著者
阿部 芳子 長野 宏子 市川 朝子 下村 道子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成20年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.72, 2008 (Released:2008-08-29)

【目的】 食物アレルギーの発症例数が多いものに小麦製品が挙げられており、小麦粉製品の低アレルゲン化等の研究が進められている。かん水添加の有無およびpHの変化が小麦たんぱく質のアレルゲン成分の変化におよぼす影響を検討した。 【方法】 湿麩および麺の調製には強力粉(粗たんぱく質12.3%)を用いた。麺へのかん水添加は粉重量の1%とした。湿麩をpH 2からpH 11の緩衝液で抽出後、凍結・UTH液で溶出した。麺生地とゆで麺は凍結乾燥後アセトンパウダー試料とし、緩衝液(pH8.0)で抽出した。低分子部分はHPLCにてアミノ酸分析を行い、高分子部分はSDS-PAGE電気泳動後、タンパク質をPVDF膜に転写して小麦アレルギー患者の血清との抗原抗体反応を行った。 【結果】 各pH溶液抽出の湿麩たんぱく質は、小麦アレルゲンである16kDa付近で、反応が現れていたが、pH 11のかん水抽出試料では反応がすくなかった。生地および麺はいずれもロイシンが多く、GABAも存在していた。かん水生地と水生地のPAGEでは31kDa付近に濃いバンドが現れ、15~16kDaにもバンドがあり、同様の傾向を示した。ゆで麺ではかん水添加の有無で泳動パターンに差があり、かん水麺では生地で現れたバンドの多くが薄くなって消失していた。水麺では生地より増加傾向を示した。従って、かん水麺では加熱でアレルゲンのバンドが変化減少することがみられた。ゆで麺を小麦アレルギー患者の血清と抗原抗体反応させた結果、小麦たんぱく質の主要なアレルゲンのバンドが消失していた。特にアレルギー反応を起こしやすい15~16kDa、31kDa付近のバンドが消失したことから、かん水の添加はアレルゲンの除去に効果のあることが考えられた。
著者
阿部 芳子 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.461-467, 2006 (Released:2007-10-12)
参考文献数
12
被引用文献数
5

中華麺の独特のテクスチャー発現に対する, かん水の作用を調べるために, 強力粉に1%の粉末かん水を含む45%のかん水を加えて麺を作製し, かん水を加えない水麺と比較して, 次の結果を得た.1) かん水麺と水麺では, ゆで加熱中の水分量および重量には, ほとんど差がみられなかったが, 食味評価ではかん水麺は水麺よりも硬く, 外観 (麺表面) がなめらかでないと判断された. また, 破断強度解析において, 加熱7分間まで, かん水麺は水麺より破断強度の最大荷重値が高く, 破断応力曲線の解析では破断開始値および歪率60%までの応力変化率が高かったことから表面近くが硬い麺であると判断された.2) 糊化度はかん水麺, 水麺ともに内部より外部で高値を示した. かん水麺の糊化度は外部, 内部ともに水麺より低値を示した.3) 異なるpHの緩衝液で湿麩を撹拌するとpH2からpH3, pH9からpH11でたんぱく質が溶出することが示され, また, かん水中では高い溶出率を示した麺の組織観察において, 水麺のグルテンが線状にみえるのに対し, かん水麺のグルテンは薄く広がっているのがPAS染色で確認できた.
著者
岡田 久美子 市川 朝子 下村 道子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.327-336, 2008-10-20
参考文献数
18
被引用文献数
2

