著者
船曳 康子 村井 俊哉
出版者
一般社団法人 日本児童青年精神医学会
雑誌
児童青年精神医学とその近接領域 (ISSN:02890968)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.175-184, 2017 (Released:2017-07-04)
参考文献数
14
被引用文献数
3

目的:ASEBA(Achenbach System of Empirically Based Assessment)の原本に従い,CBCL(Child Behavior Checklist)/6-18の行動チェックリストについて,日本語版による標準値作成を試みた。方法:参加者3,601人を,男児・6-11歳群(924人),男児・12-18歳群(849人),女児・6-11歳群(880人)および女児・12-18歳群(948人)の4グループに分けて,素点をもとに「不安/抑うつ」,「引きこもり/抑うつ」,「身体愁訴」,「社会性の問題」,「思考の問題」,「注意の問題」,「規則違反的行動」,「攻撃的行動」の症状群尺度,内向尺度,外向尺度および全問題尺度のT得点を算出した。信頼性と妥当性は,Cronbachのα係数,尺度間相関とASSQ(The high-functioning Autism Spectrum Screening Questionnaire)との基準関連妥当性を検討した。8症状群への性および年齢群の影響を重回帰分析を用いて検討した。結果および考察:α係数は良好で,尺度間の相互相関は全て有意であり,ASSQとも正の有意な相関を示して,尺度としての妥当性に問題は認めなかった。また,重回帰分析の結果からは,男児は「注意の問題」と「規則違反的行動」において問題を生じ,女児は「不安/抑うつ」と「身体愁訴」に問題を生じる傾向があった。年齢では,低年齢群が「不安/抑うつ」,「社会性の問題」,「思考の問題」,「注意の問題」,「規則違反的行動」および「攻撃的行動」に問題を生じており,高年齢群は特に「引きこもり/抑うつ」に問題を生じる傾向があった。
著者
川崎 真弘 米田 英嗣 村井 俊哉 船曳 康子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.33, 2014 (Released:2014-10-05)

発達障害児に見られる「逆さバイバイ」のように、視点と身体表象の重ね合わせはコミュニケーション時の発達障害の一つとして重要な未解決問題である。本研究では、視点と身体表象の重ね合わせを健常者と発達障害者で比較し、発達障害の方略の違いを調べた。PCディスプレイ上に呈示された人の両手のうち一方がタッピング動作をし、被験者はその動作と同じ手でタッピングをすることが要求された。方略の聞き取り調査より、定型発達者の多くが視点取得の方略を取るのに対して、発達障害群の多くは逆に心的回転の方略をとった。その方略の違いは発達障害のスケールと有意に相関した。また発達障害者は定型発達者とは異なり、自分がとった方略と異なる方略を強制されると有意にパフォーマンスが悪化した。今後の課題として同時に計測した脳波・光トポグラフィの結果を合わせて発達障害の方略の違いに起因する脳ネットワークを明らかにすることを目指す。
著者
清水 里美 郷間 英世 船曳 康子 米澤 朋子
出版者
平安女学院大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

(1)1歳6ヵ月児健診、3歳児健診、および5歳児健診時における発達スクリーニングに適した項目と保護者向けの発達評価に関する問診項目を選定し、タブレットで反応を収集分析できるシステムを開発する(2)開発したタブレット版発達スクリーニング検査を各健診の該当年齢児に実施し、新版K式発達検査の2020年版の標準化データと比較する。また、タブレット版実施時に行動を直接観察評価し、タブレットによる取得情報と比較する。以上の分析を通じてタブレット版の有効性について検討する(3)クリニック等に協力を求め、臨床事例にタブレット版発達スクリーニング検査をおこない、適用可能性を検証する
著者
小西 行郎 秦 利之 日下 隆 諸隈 誠一 松石 豊次郎 船曳 康子 三池 輝久 小西 郁生 村井 俊哉 最上 晴太 山下 裕史朗 小西 行彦 金西 賢治 花岡 有為子 田島 世貴 松田 佳尚 高野 裕治 中井 昭夫 豊浦 麻記子
出版者
同志社大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

