著者
篠原 美千代 内田 和江 島田 慎一 後藤 敦
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.749-757, 1999-08-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
19
被引用文献数
1

手足口病の主要な原因ウイルスであるコクサッキーウイルスA16型 (CA16) とエンテロウイルス71型 (Ev71) の簡便な検査方法, 特に中和反応を用いない同定方法を検討した.ウイルス分離では1990年にはVero細胞による分離が最も多かったが, 1994年以降は分離数が減少し, 代わってCaco-2細胞による分離が増加した.1998年はCA16の分離にMRC-5細胞も使用したが, Caco-2細胞と同等の感受性であった.細胞変性効果の出現はMRC-5細胞が最も早かった.CA1-10, ポリオウイルス1-3, エコーウイルス1~7, 9, 11, 14, 16, 17, 18, 24, 25, 27, 30, Ev71の各ウイルス及び分離ウイルスについてRNAを抽出し, 2種の下流プライマー (E31及びE33) を用いて2系列の逆転写反応を行った後, 同一の上流プライマー (P-2) を加えてPCRを実施した.P-2/E31の系では増幅されず, P-2/E33の系で増幅されるのはCA6, CA16, Ev71のみであった.分離ウイルスのP-2/E33系の増幅産物を制限酵素Taq I及びEcoT22Iで処理したところ, Ev71はすべて切断されなかったが, CA16はすべて切断され, その切断パターンはTaq Iでは3種類, EcoT22 Iでは1種類であった.この結果は塩基配列上の切断部位とも一致した.Caco-2, MRC-5細胞を使用してウイルス分離を行い, さらにRT-PCR, Taq I, EcoT22I切断を実施することにより1週間程度でCA16及びEv71を分離同定することが可能であった.