うどんのおいしさには食したときの物性が大きく関与し,それにはうどんの成分である澱粉の性状が影響するといわれる。現在製麺業界で麺の物性改良として用いられている各種澱粉としてタピオカ澱粉,コーンスターチ,サゴ澱粉のいずれかを中力粉に加えたときの物性及び官能評価を行った。その結果,タピオカ澱粉代替麺は,破断エネルギー値が低く,伸長度の高い,軟らかく伸びやすい性状を,またコーンスターチ代替麺は破断エネルギー値が高く,伸長度の低い,すなわち硬く伸びにくい性状であった。この違いはα-アミラーゼ処理した生麺の走査電子顕微鏡観察でグルテン組織の形状に明らかな違いとして認められた。さらに,各種澱粉に活性グルテンを添加すると,破断エネルギー値はいずれの澱粉の場合も高くなった。官能検査ではタピオカ澱粉に活性グルテンを添加した麺が弾力,腰のある麺として好まれた。
著者
清原 玲子 山口 進 潮 秀樹 下村 道子 市川 朝子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.294-299, 2009 (Released:2015-01-23)
参考文献数
17
被引用文献数
2

我々は揚げ物,炒め物に独特のコク,うま味の一因として,加熱調理に伴って生成する油脂酸化物の影響を考えた。そこで本研究では油脂酸化物の味への影響を調べるため,主にヒトでの官能評価によって以下のことを明らかにした。リノール酸,リノレン酸,ドコサヘキサエン酸,エイコサペンタエン酸,アラキドン酸(AA)の5種類の脂肪酸を35℃24時間酸化させ水で抽出し,それぞれ醤油希釈水に添加したところ,添加無しに比べて有意に醤油の味が強まった。なかでも酸化AA水抽出物の添加作用が最も強いことが示された。AAを数%添加した植物油で調整したコロッケ,炒飯,野菜スープは有意にうま味,コク味,後味などが強まり,嗜好性も高まる傾向がみられた。以上より,油脂酸化物が食品の味を強める作用を持つこと,また植物油にアラキドン酸を添加することで,油脂調理食品のおいしさを向上できることが示唆された。
著者
市川 朝子 佐々木 市枝 佐々木 由美子 中里 トシ子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.829-837, 1988

1) ケーキ生地の比重は, バター添加量の増加につれて高く, また, 別立て法の場合に高くなった.比容積は, バター量の少ないものほど高く, また, 共立て法の場合に高くなった.この比重と比容積値の間には, 相関係数<I>r</I>=0.748 という高い正の相関関係が認められた.<BR>2) ケーキの水分量と糊化度の問には, 相関係数 <I>r</I>=0.748 と高い正の相関関係が認められた.<BR>3) ケーキの糊化度は, バター添加量が多くなると小さくなる傾向を, また別立て法は共立て法より小さくなる傾向を示した。別立て法でバター量 0 のケーキは, 冷凍貯蔵中の糊化度の変化がとくに顕著であった.これに対し, バターを加えたケーキは, とくに共立て法の場合, 冷凍貯蔵中の値の低下が抑制された.<BR>4) 官能検査の結果から, 嗜好的には共立て法が別立て法に比べて好まれ, 別立て法は冷凍貯蔵した場合, とくに好まれない.共立て法でバターを加えたケーキは, 焼きあがり当日も, 冷凍7日後もほとんど差はみられず, もろさの面ではむしろ後老のほうが好まれた, 以上を考えあわせると, ケーキを冷凍貯蔵する場合は, 共立て法で, バターを粉の 20~40% 量加えた試料が総合的に好まれるといえよう.<BR>5) 対照として行った冷蔵貯蔵7日のケーキの性状は, 同じ期間冷凍貯蔵したケーキに比べ, 水分, 糊化度, 弾力性についてはかなり低い値を, 凝集性はやや低い値を, また硬さはかなり高い値を示した.<BR>従来から共立て法のケーキは日持ちがよい, といわれてきたことが, 今回の糊化度および官能検査の結果から支持された.
著者
市川 朝子 菊嶋 和菜 下村 道子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.82-89, 2007-04-20
被引用文献数
1

