著者
森 裕生 網岡 敬之 江木 啓訓 尾澤 重知
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.415-426, 2018-03-01 (Released:2018-03-16)
参考文献数
20

大学教育における学期を通した振り返り活動を促進するために,学生個人の各授業回と学期末の理解度の自己評価点の「ずれ」に着目し,「ずれ」の理由を記述させることで振り返りを促す「時系列自己評価グラフ」を開発した.本研究では大学授業2実践を対象に,学生が作成した時系列自己評価グラフを質的に分析した.その結果,(1)全体として学期末の自己評価点が各授業回の自己評価点より10点程度低い「ずれ」が生じること,(2)学生は「ずれ」を認識することで,学期を通して学習内容を関連付けた振り返りや,理解不足だった内容についての振り返りを行ったことなどが明らかになった.
著者
網岡 敬之 森 裕生 江木 啓訓 尾澤 重知
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.245-253, 2018-01-31 (Released:2018-02-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1

学生の多角的な評価および支援方法を実現する一環として,受講生が主として授業終了時に毎回記入する手書きワークシートを定量化し,学習成果との関係を検討した.定量化指標としては,ワークシートをデジタル化した際のファイルサイズを用いた.(1)各学生の学期を通した平均ファイルサイズによるグループ分けと(2)ファイルサイズの増減の推移によるクラスタ分けを行った後,授業で身についた力や授業への有用性の自己評価,学期末レポートの得点といった学習成果との関係を分析した.その結果,ファイルサイズが相対的に大きいグループは,平均的なグループや小さいグループに比べて学習成果が高い傾向にあった.一方,ファイルサイズが小さいグループと平均的なグループの間には,授業への有用性や獲得した力の評価に大きな差がみられなかった.ファイルサイズというシンプルな指標を用いた場合でも,学習成果を評価することが可能であり,多角的な評価や支援に応用することが可能であると考えられる.
著者
森 裕生 網岡 敬之 江木 啓訓 尾澤 重知
出版者
京都大学高等教育研究開発推進センター
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.13-24, 2017-12-01

学期を通した学習内容の振り返りを促進するために、学生が「自己評価基準」「自己評価点」「自己評価基準の説明及び自己評価点の根拠」を検討する課題を取り入れた大学授業を2年間にわたり研究対象とした。1年目は最終回の授業で授業前と授業後の学生自身の「成長」に関するワークを、2年目は1年目の実績に基づいて授業デザインを変更し演習課題を通して身についた「能力・スキル」に関するワークを導入した。学生の提出した自己評価課題を質的に分析した結果、1年目は自己評価基準の51%にグループワークや演習課題の取り組み等の「授業形式」に関する自己評価基準が取り上げられた。授業デザインの変更を行った2年目は「授業形式」に関する自己評価基準は13%に減少した。また2年目は1年目と比較して(1)授業外で授業内容の応用に関する自己評価や自身の演習課題の回答などの学習プロセスに着目した自己評価が行われたこと、(2)自己評価基準の説明と根拠として、学生自身の学習プロセスと授業外での知識の応用に関する活動を融合させながら自己評価が行われたことなどが明らかになった。
著者
尾澤 重知 江木 啓訓 森 裕生 網岡 敬之 牛島 健太 吉田 光希
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、大学教育において、効果的なポスター発表方法を学ぶための学習プログラムや、ポスター発表の改善を支援するためのシステムの開発と評価を行った。学習者が制作した学習ポートフォリや、発表中の表情や視線について量的・質的に分析をした結果、本プログラムや提案システムの有用性を明らかにすることができた。これらの知見の中でも、ポスター作成の準備段階で自身の研究の図式化を促すことの効果や、聴衆に対する疑問の投げかけ方が全体の印象を左右することを明らかにした点が本研究の成果である。