著者
船曳 康子 北 徹 石井 賢二 日下 茂 袴田 康弘 若月 芳雄 村上 元庸 横出 正之 久米 典昭 堀内 久徳
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.274-278, 1999
被引用文献数
10

症例は83歳男性. 1996年12月末より徐々に喀痰, 咳嗽, 全身倦怠感, 食欲低下みられ当院受診. 肺炎と診断され1997年1月7日入院となった. 入院時血圧70/48mmHg, PaO2 55.5mmHg, CRP20mg/dl, ラ音聴取, 黄色膿性痰みられ, 抗生剤を開始した, 血清抗体価の上昇より (入院時4倍→2週後128倍), インフルエンザA感染症の合併と診断した. 発熱, 呼吸困難は抗生剤治療に抵抗性であった. 血中よりアスペルギルス抗原を検出し (2+), 抗真菌剤治療により抗原は (1+) と改善したが, 2月20日, 喀血をきたし永眠された, アスペルギルス症は免疫不全患者が罹るとされているが, 本例では入院後数日間白血球数が低下しており, インフルエンザによる一時的免疫力低下がアスペルギルス症の発症に関与したと考えられた. また高齢者のインフルエンザ感染症の合併症の重篤さが示唆された.
著者
若月 芳雄 HO Bow FOCK KWong M 千葉 勉 FOCK Kwong M BLASER Marti STROBER Warr
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

H.pylori感染患者は全世界で約20億人、日本では約7000万人にのぼり、単一感染症としてはその感染患者数は史上最大であり、上部消化管の様々な良悪性疾患の原因となり関連疾患に要する医療費は莫大である。感染患者の病型を決定する因子については、欧米と日本の報告に解離がありその大略は未だに不明である。 国立シンガポール大学のHo Bow,Chang Gi病院のFock Kwong Ming等との共同研究によりシンガポールでは、中国系・インド系の人種グループには80〜90%の高いH.pylori感染者が存在するのに対して、マレー系のグループには40%の低い感染率であることが判明した。一方H.pylori感染症によりおこる慢性萎縮性胃炎と胃癌との関係は確立しているが、中国系、マレー系にはH.pyloriの感染罹患度に応じた胃癌累積発生を観るのに対して、インド系ではその高度な感染率に比較して胃癌発生頻度が極めて低いことが判明した。そこで今年度はマレーシアのKebangsaan Malaysia大学医学部細菌・免疫学教室のRamelha Mohamed助教授と協力して、同国の中国系・インド系・マレー系マレーシア人の感染患者より、H.pyloriの臨床分離株を収集しその遺伝子型と、臨床病型の解析に着手した。一方日本人患者からの臨床分離株のゲノム遺伝子ライブラリーより患者血清と家兎抗体を用いて、幾つかの抗原遺伝子をクローニングしそのうち、約19Kdの二量体型の膜蛋白(HP-MP1)はH.pyloriに特異的な新規抗原遺伝子であること、その組み替え体は単球を活性化するものであることを発見した。これらの所見は、この感染症の病態解明のみならず宿主の免疫応答を利用した新しい治療法の開発につながるものと考えられる。
著者
北 徹 濱口 洋 若月 芳雄 久米 典昭 横出 正之 土井 俊夫 吉岡 秀幸
出版者
京都大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

まず、本研究の目的である血管内皮細胞への接着及びその阻害効果を判定する方法として、ヒト臍帯静脈から採取した内皮細胞を培養し、あらかじめ常法にて採取した単球の接着を行う。24時間培養を行い、dishを洗浄した後、ギムザ染色にて、その後着量を判定する。この際、あらかじめマロチラート(Diisoprophyl-1、3-dithiol-2-ylidenemalonate)、あるいは抗単球接着分子抗体を添加した群との間で比較検討を行う。マロチラート(diisoprophyl-1、3-dithiol-2-ylidenemalonate)の単球接着阻害効果については繰り返し実験を行ったが、際立った効果をあげるに至らなかった。単球接着分子については、invivoの判定を考慮に入れると、ウサギの系が最も扱いやすく、その場合にはVCAM-1が最もよい接着分子と考えられた。。VCAM-1と単球接着の関係を観察する目的で、まず、遺伝的に動脈硬化を引き起こすWHHLウサギを用いて、それぞれに動態を検討したところ、1ヶ月令ですでに動脈硬化の起こりやすい場合にVCAM-1の発現を抗VCAM-1抗体を用いて確認することができた。この際、第1肋間動脈では、その入口のみに接着分子の発現が観察されたが、2ヶ月令では、その付近の動脈では全周にわたって観察されることが明らかにされた。1ヶ月令ではすでに単球-マイクロファージの存在も確認された。約3ヶ月令ではTリンパ球の存在も同部位に確認された。この事実は始めての結果であり、学会発表予定であり、論文も準備中である。この間、接着分子のノックアウトマウスの研究が米国において行われ、単独の単球の接着が単球接着分子のみにて起こる現象ではないことが判明し、今回の研究テーマも方向転換せざるをえなくなった。