西洋かぼちゃはビタミン類,食物繊維を多く含み,甘みが強く,紛質でほくほくした味わいをもち,しかもいろいろな形態のかぼちゃを手軽に購入することができる。そこで本研究では,3種類のかぼちゃ(生,冷凍品,フレーク品)の添加が,スポンジケーキの食味と物性に及ぼす影響について検討した。その結果,以下のことが明らかになった。1)かぼちゃ添加ケーキの性状は,添加量が多くなるにつれて,硬さ及び凝集性の値は低くなり,付着性の値は高くなる傾向が示された。2)かぼちゃを添加したケーキは,生および冷凍かぼちゃの場合は,全重量中の36%前後の量まで,フレーク状かぼちゃでは26%前後の添加量までケーキのスポンジ状の組織が良好に維持された。3)官能検査においてもがぼちゃの種類によって嗜好的に好まれる添加量が,それぞれ異なることが示された。
著者
市川 朝子 荒木 千佳子 中島 利誠 島田 淳子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.894-900, 1992-10-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

ゼラチン濃度2~5%,アスコルビン酸およびりんご酸2%水溶液中へ分子量の異なる4種類のキトサン(A:分子量20~30万, B: 4~6万, C: 1~3万, D:約2000)を0.25~1%濃度で添加し,調製したゲルについて,強度や保水性の物性変化を検討した.(1) ゲルの破断応力-破断歪に対して,ゼラチン濃度と共にキトサンの種類の影響が明らかにされ,分子量の小さいキトサンDの添加の場合に,両者の物性パラメーター値が共に増大し,ゼラチンーキトサン間の相互作用により,強靭なゲルを形成することを示唆した.(2) ゼラチン2%でアスコルビン酸溶液を用いて調製したゲルのクリープ測定による粘弾性の解析で,添加量の増大に伴い,キトサンAでは弾性率の上昇傾向を,一方,キトサンB, CおよびDでは粘性率の低下傾向を示した.(3) ゲルの離漿率に関しては,キトサンの種類として分子量の大きいものほど低減の効果がみられ,ゼラチン濃度5%でキトサンA 1%をアスコルビン酸溶液に加えた場合には,離漿率は約1%まで抑えられた.
著者
市川 朝子 下村 道子
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.210-216, 2007 (Released:2013-02-19)
参考文献数
17

Egg sols diluted with various liquids are easily converted to soft and smooth gels by heating. In this paper, effects of various salts on the properties of the diluted egg and egg white gels were discussed. With univalent NaCl or KCl, the breaking strength of gels were lower than with divalent MgCl2 or CaCl2, though increased gradually with added salt concentration. The amounts of liquid released by syneresis from gels with divalent salt were significantly large compared with univalent salt.Moreover, the breaking strength of gels with same charge showed same behavior, by adjusting to the same pH value of the sols.The results of saltiness sensory evaluation test by Probit method of egg white gels with various concentration salts added were as for lows: The hardness of gels showed little influence on the saltiness. With other salts substituted to 5% of NaCl, the saltiness was weakened with MgCl2 or CaCl2 contrasting to little ef fect with KCl.
著者
下坂 智恵 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.135-142, 2005-04-20
被引用文献数
3

Rice flour was used instead of tapioca (starch) in pao de queijo with, cheese, milk and egg. By the use of rice flour it was expected to prepare a more desirable product with greater softness and smoothness. The preparation method and puffing behavior were investigated. The use of non-glutinous rice flour and glutinous rice flour milled in water, the ratio of the latter being up to 50%, resulted in a well-puffed product with softness and smoothness. Preparation without any powdered cheese resulted in practically no swelling, suggesting that air was entrained in the powdered cheese and participated in the puffing effect. A water content higher than 50% in the dough of pao de queijo did not allow products round in shape to be obtained. A homogeneous blend of powdered cheese and handmade dough of suitable puffability required 44-49% water in the dough. Heating milk added to the rice flour up to 90℃ allowed a larger amount of milk to be added to prepare well puffed pao de queijo.
著者
阿部 芳子 上舩津 暢子 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.289-295, 2006-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
18
被引用文献数
3

