著者
千ヶ崎 学 中根 基行 小川 和夫 若林 久嗣
出版者
The Japanese Society of Fish Pathology
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.215-221, 2000-12-15 (Released:2009-10-26)
参考文献数
14
被引用文献数
11 23

蛍光色素 CFSE で生体染色したヘテロボツリウム孵化幼生を0歳トラフグに感染させた。 CFSE は孵化幼生の感染能力に影響しなかった。 0―4日齢の孵化幼生を異なる濃度(1L, 1尾当たり 29,58,116虫)と接触時間(1―10時間)で感染させ, 以下の結果を得た。 孵化幼生の感染能力は経日的に低下し, 2日齢以降はほとんど感染しなかった。 濃度は着定率に影響しなかった。 着定率は3時間以降は有意に増加しなかった。 従って, 孵化後1日以内の幼生に3時間接触させるのを標準感染法とした。
著者
小川 和夫 巖城 隆 荒木 潤 伊藤 直樹
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.1193-1195, 2012 (Released:2012-11-28)
参考文献数
13
被引用文献数
4 5

根室に水揚げされたサンマのフィレ内のアニサキス寄生の有無を目視で検査した。その結果,フィレ 1 枚あたり 0.9% の寄生が認められた。虫体の形態観察とミトコンドリア Cox2 遺伝子の解析によってヒトのアニサキス症の主原因となっている Anisakis simplex sensu stricto(狭義の A. simplex)と同定された。これによって,サンマ加工食品の生食によるアニサキス感染のリスクが初めて確認された。フィレ内の虫体は目視で発見できるので,加工や調理の際に確実に取り除くことが推奨される。
著者
千ヶ崎 学 中根 基行 小川 和夫 若林 久嗣
出版者
The Japanese Society of Fish Pathology
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.215-221, 2000-12-15
参考文献数
14
被引用文献数
6 23

蛍光色素 CFSE で生体染色したヘテロボツリウム孵化幼生を0歳トラフグに感染させた。 CFSE は孵化幼生の感染能力に影響しなかった。 0―4日齢の孵化幼生を異なる濃度(1L, 1尾当たり 29,58,116虫)と接触時間(1―10時間)で感染させ, 以下の結果を得た。 孵化幼生の感染能力は経日的に低下し, 2日齢以降はほとんど感染しなかった。 濃度は着定率に影響しなかった。 着定率は3時間以降は有意に増加しなかった。 従って, 孵化後1日以内の幼生に3時間接触させるのを標準感染法とした。
著者
良永 知義 木南 竜平 Kathryn A. Hall 小川 和夫
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.123-126, 2006 (Released:2007-05-11)
参考文献数
15
被引用文献数
11 18

2005年春に, 中国福建省から養殖種苗として輸入されたカンパチ幼魚にアニサキスの寄生が高頻度に見られた。この寄生虫は, 形態学的にはヒトアニサキス症の原因となるAnisakis I型幼虫と同定された。ITS1-5.8S rRNA-ITS2領域の塩基配列では, 広義のA. simplex を構成する種の一つであるA. pegreffii と極めて近縁であった。主な寄生部位は胃壁および胃漿膜であり, 腹部の筋肉に虫体は認められなかった。本症例は, 養殖魚におけるアニサキス寄生の初めての例である。
著者
白樫 正 小川 和夫
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.92-98, 2016 (Released:2016-10-07)
参考文献数
24
被引用文献数
2 10

Fish blood flukes (FBFs) are the most important digenean parasites in marine finfish aquaculture due to their high pathogenicity. Numerous eggs accumulate in gill lamellae and capillary vessels in various organs, interfere the blood flow. This causes fish to suffocate to death or leads to other fatal health problems. In Japan, important culture fish, such as amberjacks, bluefin tuna and tiger puffer are affected by FBFs of different taxa; namely Paradeontacylix spp., Cardicola spp. and Psettarium spp., respectively. FBFs are relatively host specific and utilize a complex two-host lifecycle. To date, the lifecycles have been elucidated for only a handful marine FBF species and all use terebellid polychaetes as the intermediate host. Chemotherapy with the oral treatment of praziquantel is effective and commonly used in fish farms as a sole control measure against FBFs. The development of prevention method is expected with the recent advances in knowledge on the biology of FBFs.
著者
良永 知義 小川 和夫 若林 久嗣
出版者
The Japanese Society of Fish Pathology
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.243-251, 1987-12-15 (Released:2009-10-26)
参考文献数
9
被引用文献数
5 18

H.aduncum は海産種であるが, その虫卵は, 淡水中でも2期幼虫に発達し, 孵化した。孵化仔虫は淡水中では生存できないが, 未孵化の2期幼虫がイサザアミ(中間宿主)に取り込まれることで寄生が成立し, その体腔内で3期幼虫に成長した。ワカサギから得た3期幼虫を淡水中のニジマス(実験的終宿主)に投与し, 成虫を得た。以上の結果, 本線虫が淡水中でも生活環を完結できることが明らかとなった。得られた虫体は, 光顕・走査電顕を使って記載し, 各発育段階の識別点を考察した。
著者
小川 和夫 江草 周三
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.95-99, 1980
被引用文献数
11