発達障害とりわけ自閉症スペクトラム障害(以下ASDと略す)について、運動、睡眠、心拍、内分泌機能、体温などの生体機能リズムの異常を胎児期から学童期まで測定し、ASDにはこうした生体機能リズムの異常が症状発生の前、胎児期からでも見られることを発見した。それによって社会性の障害というASDの概念を打ち破り、生体機能リズムの異常としてのASDという新しい概念を得ることができた。この研究を通して、いくつかのバイオマーカを選択することが可能になり、科学的で包括的な診断方法を構築すると共に、障害発症前に予防する先制医療へ向けて展望が開けてきた。
著者
辻田 那月 片岡 茉好 船曳 康子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-034, 2021 (Released:2022-03-30)

本研究では親子間のメディア利用に対する意識の差を,米国バーモント大学のThomas Achenbachらが開発した青少年のメディア依存質問紙であるMedia Activity Formを用いて検討した。11~18歳の子ども300人(男子150人・女子150人)とその親が調査に参加した。親は自分の子どもの,子どもは自分のメディア利用意識についてポジティブな2項目とネガティブな11項目について回答した。性差について女子の方が男子よりもメディアに時間を費やしすぎていると感じていた。また親子間では親の方が子どもより,子どもがメディアに時間を費やしすぎていると感じており,さらにメディアに費やす時間が減れば子どもはもっと家族と過ごし,睡眠をとり,学業成績が良くなるだろう,などメディアについてネガティブに捉えていることが分かった。一方,子どもの方が親よりもメディアを通して役立つ情報を得る,メディアの利用は学業の役に立つ,などメディアについてポジティブに捉えており親子のメディアについての意識には違いがあることが分かった。
著者
船曳 康子 北 徹 石井 賢二 日下 茂 袴田 康弘 若月 芳雄 村上 元庸 横出 正之 久米 典昭 堀内 久徳
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.274-278, 1999
被引用文献数
10

症例は83歳男性. 1996年12月末より徐々に喀痰, 咳嗽, 全身倦怠感, 食欲低下みられ当院受診. 肺炎と診断され1997年1月7日入院となった. 入院時血圧70/48mmHg, PaO2 55.5mmHg, CRP20mg/dl, ラ音聴取, 黄色膿性痰みられ, 抗生剤を開始した, 血清抗体価の上昇より (入院時4倍→2週後128倍), インフルエンザA感染症の合併と診断した. 発熱, 呼吸困難は抗生剤治療に抵抗性であった. 血中よりアスペルギルス抗原を検出し (2+), 抗真菌剤治療により抗原は (1+) と改善したが, 2月20日, 喀血をきたし永眠された, アスペルギルス症は免疫不全患者が罹るとされているが, 本例では入院後数日間白血球数が低下しており, インフルエンザによる一時的免疫力低下がアスペルギルス症の発症に関与したと考えられた. また高齢者のインフルエンザ感染症の合併症の重篤さが示唆された.
著者
船曳 康子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

発達障害は個人差の大きい不均一な症候群の集合体である。このため、臨床・行動特性の分布を明らかにすることを目的とし、特性の解析、診断名(自閉性障害の知的障害有と無、アスペルガー障害、特定不能型広汎性発達障害(PDDNOS)、混合型ADHD、不注意優勢型ADHDとの関連の検証を行った。いずれの群でも群間差を認めない特性は睡眠リズムのみ、自閉症2群間では有意差のある特性はみられず、知的障害のない自閉症とAspergerの差は言語発達のみであった。AspergerとPDDNOSの差はPDD診断基準の中核のみで、PDDNOSと不注意優勢型ADHDの差はPDD要素が診断閾値を超えるかどうかであった。