- 著者
-
高橋 哲也
武居 哲洋
伊藤 敏孝
竹本 正明
八木 啓一
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床救急医学会
- 雑誌
- 日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.1, pp.32-37, 2014-02-28 (Released:2014-03-25)
- 参考文献数
- 19
背景:Spinal cord injury without radiographic evidence of trauma(非骨傷性頸髄損傷,SCIWORET)はわが国に多いが詳細な報告は少ない。目的:当院救急外来におけるSCIWORET の特徴を検討すること。対象と方法:頸椎・頸髄損傷91 例のうち,頸椎損傷のみは20例であった。頸髄損傷71例のうち単純X線とCTで頸椎に骨傷や脱臼がないSCIWORET は81.7% の58 例(年齢64.3 ± 14.7 歳,男性46 例,女性12 例)であり,その特徴を後方視的に検討した。結果:受傷機転は転倒30 例,転落15 例,交通外傷8 例,墜落5 例であり,65 歳以上では転倒・転落といった軽微なものが多かった(p<0.05)。頸椎X 線側面像で脊柱管狭窄およびretropharyngeal space( 咽頭後隙,RPS)拡大を認めたのはそれぞれ33 例(56.9%),17 例(29.3%)であった。脊柱管狭窄を認める割合はRPS 拡大群では4/17 例(23.5%)であったのに対し,RPS 正常群では29/41 例(70.7%)と有意に多かった(p<0.001)。結語:当院救急外来におけるSCIWORET は高齢男性の軽微な受傷機転により発症しており,頸髄損傷に占める頻度は過去の報告より多かった。SCIWORET において脊柱管狭窄を有する割合は,RPS 正常群では拡大群と比較し高値であった。