著者
荒井 龍弥 宇野 忍 工藤 与志文 白井 秀明
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.230-239, 2001-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
13

本研究では, 縮小過剰型の誤概念として小学生の動物概念を取り上げ, この誤概念を科学的な概念に修正するための境界的事例群を用いた教授法の効果を検討した。本研究の中心的仮説は, 境界的事例群を用いた教授により縮小過剰型誤概念が修正されるであろうというものであり, この仮説を検証するために, 3つの実験が行われた。実験はいずれも, 小学校5年生を対象とした理科の授業として行われ, 事前テスト, 自作のビデオ教材の視聴と視聴後の話し合いによる教授, 事後テストという3つのセッションで構成された。境界的事例群として水中のプランクトン事例群及び貝事例群を単独で用い, 食べる, 動く, 排泄するシーンを示すビデオ教材の視聴を行った第1, 第3実験では, 概念の組みかえを示す結果は得られなかった。境界的事例としてプランクトン事例と貝事例群を用いたビデオ教材の視聴を行った第2実験では, すべての課題の正答率が大幅に増加し, 仮説を支持する結果を得た。これらの結果から, 縮小過剰型誤概念の修正には, 2種の境界的事例群の対提示が有効であることが確認された。
著者
荒井 龍弥 Tatsuya Arai 仙台大学 Sendai College
雑誌
仙台大学紀要 = Bulletin of Sendai College (ISSN:03893073)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.35-48, 2000-11-01

A topic of recent interest in educational psychology is that students have wrong or scientifically unreasonable knowledge. This knowledge is called by various terms, for example, "misconception", "conceptual bug", "lay theory" or "RU-bar". In a college of sports science, it is an important educational target to remove misconceptions about sports. In this study, two investigations were carried out to reveal what sort of misconceptions about sports students had. In a preliminary research, 673 students in a college of sports science were asked to report about their misconceptions after having had the concept of RU-bar explained in an educational psychology class. From their repots, 47 things were judged to be misconceptions. Then, in the main research, 241 students were asked to rate 23 misconceptions selected from the 47, using a 5-scale rating method. They did the rating twice, to recall when they were in high school and the present time. The results showed the following. 1) When they were in high school, the average rating of 12 out of the 23 items was higher than 3, suggesting that many students had several misconceptions at high school. But nowadays, this number has reduced by half. It would seem that education at college was effective. 2) Within the items related to each other, because the value of partial correlation was low, this means that students answered without consistency. It was considered that any RU-bar did not exist in these items.
著者
白井 秀明 宇野 忍 荒井 龍弥 工藤 与志文 佐藤 淳
出版者
東北福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.平成16年度(1)物質の基礎概念についての横断的調査:対象は小学校4〜6年生。学年末に物質の基礎概念(重さの保存や加法性など)理解度調査を行った。その結果、6年においても重さ未保存者がおり、さらに体積と重さを混同するというある種の誤概念所持が推測される誤答者も少なからずいた。(2)単元間の相互関連づけを目指す教授プランの開発とその実施及び評価:5年理科の「もののとけ方」単元を対象に単元終了時に、4年単元で既習の実験を再現し体積や重さについて増減同の確認する学習活動を追加した。その結果、物質の基礎概念と単元目標のいずれの理解についても一定の効果しか見られなかった。2.平成17年度(平成16年度(2)と同じ学習者)(1>単元間の相互関連づけを目指す教授プランの開発とその実施及び評価その1:6年「ものの燃えかたと空気」単元終了時に、乾留や燃焼などの化学変化の前後で重さと体積の増減同の確認作業をさせる学習活動を追加。その結果、単元目標のうち「二酸化炭素が火を消す働きがある」と誤答した学習者が授業後にも依然半数いた。さらに物質の基礎概念についても十分理解を促進できなかった。(2)単元間の相互関連づけを目指す教授プランの開発とその実施及び評価その2:6年「水溶液の性質とはたらき」単元内で、物質の仲間分けの手がかりとなる化学現象(水への溶解、燃焼など)や酸性水溶液に対する金属などの溶解現の前後で、物質の重さの変化を判断させた。体積は測定する機会を増やすにとどめた。結果、単元目標のうち水に溶けるか否かと火で燃えるか否かの関係は理解が促進されたが、物質の分類については不十分であった。物質の基礎概念については、体積と重さの混同など依然として十分に理解を深めることができなかった。しかし、これら3つの授業を受けた学習者は、横断的調査の6年生よりも物質の基礎概念についての理解は深まっていた。