著者
細川 清人 北山 一樹 猪原 秀典
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.207-216, 2023 (Released:2023-02-28)
参考文献数
20

片側声帯麻痺を呈する症例では,嗄声による会話・歌唱の困難により生活の質が低下する。声帯麻痺は,発症後半年を経過しても回復が得られない場合は治癒する可能性は低く,何らかの手術治療が必要となることがある。現在の医療では声帯可動性を回復させる治療は未だ実用化されていないため,嗄声の改善を目指すのであれば発声時の声帯位置を正中方向へ移動させる手術を行うことにより音声改善を目指すこととなる。片側声帯麻痺に対する手術治療は大きく分けて,披裂軟骨内転術あるいは声帯内方移動術があげられるが,本稿では治療の最適化に関連して,術後成績の評価方法,手術方法の選択基準,各手術方法の具体的な方法について説明する。
著者
吉田 大地 細川 清人 北山 一樹 加藤 智絵里 小川 真 猪原 秀典
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.223-232, 2021 (Released:2021-08-26)
参考文献数
35
被引用文献数
2 2

Acoustic Voice Quality Index(AVQI)は持続母音と文章音読の両者の録音音声を用いた音響分析手法であり,日本語においても高い診断性能が報告されている.しかしながら,文章音読の課題文が異なれば診断性能が損なわれる可能性がある.そこで当研究では,課題文の変更による診断性能への影響を調査した.全311録音について,「北風と太陽」の第2文までの計58音節を既報で使用された前半30音節と検証用の後半28音節に分割しそれぞれのAVQI値を求めた.聴覚心理的評価との相関係数はそれぞれ0.850および0.842,受信者操作特性曲線の曲線下面積はそれぞれ0.897および0.892であり,ともに良好な診断性能が確認された.また,両者の値の差はわずかであった.当検討における課題文の変更はAVQI値の変動に大きな影響を与えず,AVQIは課題文変更をある程度許容できる可能性が示唆された.
著者
赤澤 仁司 小川 真 曺 弘規 細川 清人 中原 晋 堀井 新 猪原 秀典
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.322-329, 2014

混合性喉頭麻痺とは,声帯麻痺に他の脳神経麻痺を合併したものであり,多彩な臨床症状を呈する。今回われわれは,頭部外傷の後,高度嚥下障害を発症した両側の混合性喉頭麻痺症例に対して手術的加療を行い,良好な結果を得たので報告する。症例は78歳男性。木から転落して頭部を打撲し,救急救命専門施設に搬送された。頭部CT検査において,くも膜下出血および右側頸静脈孔・舌下神経管周囲に骨折が認められた。全身状態および意識レベルの改善の後,失声・嚥下障害が判明した。嚥下障害の治療のため当科に紹介受診された。内視鏡検査下に,右声帯は傍正中位に,左声帯は中間位に完全固定していた。嚥下造影検査において,バリウム嚥下を試みるも嚥下反射は全く生じなかった。嚥下改善目的に両側輪状咽頭筋切断術・喉頭挙上術・気管喉頭分離術・喉頭閉鎖術を施行した。術後,肉の塊を除く多様な形態の食物が摂食可能となった。また後日プロテーゼを挿入して言語コミュニケーションが可能となった。以上より,複数の脳神経損傷に起因する咽喉頭の機能障害であっても,種々の機能外科的手術を適切に組み合わせることにより生活の質の改善が期待できると考えられた。