著者
平藤 雅彦 篠田 壽
出版者
北海道医療大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究はエンドトキシンの全身投与が歯髄組織にどのような微小循環障害を引き起こすかを検討し、さらにその発生機序を生化学薬理学的および組織学的手法を用いて解析、検討する事であった。平成4年度はエンドトキシン投与後、歯髄組織中の組織障害のマーカーの一つである過酸化脂質をTBA法で測定し、組織障害の有無を検討した。エンドトキシン10mg/kgを静脈内投与して4時間後の歯髄祖組織内の過酸化脂質濃度を測定したところ、有意な過酸化脂質の増加が認められた。同様に肺および空腸組織についても検討したが、2及び10mg/kgエンドトキシンのいずれにおいても有意な影響は認められず、歯髄組織はエンドトキシンにより障害を受けやすいことが示唆された。そこで平成5年度は、エンドトキシン投与による歯髄組織内のアデニンヌクレオチド濃度の変化を検討して、循環障害の有無を検討し、またエンドトキシン投与後の歯髄組織および象牙質形成障害を組織学的に観察した。ラットにエンドトキシン2mg/kg静脈内投与を行い、4時間後の歯髄組織内アデニンヌクレオチド含量をHPCLで測定したところ、AMPの有意な上昇と、ADP、ATPの有意な減少が認められ、組織内のエネルギー状態を示す指標であるエネルギーチャージは著明に減少し、虚血性障害を起こしていることが示唆された。さらに、組織学的観察を行ったところ、エンドトキシン処理により歯髄組織細胞の核の変形、萎縮が認められた。しかし、炎症細胞浸潤や、血管拡張などの炎症性組織所見は認められなかった。以上のことより歯髄組織はエンドトキシンにより虚血性の組織障害を受けることが示唆された。本研究ではさらに、内皮細胞の機能障害機序についても培養ヒト内皮細胞を用いて検討し、好中球の活性化に依存して内皮細胞への血小板粘着が生じ、これは血小板のcGMPレベルの減少が伴っていることを明らかにした。
著者
加藤有三 篠田壽編集
出版者
医歯薬出版
巻号頁・発行日
1998
著者
篠田 壽 竹山 禎章 荘司 佳奈子 島内 英俊
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

強力な骨吸収抑制薬として知られる一連のビスホスホネート(BP、BPs)系化合物の中から8種のBPsを選び、歯周病治療薬として、どのBPが最も高い可能性を有するかについて種々の検討を行った。その結果、(4-メチルチオフェニル)チオメタンビスホスホネート(TRK-530)に高い可能性が見出されたので、このBPを中心にその薬理作用、作用機序、安全性について検討し、概ね以下の結論を得た。1.TRK-530は、LPS, PGE2,IL-1等による骨吸収の促進を、用量依存的に抑制した。2.現在、骨粗髪症治療薬あるいは高カルシウム血症治療薬として最も広く使用されている窒素含有BPs(N-BPs)は、LPS刺激によるPGE2産生の増加を用量依存的に増強するのに対して、TRK-530はこれを用量依存的に抑制した(マウス頭蓋冠骨器官培養系)。その機序は、抗酸化作用に基づくCOX-2の発現抑制に基づくものと推測された。3.N-BPsは、骨芽細胞系のセルラインにおいて、アルカリホスフアターゼ活性を抑制するのに対して、TRK-30は、用量依存的に増加させた。4.ラットやウサギの歯槽骨に局所投与したTRK-530は、投与部位の骨密度と骨量を著明に上昇させた。5.全身的あるいは局所的に投与したTRK-530は、ラットの実験的歯周炎モデルにおいて用量依存的に歯槽骨の吸収を抑制し、歯周組織の破壊を抑制した。6.BPsの副作用の一つとして報告されている抜歯後の骨壊死に関して、ラット抜歯窩の修復に及ぼす効果を検討した。N-BPsの一つであるゾレドロネートの大量全身投与は、抜歯窩の修復を遅らせるのに対して、TRK-530にはそのような作用は認められず、むしろ修復を促進する傾向が見られた。以上、本研究により、TRK-530は、多くのBPsの中でも歯周病治療薬としての比較的優れた性質を有することが示唆された。