- 著者
-
綿貫 宏史朗
- 出版者
- 日本霊長類学会
- 雑誌
- 霊長類研究 Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.34, pp.63-64, 2018
<p>近年の研究の進展による分類の見直しや新種の発見により,霊長目に属す種は年々増加しており,IUCNの最新の分類基準では約450種にのぼる。そのうち日本の在来種はニホンザルのみであり,ヒトを除くその他のすべての霊長類は外国産サル類ということになる。これらはヒトが持ち込まなければ日本に来ることはないはずのものたちだ。では,これまでにいったいどれだけの外国産サル類が日本に輸入されたのだろうか。江戸時代の鳥獣図誌などの各種史料や書籍,報道資料,動物園等の出版物や飼育台帳,日本動物園水族館協会年報,剥製や写真などの博物館資料をもとに,日本で飼育された記録のある霊長類種を集計した。種の分類基準は日本モンキーセンターが2018年3月に発表した霊長類和名リストに掲載される14科74属447種に準拠した。その結果,コビトキツネザル科2種,キツネザル科9種,イタチキツネザル科1種,インドリ科2種,アイアイ科1種,ガラゴ科3種,ロリス科7種,メガネザル科2種,サキ科7種,クモザル科9種,オマキザル科31種,オナガザル科オナガザル亜科48種,同コロブス亜科15種,テナガザル科11種,ヒト科6種の計154種について日本への輸入の記録が見つかった。写真記録や剥製標本により現在の分類基準に基づく種を推定できた例がある一方,ショウガラゴ<i>Galago senegalensis</i>,ヨザル<i>Aotus trivirgatus</i>,サバンナモンキー<i>Chlorocebus aethiops</i>など長らく1種とみなされておりながら現在細分化されているような分類群において細分化後の実態が不明な例もあった。その場合は「少なくとも」の数字でカウントした。こういった情報を日本における霊長類の飼育史として整理することで,今後の飼育下個体の福祉向上や希少霊長類の保全に貢献するとともに,博物館や大学で保管される標本や写真等の資料価値を高めることにつながると考える。本発表ではまだ資料収集や考察が不十分な点も理解しているが,今後も引き続き情報の集積に努めたい。</p>