著者
安藤 仁介 芹田 健太郎 小原 喜雄 三宅 一郎 木村 修三 五百籏頭 真 西 賢
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

本研究は, 第二次世界大戦後における日本の対外関係の特質を究明するために, その原点となった占領期における基本的な問題をいくつか選び出し, その各々について日本がいかに自主的にかかわっていったかを分析することを目的とした. そして従来この分野の研究が二次的資料に頼りがちだった事情を反省し, 国立国会図書館(現代史資料室)が最近に米国の国立公文書館(National Archives)秘蔵の膨大な一次資料をマイクロ・コピーで入手したなかから, GHQ/SCAP文書を中心に上記の基本的な問題に関係するものを複写・整理し適宜インデックスを作成したうえ, それに基づいて個別および共同の研究を進めた.基本的な問題の第一として, 占領軍の権限の国際的評価が挙げられるが, これについては, 連合国の日本占領はドイツに見られる無条件降伏の場合と異なり, ポツダム宣言に列挙された諸条件を実施するためのものであって, 占領軍は日本の非軍事化と民主化のために適切と認める措置をとる強大な権限を有していたことが判明した. 第二に, 占領下における対外関係の処理については, 占領の初期に対外関係処理の権限が占領軍の手に集中されたが, 占領方針の転換と日本側の要請によってこれが徐々に緩和され, 対外郵便業務の再開, 国際会議・国際機構への参加, 駐日外交代表部との接触, 出入国管理事務と対外公的通信の再開, 在外事務所の設置をもたらしたことが跡づけられた. 第三に, 国内問題についても, まず財閥解体・独禁法の制定が日本の特殊事情を考慮に入れるようにとの日本側の要請にも拘らず, 対独方式と同様に進められたこと, だが選挙法の改正には日本側の自主性が尊重されたこと, 総じて, 連合国の占領政策のうち, 日本側が実質的なイニシャティヴをとりえたものや, 政策の日本人受益者層が着実な拡がりを見せたものが, 定着したことが実証された.
著者
川島 慶雄 横川 新 中村 道 芹田 健太郎 栗林 忠男 安藤 仁介
出版者
大阪大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

本研究は、過去10年にわたる継続的な研究の一環であり、わが国の国際法に関する実践をできるかぎり網羅的に調査・検討し、その成果を体系的に整理・公表することによって、これまで外国の事例に依拠しがちであった日本の国際法研究に新たな資料的裏付けを提供することを目的としている。その際、国際法の対象領域が極めて広いことから、日本の諸事例が国際的にみて特に有用性の高い領域を選択すべきことに留意した。昭和62・63年度の研究においては、すでに完成した「国家承認」及び「国交再開・政府承認」の研究に続き、「国家領域」に関する国際法的実践の分析を手掛けた。本研究では、対日平和条約第2条及び第3条による領土処理の対象となった領域を中心に、現在なおその帰属について周辺諸国と係争中である領域や、第二次大戦終了後に日本に復帰した領域、更に第二次大戦終了前に日本が何らかの形で支配していた領域についても検討を加えている。具体的には、対日平和条約に直接係わる領域として、朝鮮(第2条(a)項関係)、台湾及び澎湖島(同(b)項関係)、千島及び樺太(同(c)項関係)、太平洋諸島(同(d)項関係)、南極地域(同(e)項関係)、新南群島及び西沙群島(同(f)項関係)及び南西・南方諸島(同第3条関係)である。この中には、歯舞、色丹、国後、択捉四島の帰属をめぐるいわゆる北方領土問題、竹島及び尖閣諸島の帰属問題、国際連盟時代に日本の委任統治地域であった太平洋諸島の法的性質の問題、沖縄・小笠原諸島の潜在主権の問題などが含まれている。更に、日本の領土ではないが、日本が統治権を行使した山東半島及び遼東半島の租借地の問題も併せて検討している。本研究は、以上の各領域について、その歴史的経緯や問題点を分析し、今秋「国家領域(領土)-日本における国際法事例研究-」として一連の研究の第3巻を出版する予定である。