Egg noodles have characteristic eating quality. The physical properties of the dough and cooked noodles prepared with or without egg were examined by a Reometer, and the texture of the cooked noodles was evaluated by a sensory test. The dough kneaded with the egg was easy to produce and was required no resting time. The sensory test indicated that the egg noodles were harder, slightly more sticky and slightly more elastic than the Japanese noodles. The breaking stress value of the egg noodles measured by the Reometer was higher than that of the Japanese noodles. A microscopic observation revealed clearly recognizable endosperm cells at the center of both the egg noodles and Japanese noodles. These endosperm cells around the outside of the boiled Japanese noodles had swelled and crumbled, while the shape of the endosperm cells in the egg noodles had been retained in the amorphous complex of wheat proteins and egg.
著者
下坂 智恵 杉山 静代 熊谷 佳代子 木下 朋美 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.344-351, 2004-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1

カスタードプディングの基本的な配合割合にクリームを添加し,嗜好性の高いプディングの配合割合を検討した. 基本材料である鶏卵,牛乳,砂糖にクリームを加えてプディングを調製し,乳脂肱植物性脂肪のクリームがプディングの物性,食味に与える影響を調べようとした. その結果,次のことが明らかになった. 1.プディングは,牛乳の一部を乳脂肪クリームで代替することにより,破断荷重値が有意に低くなり,官能検査においても,基本と比べ,軟らかく,甘く,総合的においしいと評価された. 植物性脂肪クリームを加えたプディングは,代替量が増加することにより硬くなる傾向を示した. 鶏卵の一部をクリームで代替したプディングは,白く,やわらかく,甘く,なめらかなプディングとなり,総合的に好まれた. 2物性試験において,牛乳の一部を乳脂肪で代替すると破断荷重値が低下し,クリームの割合が高くなるにつれ,さらに低下した. 一方,植物性脂肪クリームで代替すると,少量の代替ではやや低下したが,代替割合を高くすると逆に破断荷重値が高くなった. クリープメータによる荷重曲線から,プディングの物性が材料配合の割合で異なり,水分よりもクリームの種類,牛乳及び鶏卵の割合が影響することが示された. すなわち,牛乳の一部を植物性脂肪クリームで代替したプディングは,基本プディングとほぼ同様の荷重曲線を示した. しかし,乳脂肪クリーム代替では,荷重曲線にみられたピークが低く,乳脂肪クリームと植物性脂肪クリームでは,プディングの物性に対する影響が異なった. また,鶏卵の一部をクリームで代替したプディングは,非常にゆるやかな,破断荷重値が低い曲線となり,乳脂肪クリームと植物性脂肪クリームとの違いはほとんどみられなかった. 3.プディングの組織を顕微鏡で観察すると,加えたクリームの種類により脂肪球の大きさが異なっていた. 乳脂肪クリームでは,脂肪球が大きくこれがたんぱく質の結合を阻害していると考えられた. 植物性脂肪クリームでは,均一な細かい脂肪球が全体に分散していた. 小さな脂肪球の多粒子が集まって凝集を起こし固化するために硬くなるものと推察した.
著者
岡田 久美子 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.327-336, 2008-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
17
被引用文献数
1

うどんのおいしさには食したときの物性が大きく関与し,それにはうどんの成分である澱粉の性状が影響するといわれる。現在製麺業界で麺の物性改良として用いられている各種澱粉としてタピオカ澱粉,コーンスターチ,サゴ澱粉のいずれかを中力粉に加えたときの物性及び官能評価を行った。その結果タピオカ澱粉代替麺は,破断エネルギー値が低く,伸長度の高い,軟らかく伸びやすい性状を,またコーンスターチ代替麺は破断エネルギー値が高く,伸長度の低い,すなわち硬く伸びにくい性状であった。この違いはα-アミラーゼ処理した生麺の走査電子顕微鏡観察でグルテン組織の形状に明らかな違いとして認められた。さらに,各種澱粉に活性グルテンを添加すると,破断エネルギー値はいずれの澱粉の場合も高くなった。官能検査ではタピオカ澱粉に活性グルテンを添加した麺が弾力,腰のある麺として好まれた。
著者
阿部 芳子 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.461-467, 2006-07-15
参考文献数
12
被引用文献数
4

