著者
荒木 千佳子 下村 道子 吉松 藤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.184-192, 1991-08-20
被引用文献数
4

すり身に水,卵白またはデンプンを添加した場合,その加熱ゲルの物性がどのように変化するか調べた。1.官能検査において,100%すり身と80%すり身のゲルに卵白を添加すると,添加量が多くなるにつれて,硬さは低下し,水気は多く感じられるようになり,きめは粗くなることが示された。卵白の添加量を増加するにつれ,テクスチュロメーター測定による加熱ゲルの硬さは低下し,針入度に上昇した。ゲルの組織を観察すると,卵白の添加によって,きめが粗くなって,気泡が多くなっているのが観察された。80%すり身のゲルでは卵白の添加は分離液を減少させた。2.すり身にデンプンを添加すると,官能検査では添加量が多くなるにつれて硬くなり,きめは細かくなると評価された。デンプンの添加量を増加すると,加熱ゲルの硬さ,弾力性が上昇し,もろさが低下した。また,きめが細かくなり,分離液量は低下した。デンプン添加のゲルの組織を観察すると,デンプン粒の多くは,膨潤し,糊化しているのがみられた。80%すり身では,100%すり身よりデンプン粒子の膨化がさらに進んでいた。デンプンの添加は,加熱中に魚肉から分離される水分をゲル中に保持し,糊化したデンプン粒子は,硬さ,弾力性の上昇に寄与していると考えられた。
著者
市川 朝子 荒木 千佳子 中島 利誠 島田 淳子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.894-900, 1992-10-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

ゼラチン濃度2~5%,アスコルビン酸およびりんご酸2%水溶液中へ分子量の異なる4種類のキトサン(A:分子量20~30万, B: 4~6万, C: 1~3万, D:約2000)を0.25~1%濃度で添加し,調製したゲルについて,強度や保水性の物性変化を検討した.(1) ゲルの破断応力-破断歪に対して,ゼラチン濃度と共にキトサンの種類の影響が明らかにされ,分子量の小さいキトサンDの添加の場合に,両者の物性パラメーター値が共に増大し,ゼラチンーキトサン間の相互作用により,強靭なゲルを形成することを示唆した.(2) ゼラチン2%でアスコルビン酸溶液を用いて調製したゲルのクリープ測定による粘弾性の解析で,添加量の増大に伴い,キトサンAでは弾性率の上昇傾向を,一方,キトサンB, CおよびDでは粘性率の低下傾向を示した.(3) ゲルの離漿率に関しては,キトサンの種類として分子量の大きいものほど低減の効果がみられ,ゼラチン濃度5%でキトサンA 1%をアスコルビン酸溶液に加えた場合には,離漿率は約1%まで抑えられた.
著者
荒木 千佳子 市川 朝子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.207-215, 1992-08-20
被引用文献数
3

全粒粉を用いることにより、組成中にかなり多量のバターを含むケーキ生地も、オールインミックス法という簡単な方法で調整することが可能となった。この際、下層部に形成される"ういろう様"の層は、組成中の全粒粉の配合割合、乳化剤添加量および攪拌時間によって顕著に影響された。粉と同量のバターを用いた組成の場合、全粒粉の配合割合は50%以上、乳化剤は3%、攪拌時間は4分間が良い性状を示し、官能検査においても、全粉粒の配合割合が50%前後のものが好まれた。全粉粒中、30メッシュ上の粗い組成部分は、ケーキの性状を良好に仕上げるのに最も有効な区分であるが、嗜好的には60から100メッシュ上の組成のものが総合的に好まれた。