1. 1975年2月から1979年6月にかけて,養殖ウナギのGyrodactylus寄生を調査した結果,ニホンウナギからGyrodactylusの得られた池は19(千葉・静岡・徳島・宮崎県),ヨーロッパウナギからGyrodactylusの得られた池は5(静岡・徳島県)であった。2. Gyrodactylusを同定した所,ニホンウナギ寄生種は全てG.nipponensisであり,ヨーロッパウナギ寄生種はG.anguillaeとG.nipponensisであった。3. ニホンウナギとヨーロッパウナギの間には,G.nipponensisに対する感受性に大きな差はないと思われる。最も重篤な寄生例では,ニホンウナギ(体長約45cm)1尾当り約20,000虫体のG.nipponensisが鰓弁から得られた。4. G.anguillaeは日本初報告種であり,種を再記載した。5. 今回得られたG.anguillaeは,ヨーロッパウナギとともにフランスから持ち込まれたものと判断された。我が国のニホンウナギからは,現在までに,G. nipponensisしか見出されず, G. anguillaeが日本に定着したという証拠は得られなかった。ヨーロッパウナギ寄生のG.nipponensisはニホンウナギから伝播していったものと推測される。
著者
横山 博 檀上 智則 小川 和夫 有馬 多恵子 若林 久嗣
出版者
The Japanese Society of Fish Pathology
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.19-23, 1996-03-15
被引用文献数
5 20

コイの筋肉繊維間にシスト形成する粘液胞子虫 Myxobolus artus について, 0才稚魚池における寄生状況と病魚からの胞子排出を定期的に調べた. 寄生率は9月に10%に達し, 以後約10ヶ月間続く胞子排出の過程で慢性的斃死がみられた. 瀕死魚は幼若赤血球の増加を特徴とする貧血症を呈した. 鰓薄板毛細血管内が貪食細胞により輸送された胞子で充満し, 毛細管の拡張や崩壊および鰓薄板上皮の剥離がみられ, 鰓からの出血が示唆された.
著者
小川 和夫
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.586-598, 2010-07 (Released:2011-05-27)
著者
小川 和夫 井上 潔
出版者
The Japanese Society of Fish Pathology
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.15-20, 1997-03-15
被引用文献数
16 24

稚魚期から出荷サイズまで同一魚群の養殖トラフグのヘテロボツリウム寄生を1年半にわたり隔月に調べた。寄生虫は初め鰓弁に認められたが, 鰓から鰓腔壁に移動した後に成熟した。夏では寿命は6カ月以内と推定された。寄生率と寄生数は季節や宿主固体差による変動が大きかったが, 水温上昇とともに増加傾向がみられた。魚によって, 鰓や鰓腔壁の寄生数に有意な左右差がみられる場合があり, 極端な場合, 虫体は片側にのみ偏在した。本観察例では寄生数が比較的低かったため, ヘテロボツリウム寄生は血液性状にはあまり影響しなかった。
著者
町田 昌昭 小川 和夫 沖山 宗雄
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series A, Zoology (ISSN:03852423)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-5, 1982-03

A new nematode belonging to the family Physalopteridae was obtained from a primitive, deep-sea frill shark, Chlamydoselachus anguineus, caught off the Pacific coast of central Honshu, the main island of Japan. On the other hand, the larva was also found lying on the brain of a deep-sea bristlemouth, Cyclothone atraria, taken from the Pacific coast of northern Honshu. The life cycle of this nematode is briefly speculated. The nematodes were preserved in 70% ethanol and cleared in glycerin or Gater's solution. The specimens are deposited in the collection of the National Science Museum (Nat. Hist.), Tokyo. We are grateful to Dr. Toru TANIUCHI, Faculty of Agriculture, University of Tokyo, who afforded an opportunity to collect the parasites of the frill shark. Thanks are also due to Dr. Elmer R. NOBLE, University of California, and Dr. Yuzo KOMAKI, Far Seas Fisheries Research Laboratory, for providing valuable specimens.
著者
小川 和夫 良永 知義
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

単生類Neoheterobothrium hirameは、1990年代半ばに突然新種として日本近海のヒラメに出現した寄生虫である。天然ヒラメの貧血症の原因寄生虫であり、ヒラメ資源への影響が懸念されている。本研究では、本虫の起源を明らかにする目的で、アメリカ合衆国大西洋岸のサザンフラウンダー、サマーフラウンダー、チリ産ヒラメ1種からNeoheterobothrium属虫体を採集し、ヒラメのN.hirameと形態学的・分子生物学的に比較した。サザンフラウンダーから得られた虫体は、ヒラメに寄生するN.hirameと形態学的に差が認められず、また、18S rRNA領域、ITS1-5.8S RNA-ITS2領域、ミトコンドリアのCOI領域のいずれにおいても、塩基配列に大きな差は認められなかった。この結果から、サザンフラウンダーに寄生する虫体はN.hirameであり、本種が近年日本近海に侵入し、ヒラメを宿主として定着したものと結論付けられた。従来、サザンフラウンダーにはサマーフラウンダーを宿主とするN.affineが寄生するという報告があった。そのため、N.hirameがN.affineと同種である可能性も残っていた。そこで、本研究いおいて、サマーフラウンダーから得られたN.affine2虫体について、形態学的再記載とITS1領域の塩基配列の配列決定を行い、N.hirameと比較した。その結果、この2種は別種であることが強く示唆された。ただし、今回は得られたN.affineの数が少なく、今後に検討の余地が残された。チリ産のヒラメ類Hippoglossina macropsから得られたN.chilensisの形態ならびにITS1と28S rRNAの部分領域の塩基配列を決定した。その結果、本虫はN.hirame・N.affineと大きく異なり、これらとは別属である可能性が示唆された。