中華麺の独特のテクスチャー発現に対する, かん水の作用を調べるために, 強力粉に1%の粉末かん水を含む45%のかん水を加えて麺を作製し, かん水を加えない水麺と比較して, 次の結果を得た.<br>1) かん水麺と水麺では, ゆで加熱中の水分量および重量には, ほとんど差がみられなかったが, 食味評価ではかん水麺は水麺よりも硬く, 外観 (麺表面) がなめらかでないと判断された. また, 破断強度解析において, 加熱7分間まで, かん水麺は水麺より破断強度の最大荷重値が高く, 破断応力曲線の解析では破断開始値および歪率60%までの応力変化率が高かったことから表面近くが硬い麺であると判断された.<br>2) 糊化度はかん水麺, 水麺ともに内部より外部で高値を示した. かん水麺の糊化度は外部, 内部ともに水麺より低値を示した.<br>3) 異なるpHの緩衝液で湿麩を撹拌するとpH2からpH3, pH9からpH11でたんぱく質が溶出することが示され, また, かん水中では高い溶出率を示した麺の組織観察において, 水麺のグルテンが線状にみえるのに対し, かん水麺のグルテンは薄く広がっているのがPAS染色で確認できた.
著者
阿部 芳子 上舩津 暢子 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.289-295, 2006-10-20
被引用文献数
4

中華麺のうち卵を用いて調製したドウとそれを製麺してゆでたゆで麺の性質をうどんと比較し,結果をまとめると次の通りである。1.卵で調製した麺のドウは,加水率40%ではほとんどねかし時間を必要としないほどこね操作中にまとまりやすく,かつ,軟らかかった。2.官能検査による麺のテクスチャー評価では,卵麺はうどんよりも硬さが硬く,もちもち感が少ないと評価された。3.ゆで時間の同じ卵麺とうどんの硬さを物性測定機により比較すると,卵麺はうどんよりも硬く,とくに中心部の硬い部分がうどんよりも多く残っていた。卵液により水分の浸透が抑制されていることによると考えられる。4.卵麺の糊化度は,ゆで時間4〜12分で55〜65%であり,うどんでは62〜78%で,うどんよりも低いものであった。5.卵麺とうどんの顕微鏡観察で,中心部の胚乳細胞はいずれも形が残存しており,周辺部の胚乳細胞はうどんでは膨潤して形がほとんどみられない部分が多かったが,卵麺では表面近くまで胚乳細胞が卵と小麦粉タンパク質の混合物に包まれて残っているのが観察された。
著者
市川 朝子 渡辺 雄二 神戸 恵 平江 陽子 川嶋 慶子 下村 道子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.190-195, 2001-05-20
被引用文献数
4

