著者
岸 誠司 土井 俊夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.5, pp.1289-1295, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

クリオグロブリン血症は主として細動脈レベルに生じる全身性血管炎を生じる疾患で,極めてC型肝炎ウイルスとの関連が強い.皮膚,関節,神経系,腎臓等が主として標的となり,特にC型慢性肝炎患者において皮膚病変を認めた場合には注意が必要である.活動性の高い腎病変や全身性の血管炎を呈する免疫抑制療法や血漿交換療法の必要な重症例も存在する.とくにC型肝炎ウイルス関連クリオグロブリン血症については,B細胞関連リンパ増殖性疾患のひとつとして定義されるようになり,慢性的なC型肝炎ウイルス感染と,Bリンパ球のクローン性増殖との関係も次第に分子レベルで解明されつつあり,抗B細胞療法としてのリツキシマブ投与など治療法も進歩しつつある.
著者
塚口 裕康 野間 喜彦 桑島 正道 土井 俊夫 中屋 豊 水野 昭
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

背景 近年のヒトゲノム解析の飛躍的な進歩により、家族性ネフローゼの疾患遺伝子が相次いでクローニングされた。その中でもネフリンとポドシンは共に糸球体ポドサイト細胞間隙に形成されるスリット膜に存在し、濾過膜の構造・機能の保持に働いている。ネフリンは免疫グロブリンスーパーファミリーに属する接着因子で、スリット膜の主要構成分子である。一方ポドシンはカベオリン様のヘアピンループ膜貫通構造を持つ、新規糸球体蛋白であるがその機能は不明である。目的 ポドシンは欠損するとネフローゼや糸球体硬化症発症を引き起こすことが、マウスやヒトで示されており、蛋白尿性腎疾患の発症機序を解明する重要な分子である。ポドシンはストマチンファミリーの属するタンパクであるが、病態解明の第一段階としてまずその細胞や組織レベルでの分子動態を明らかにする。方法 正常ラットとネフローゼモデルであるPAN腎症ラットの糸球体ポドサイト超微細構造下におけるタンパク局在を免疫電顕金染色法にて検討した。同時に、マウスL細胞やイヌ尿細管由来の上皮細胞MDCK細胞にポドシンを発現させ細胞接着装置形成に伴うタンパク動態を検討した。結果 PAN腎症ラットで形成される細胞接着装置にポドシンの集積を確認し、ポドシンが足突起形態の維持に重要であることがわかった(新潟大学・腎研構造病理学・山本格、矢尾板永信博士との共同研究)。培養細胞においても、ポドシンの細胞接着面への集積を認め、生体内のタンパク動態と一致した。考察 ポドシンの局在を解析するのに必要な、動物モデルの確立と培養細胞系の樹立を行った。これらの実験系は新しいポドシン結合タンパクの特性解析に役立ち、新規ネフローゼ遺伝子同定に向けた今後の研究発展に貢献する。
著者
北 徹 濱口 洋 若月 芳雄 久米 典昭 横出 正之 土井 俊夫 吉岡 秀幸
出版者
京都大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

まず、本研究の目的である血管内皮細胞への接着及びその阻害効果を判定する方法として、ヒト臍帯静脈から採取した内皮細胞を培養し、あらかじめ常法にて採取した単球の接着を行う。24時間培養を行い、dishを洗浄した後、ギムザ染色にて、その後着量を判定する。この際、あらかじめマロチラート(Diisoprophyl-1、3-dithiol-2-ylidenemalonate)、あるいは抗単球接着分子抗体を添加した群との間で比較検討を行う。マロチラート(diisoprophyl-1、3-dithiol-2-ylidenemalonate)の単球接着阻害効果については繰り返し実験を行ったが、際立った効果をあげるに至らなかった。単球接着分子については、invivoの判定を考慮に入れると、ウサギの系が最も扱いやすく、その場合にはVCAM-1が最もよい接着分子と考えられた。。VCAM-1と単球接着の関係を観察する目的で、まず、遺伝的に動脈硬化を引き起こすWHHLウサギを用いて、それぞれに動態を検討したところ、1ヶ月令ですでに動脈硬化の起こりやすい場合にVCAM-1の発現を抗VCAM-1抗体を用いて確認することができた。この際、第1肋間動脈では、その入口のみに接着分子の発現が観察されたが、2ヶ月令では、その付近の動脈では全周にわたって観察されることが明らかにされた。1ヶ月令ではすでに単球-マイクロファージの存在も確認された。約3ヶ月令ではTリンパ球の存在も同部位に確認された。この事実は始めての結果であり、学会発表予定であり、論文も準備中である。この間、接着分子のノックアウトマウスの研究が米国において行われ、単独の単球の接着が単球接着分子のみにて起こる現象ではないことが判明し、今回の研究テーマも方向転換せざるをえなくなった。