著者
粕谷 志郎 後藤 千寿 大友 弘士
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1152-1156, 1988-12-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
8
被引用文献数
1 3

アニサキス幼虫に対する殺虫効果のあるなしを13の食品もしくはその抽出液について検討した.それぞれ乾燥重量に対し5%となるよう生理食塩水にて抽出液を作成し, これにスケトウダラ内臓より採取したアニサキス幼虫を入れ24時間観察した.その結果, アオジソ, ショウガ, ワサビ, ニンニクの4食品の抽出液で完全に虫体の運動を消失 (死亡と推定) させることができた.エタノールは8%以上の=濃度で強い致死効果が認められた.シソ, ワサビの2.5%抽出液ではそれぞれの5%溶液に比し致死率が低下したが, ショウガの2.5%溶液はなお完全な効果を示した.運動停止 (1分間の観察中動きが認められない) までの平均時間はシソ3.1時間, ショウガ3.2時間, ワサビ5.6時間, ニンニク10.8時間であった.ネギ, パセリ, ダイコン, キャベツ, ホウレンソウ, ミツイシコンブ, トウガラシ, チャ (茶) には致死効果は認められなかった.強力な殺虫効果を示したシソ, ショウガの若干の既知成分についてもこのような効果があるか検討し,[6]-shogao1,[6]-gingerol (以上ショウガ), perillaldehyde, perillylalcoho1 (以上アオジソ) のそれぞれが100%致死効果を発揮する最少濃度が62.5μg/ml, 250μg/ml, 125μg/ml, 250μg/mlであることが判明した.一方, 陽性対照に使用したthiabendazoleでは10mg/dlでも死亡虫体を認めなかった.
著者
長野 宏子 粕谷 志郎 鈴木 徹 下山田 真
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

世界中の伝統的な発酵食品から食品に関与しているたんぱく質分解能微生物の探索・保存をペプチドの機能性を検討した。目的は、伝統発酵食品由来微生物の探索・保存とデータベース化を続けることと、その微生物が産生する酵素の機能性への関与を検討することである。特に、プロテアーゼ活性の強いコラゲナーゼ様酵素を産生する微生物(Bacillus属)の産生する酵素の有効性を探ることである。食由来微生物の保存とデータベース化は、生物多様性下において、タイ、ベトナム、中国、カンボジアとMOUを締結でき、公開可能な状況になった。たんぱく質分解能があり、普遍的に存在しているBacillus属を同定し、Bacillus subtilisの16S rDNA結果より、系統樹を作成した。B.subtilis M2-4株の産生する精製酵素の特徴を検討した結果、分子量は、33kDaと推定し、N-末端アミノ酸配列はAQSVPYGISQIKAPAであり、サブチリシンと同じであったが、小麦粉発酵食品からは初めて分離された微生物であった。酸性カゼインに対する分解フラッグメントのC末端は、特に親水性アミノ酸Arg,Gln,疎水性アミノ酸Val,Ile等のアミノ酸であり、ペプチダーゼの可能性がある。牛乳たんぱく質β-ラクトグロブリンに対する酵素作用には、B.subtilis DBの濃縮粗酵素を用い分解能を検討した。β-ラクトグロブリンは、短時間でペプチドに分解され、ペプチドファラグメントのN-terminalアミノ酸配列は、β-ラクトグロブリンアミノ酸配列の23、36と一致し、β-ラクトグロブリンのアレルギーエピトープ部分の分解能があった。この酵素はアレルギー患者にとって低アレルギーなど機能性食品になる可能性をもっているものである。人々の知恵の結晶である「発酵食品」中の微生物が利用される可能性のあるものとなった。
著者
長野 宏子 丸山 (塩谷) 一代 堀 光代 粕谷 志郎
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.553-558, 2005

ブータンの乳発酵食品乾燥チーズ(テッパ)より微生物の分離・同定, 産生酵素の特徴およびその安全性を検討した.<BR>(1) 乾燥チーズ(テッパ)抽出液の微生物の増殖試験の結果, <I>Bocillus</I> 属, Enterobacteriaceae 科, <I>Lactobacillus</I>属, <I>Stapkylococcus</I> 属, Yeast, 糸状菌類の生育がみられた.<BR>(2) プロテアーゼ活性の強い酵素を産生する菌株 (96-BHU-003) を乾燥チーズ(テッパ)より分離した.その菌株は, グラム陽性菌であり<I>Bacillus lentus</I>と同定した.<BR>(3) 分離した<I>Bocillus lentus</I>は, プロテアーゼ活性の強い<I>Bacillus subtilis</I> (FS-2)と同様, 乳たんぱく質αs-カゼインに分解能を示した.<BR>(4) マウスを用いた安全性試験の結果, 体重・内臓重量の変化は認められなかった.