希釈卵液ゲルの塩味として, 一般に用いられている食塩のほかに, 他の無機塩類を添加し, 調製したゲルの食味と物性の評価を行って, 食塩の代替塩として利用することが可能かどうかを検討した。その結果は以下のとおりである。(1)KCLを用いたゲルは, 硬さはNaClと同程度で, 色は明るく黄緑がかったゲルとなった。またKClをモル濃度でNaClの19.7%量以下で添加して併用することは, 実用的に利用され得るとみなされた。また, 卵を用いたゲル状食品にNaClと併用して用いるときは, NaClは0.068M(0.4%)程度のより低濃度でKClを添加する方法で, ゲルの硬さを補強することもできる。(2)MgCl_2を用いた卵液ゲルは硬く, 明度の暗いゲルとなった。味は舌にまとわりつくような後味が残り, NaClに添加しても有効とはみなされなっかた。(3)CaCl_2を用いた卵液ゲルは軟らかく, 離漿量の多い明度も低いゲルとなった。また, NaClにCaCl_2を添加した場合, 味の点では少量の添加は可能であるが, 添加量が増すと破断応力値は低下し, 軟らかいゲルとなった。したがってCaCl_2をNaClと併用して用いるときは, モル濃度でNaClの6.5%量以下が適当とみなされた。
著者
荒木 千佳子 市川 朝子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.207-215, 1992-08-20
被引用文献数
3

全粒粉を用いることにより、組成中にかなり多量のバターを含むケーキ生地も、オールインミックス法という簡単な方法で調整することが可能となった。この際、下層部に形成される"ういろう様"の層は、組成中の全粒粉の配合割合、乳化剤添加量および攪拌時間によって顕著に影響された。粉と同量のバターを用いた組成の場合、全粒粉の配合割合は50%以上、乳化剤は3%、攪拌時間は4分間が良い性状を示し、官能検査においても、全粉粒の配合割合が50%前後のものが好まれた。全粉粒中、30メッシュ上の粗い組成部分は、ケーキの性状を良好に仕上げるのに最も有効な区分であるが、嗜好的には60から100メッシュ上の組成のものが総合的に好まれた。
著者
下坂 智惠 杉山 静代 熊谷 佳代子 木下 朋美 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.344-351, 2004-11-20
被引用文献数
1

カスタードプディングの基本的な配合割合にクリームを添加し,嗜好性の高いプディングの配合割合を検討した。基本材料である鶏卵,牛乳,砂糖にクリームを加えてプディングを調製し,乳脂肪,植物性脂肪のクリームがプディングの物性,食味に与える影響を調べようとした。その結果,次のことが明らかになった。1.プディングは,牛乳の一部を乳脂肪クリームで代替することにより,破断荷重値が有意に低くなり,官能検査においても,基本と比べ,軟らかく,甘く,総合的においしいと評価された。植物性脂肪クリームを加えたプディングは,代替量が増加することにより硬くなる傾向を示した。鶏卵の一部をクリームで代替したプディングは,白く,やわらかく,甘く,なめらかなプディングとなり,総合的に好まれた。2.物性試験において,牛乳の一部を乳脂肪で代替すると破断荷重値が低下し,クリームの割合が高くなるにつれ,さらに低下した。一方,植物性脂肪クリームで代替すると,少量の代替ではやや低下したが,代替割合を高くすると逆に破断荷重値が高くなった。クリープメータによる荷重曲線から,プディングの物性が材料配合の割合で異なり,水分よりもクリームの種類,牛乳及び鶏卵の割合が影響することが示された。すなわち,牛乳の一部を植物性脂肪クリームで代替したプディングは,基本プディングとほぼ同様の荷重曲線を示した。しかし,乳脂肪クリーム代替では,荷重曲線にみられたピークが低く,乳脂肪クリームと植物性脂肪クリームでは,プディングの物性に対する影響が異なった。また,鶏卵の一部をクリームで代替したプディングは,非常にゆるやかな,破断荷重値が低い曲線となり,乳脂肪クリームと植物性脂肪クリームとの違いはほとんどみられなかった。3.プディングの組織を顕微鏡で観察すると,加えたクリームの種類により脂肪球の大きさか異なっていた。乳脂肪クリームでは,脂結球が大きくこれがたんぱく質の結合を阻害していると考えられた。植物性脂肪クリームでは,均一な細かい脂肪球が全体に分散していた。小さな脂肪球の多粒子が集まって凝集を起こし固化するために硬くなるものと推察した。なお,本研究の一部は,日本調理科学会平成14年度大会において発表した。