ月間に高齢者施設から当院救急外来に救急車で搬送された患者を対象として後ろ向きの研究を行った。結果:症例は715例。平均年齢は85.3歳であった。中等症以上の症例は67.0%であった。搬送元としては特別養護老人ホーム,介護老人保健施設,介護付き有料老人ホームが多かった。搬送理由としては心肺停止49件,内因性591件,外因性75件であった。内因性疾患の中等症以上の割合は69.5%であり,外因性では中等症以上が26.7%であった。考察:明らかに緊急度が低い症例も散見され,とくに外傷では念のための受診を目的とした救急要請も多いと考えられた。不要な救急要請を減らすためにも各高齢者施設ではかかりつけ医との連携を深め,患者の緊急性の要否を判断ができる状況をつくる必要があると考えた。
著者
高橋 哲也 武居 哲洋 伊藤 敏孝 竹本 正明 八木 啓一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.32-37, 2014-02-28 (Released:2014-03-25)
参考文献数
19

背景:Spinal cord injury without radiographic evidence of trauma(非骨傷性頸髄損傷,SCIWORET)はわが国に多いが詳細な報告は少ない。目的:当院救急外来におけるSCIWORET の特徴を検討すること。対象と方法:頸椎・頸髄損傷91 例のうち,頸椎損傷のみは20例であった。頸髄損傷71例のうち単純X線とCTで頸椎に骨傷や脱臼がないSCIWORET は81.7% の58 例(年齢64.3 ± 14.7 歳,男性46 例,女性12 例)であり,その特徴を後方視的に検討した。結果:受傷機転は転倒30 例,転落15 例,交通外傷8 例,墜落5 例であり,65 歳以上では転倒・転落といった軽微なものが多かった(p<0.05)。頸椎X 線側面像で脊柱管狭窄およびretropharyngeal space( 咽頭後隙,RPS)拡大を認めたのはそれぞれ33 例(56.9%),17 例(29.3%)であった。脊柱管狭窄を認める割合はRPS 拡大群では4/17 例(23.5%)であったのに対し,RPS 正常群では29/41 例(70.7%)と有意に多かった(p<0.001)。結語:当院救急外来におけるSCIWORET は高齢男性の軽微な受傷機転により発症しており,頸髄損傷に占める頻度は過去の報告より多かった。SCIWORET において脊柱管狭窄を有する割合は,RPS 正常群では拡大群と比較し高値であった。