著者
良永 知義 花見 梢
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.136-138, 2018-12-15 (Released:2019-01-23)
参考文献数
11

アコヤガイ赤変病は1996年に全国の真珠母貝・真珠養殖場で顕在化し,アコヤガイの大量死をもたらした。本疾病の病原体はいまだ明らかにはなっていないが,疫学的調査から,中国産アコヤガイの輸入とともに侵入したと考えられている。中国産アコヤガイと日本産アコヤガイの交雑家系を用いることにより,当初は真珠の品質の低下をもたらしたものの,本疾病の発生は大きく減少した。本疾病発生後20年の間に,真珠の生産量・生産額は激減するとともに,真珠養殖経営体数・就業者数ともに大幅に減少し,多くの雇用が失われた。生産額は2009年のリーマンショックによる価格低下に伴って半減した後,徐々に回復の傾向を示しているが,生産量の回復は見られていない。また,かつて真珠輸出国であった日本は,今日では輸入国に転換している。このように,海外から侵入した本疾病は,日本の真珠産業衰退へとつながった。
著者
良永 知義 小川 和夫 若林 久嗣
出版者
The Japanese Society of Fish Pathology
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.243-251, 1987-12-15 (Released:2009-10-26)
参考文献数
9
被引用文献数
5 12

H.aduncum は海産種であるが, その虫卵は, 淡水中でも2期幼虫に発達し, 孵化した。孵化仔虫は淡水中では生存できないが, 未孵化の2期幼虫がイサザアミ(中間宿主)に取り込まれることで寄生が成立し, その体腔内で3期幼虫に成長した。ワカサギから得た3期幼虫を淡水中のニジマス(実験的終宿主)に投与し, 成虫を得た。以上の結果, 本線虫が淡水中でも生活環を完結できることが明らかとなった。得られた虫体は, 光顕・走査電顕を使って記載し, 各発育段階の識別点を考察した。
著者
良永 知義 中添 純一
出版者
The Japanese Society of Fish Pathology
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.227-228, 1997-12-15 (Released:2009-10-26)
参考文献数
3

スクーチカ繊毛虫の in vitro の培養での増殖に及ぼす光と培養チューブの回転の影響を P2Y1-1/2S 培地を用いて検討した。強光下では増殖は顕著に抑制された。さらに, 気相と接触する状態で回転培養した場合, 増殖抑制され, 気相を窒素ガスで置換した場合でも抑制された。また, 培養容器に培地をみたし気相と接触しないしない条件下で回転培養したところ, 増殖の抑制は観察されず, スクーチカ繊毛虫は気相との接触あるいは培養チューブの回転に対して耐性が低いことが示唆された。
著者
良永 知義 KARLU MARX ANDAYA Quiazon KARLMARKANDAYA Quiazon QUIAZON KarlMarxAndaya
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

Anisakis pegreffi三期幼虫をニジマス体腔内に外科的に挿入するという攻撃試験を行い、昨年度Anisakis simplex s.s.で行った同様の攻撃試験の結果と比較した。その結果、A. pegreffiiはA. simplex s.s.に比較して、明らかに筋肉に侵入しにくいことが示された。また、両種ともに、水温が高いほど筋肉に移行する期間が短くなったが、水温は筋肉への移行率に大きな影響を与えなかった。体腔内の虫体をみると、A. simplex s.sでは宿主組織による鞘の形成がみられたのはいくつかの虫体に限られていたが、A. pegreffiiではほとんどの虫体に対して宿主反応が見られた。また、体腔内と筋肉内の虫体の合計はどちらも経過時間とともに減少した。体腔内での宿主反応により虫体が死滅する、あるいは虫体の筋肉への移行が阻害されるという現象が生じているものと思われた。北部日本海のマアジならびにサクラマスから得られた虫体の種を分子生物学的に判別したところ、全てA. simplex s.s.であった。この結果をQuiazon et al. (2011)が示した結果と併せ考えると、A. simplexは日本沿岸の太平洋側と北部日本海に分布し、A. pegreffiiは東シナ海と西部日本海に分布することが確かめられた。このことから、A. pegreffiiは東シナ海から西部日本海に主として生息する鯨類・海獣類を終宿主とし、A. simplex s.s.は太平洋ならびに北部日本海に生息する鯨類・海獣類を終宿主としている可能性が示された。
著者
小川 和夫 良永 知義
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

単生類Neoheterobothrium hirameは、1990年代半ばに突然新種として日本近海のヒラメに出現した寄生虫である。天然ヒラメの貧血症の原因寄生虫であり、ヒラメ資源への影響が懸念されている。本研究では、本虫の起源を明らかにする目的で、アメリカ合衆国大西洋岸のサザンフラウンダー、サマーフラウンダー、チリ産ヒラメ1種からNeoheterobothrium属虫体を採集し、ヒラメのN.hirameと形態学的・分子生物学的に比較した。サザンフラウンダーから得られた虫体は、ヒラメに寄生するN.hirameと形態学的に差が認められず、また、18S rRNA領域、ITS1-5.8S RNA-ITS2領域、ミトコンドリアのCOI領域のいずれにおいても、塩基配列に大きな差は認められなかった。この結果から、サザンフラウンダーに寄生する虫体はN.hirameであり、本種が近年日本近海に侵入し、ヒラメを宿主として定着したものと結論付けられた。従来、サザンフラウンダーにはサマーフラウンダーを宿主とするN.affineが寄生するという報告があった。そのため、N.hirameがN.affineと同種である可能性も残っていた。そこで、本研究いおいて、サマーフラウンダーから得られたN.affine2虫体について、形態学的再記載とITS1領域の塩基配列の配列決定を行い、N.hirameと比較した。その結果、この2種は別種であることが強く示唆された。ただし、今回は得られたN.affineの数が少なく、今後に検討の余地が残された。チリ産のヒラメ類Hippoglossina macropsから得られたN.chilensisの形態ならびにITS1と28S rRNAの部分領域の塩基配列を決定した。その結果、本虫はN.hirame・N.affineと大きく異なり、これらとは別属である可能性が示唆された。