著者
田所 幸浩 山里 敬也 田中 宏哉 荒井 伸太郎 中島 康雄 平岡 真太郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J102-B, no.6, pp.445-458, 2019-06-01

確率共鳴(Stochastic resonance: SR)とは,系の雑音強度の増大に対して系の応答が向上する非線形現象のことである.従来,雑音は工学的には邪魔なものとしてフィルタ処理等を駆使して積極的に取り除かれてきた.しかし,確率共鳴では異なるアプローチをとる.すなわち,雑音を積極的に利用することで,系の応答を改善する.例えば,生態系は雑音を巧く信号処理に活かすことで,雑音に埋もれた微弱な信号であっても感知できるしくみを有している.このしくみを情報通信に応用することができれば,従来の系では感知できないような微弱な信号を用いた情報通信システムの構築が期待される.そこで本サーベイ論文では,まず確率共鳴現象についての初期の検討から現在に至る研究動向を俯瞰し,確率共鳴現象を支える基礎理論についての概説を試みる.次に,確率共鳴現象の情報通信への応用を促すため,1bit A/D変換器による多レベル信号の復調,仮説検定においても一定の条件下で信号検出確率を改善できるなど,具体的な応用例について概説し,読者の現象応用の手助けとしたい.
著者
神藤 善洋 手島 知昭 荒井 伸太郎 小沢 慎治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ITS (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.150, pp.7-12, 2010-07-21
参考文献数
1

本稿では,料金所の屋根に設置された定点カメラの画像を用いて交通流解析を行うために必要となる背景画像の動的更新の手法を提案している.従来手法の問題点として,背景画像を直接とるのは現実的ではなく,背景画像の更新が必要である.また,複数のフレームの平均を取るだけでは不十分であることが,従来研究で示されていた.そこで,本手法ではアシスト画像と呼ばれる動物体が頻繁に通過する領域が明るくなっている画像を導入している.これを導入することで車両がほとんど走行していない領域においてのみ平均値と標準偏差を計算することができ,信頼度の高い背景モデルを生成できることを示している.この信頼度の高い背景モデルを用いて,複数のフレームから背景画像らしい画素を求めることによって背景画像を更新する手法を提案している.実験により,走行している車両が背景画像に映り込まないことを確認した.また,従来の手法で問題となった画素値が一様なトラックによる背景画像の劣化が低減できたことを示している.