著者
浅井 武 瀬尾 和哉 酒井 淳 笹瀬 雅史 河野 銀子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、実験風洞と数値流体解析を基にしたスポーツ流体シミュレーターを、パーソナル・スーパーコンピューター上に開発した.さらに,実際のスポーツ科学,スポーツ工学問題の展開事例として、流体工学的観点からスポーツ技術を検討すると共に,スポーツボールやスポーツシューズを代表とするスポーツ用具の空力特性の解析や改良を試みた.サッカーボールの空力解析の場合,スポーツ流体シミュレーターを用いたCFD解析と風洞実験により,無回転のサッカーボールの空力係数を分析すると共に,四塩化チタンを用いた可視化手法により,実際に飛翔するボール後流の動態を検討し,サッカーボールの空力特性を明らかにした.CFDと風洞実験におけるレイノルズ数と抗力係数の関係をみると,亜臨界レンジで0.43程度,超臨界レンジで0.15程度を示し,サッカーボールの臨界レイノルズ数は,約2.2〜3.0×10^5であると考えられた.サッカーボールの抗力係数は,平滑球とゴルフボールの中間的特性を示し,ボールパネルは臨界レイノルズ数を減少させるという意味で,空気抵抗を下げていると考えられる.CFDと可視化実験において,ボールの低速時(5m/s)と高速時(29m/s)のボール周りの流れを比較すると,低速時では,境界層の剥離点が前方岐点より約90deg.に位置していたのに対して,高速時では,剥離点が前方岐点より約120deg.に後退していた.ボール直後の渦リングのような渦塊から発生周波数を計測し,Stを推定すると,平滑球のレイノルズ数4×10^4近傍のハイモード値約1.0と近い値であると考えられた.ボールが飛翔した後,ラージスケールの渦振動(渦塊の蛇行)が観察された.このメカニズムの詳細は不明であるが,渦振動が,サッカーボールの「ナックルエフェクト」に関連している可能性があると思われた.
著者
浅井 武 瀬尾 和哉 笹瀬 雅史
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、サッカーのインフロントカーブキックを対象に、高速VTRカメラを用いて上方から撮影し、蹴り足やボールの速度、ボール回転数、フェイスベクトルとスイングベクトルのなす角度(迎え角)について検討した。その結果、蹴り足速度の平均値は24.2m/sであり、ボール速度の平均値は27.1m/sであった。インフロントカーブキックにおけるボール回転数の平均値は7.8回転であった。全てのインフロントカーブキックの試技において迎え角がみられ、その平均値は35.4deg.であった。迎え角の最小値は21.9deg.、最大値は45.4deg.となっており、かなり広いレンジに渡っていた。インフロントカーブキックでは、蹴り足のフェイスベクトルとスイングベクトルとの間にある迎え角を作ることが、ボールに回転を発生させることの原因の一つになっていると考えられた。また、下腿の有限要素骨格モデルを作成し、インフロントカーブキックのコンピュータシミュレーションを行うことによって、迎え角とボール回転数、及びボール速度の関係を検討した。その結果、迎え角とボール速度との関係をみると、迎え角が大きくなるに従ってボール速度は小さくなっていた。一方、迎え角とボール回転数との関係は、迎え角が大きくなるに従って回転数は増大するが、約70度を越えると急激に減少していた。実際のフリーキック時におけるこの迎え角をみると、ボール回転数が最大になる角度より小さいと考えられ、ボール速度を重視したカーブキックを行なわれていたと推察された。さらに、回転及び無回転のサッカーボールに対して風洞実験を行い、ボールに働く力を測定した。無回転の場合にはオイルフローによる可視化実験を行い、その空力特性を調べた。その結果、回転時の抗力係数は、0.35から0.4程度、無回転時の抗力係数は0.2程度であることが明らかになった。
著者
丹羽 健市 浅井 武 長井 健二 大貫 義人 笹瀬 雅史 竹田 隆一 曽 広新 李 宏玉 修 傳風 揚 振東
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

これは平成9年度〜平成11年度の3年間にわたって山形大学教育学部と中国・吉林師範学院体育分院の共同で行われた「日中東北地域におけるスポーツ科学の比較研究」の報告書である。近年、スポーツ科学の発展はめざましく、その国際化と多彩な分野の総合化は急務な課題となっている。そこで山形大学と吉林師範学院の体育・スポーツ研究者が、同じ東北地方に位置するという地理的条件などを考慮し、上記テーマを設定し、共同研究を通じて学術交流をすすめることになった。3年間にわたり、両大学の研究者が2名ずつ相互に訪問し、共同研究を実施した。この報告書には共同研究で得られた成果をもとに発表された論文・資料等を掲載した。また、共同研究会での発表の要旨も収録した。そこであきらかなように、この研究はバイオメカニクス、運動生理学、体育科教育、武道論、体育社会学などスポーツ科学がカバーする広範な分野に及んでいる。ここには、丹羽健市による運動時の水分摂取と体温調節の生理学的研究、大貫義人による低体温者の運動に関するスポーツ医科学研究、浅井武によるサッカーのバイオメカニクス研究。長井健二の体育科教育研究、曽広新の太極拳の運動生理学研究、竹田隆一、宮煥生の武道教育研究、笹瀬雅史の体育社会学的考察、などがまとめられている。また日本および中国の東北部という冬季寒冷な地城におけるスポーツ活動やスポーツ科学的トレーニングに関する知見の交流、さらに学佼やスポーツ施設などの実地見聞も共同研究をすすめるうえで有益であった。資料収集と情報交換は継続して行われた。こうして、同じように東北地方に位置し、教員養成系大学である山形大学と吉林師範学院の体育・スポーツ研究者の共同研究ならびに学術交流は一定の成果をあげたものである。今後は、この基礎作業を土台として、さらに共同研究を継続していくことが必要である。なお、この共同研究の実施と報告書の刊行は、「科学研究費補助金基盤研究(B)(2)」を得て行われたものである。