著者
武藤 八恵子 島田 淳子 吉松 藤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.523-527, 1976-12-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11

1. ラードを用いた炒め物調理では, しょうがを添加した油で炒めた方が添加しないで油で炒めたものより好まれ, また油っこくないと評価された.2. しょうがを添加した油の, AV, IV, 粘度, 表面張力等は, 添加しない油のそれらと大差はないが, 乳化力は強く, またTBA値が低かった.3. ラードを熱した時の特有の匂いは, しょうがを添加すると非常に異ってくるが, ラードの揮発成分は減少も消失もせず, しょうがの匂いによってマスクされると考えられる.4. しょうがを添加する時機について, 常温の油にしょうがを添加して加熱する方法に比べて, 高温にしてから添加する方法の効果は, 今回の実験ではあまり認められなかった.
著者
青柿 節子 黒沢 和子 藤木 澄子 吉松 藤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.451-456, 1982-09-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
8

天ぷらを作る際に衣にしょうが汁を添加すると軽い好ましい衣ができるといわれているのでその理由を検討したところ次のような結果が得られた.1) 小麦粉のとき水に10%しょうが汁を添加した衣は放置時間に伴ってBL型粘度計による粘度, 揚げ種への付着量, テクスチュロメーターによる硬さ・付着性が低下した.2) 20分間放置した添加衣を光学顕微鏡により観察すると連続していたグルテンが小さく分散していることが認められた.3) 揚げ衣はしょうが汁添加後の放置時間の延長に伴って水と油の交代がよく行われた.無添加衣にはこのような傾向は認められなかった.4) 添加衣, 無添加衣を用いてさつまいもの天ぷらを作り, 官能検査をした結果, 添加衣を20分間放置したものが最も好まれた.5) しょうがからプロテアーゼを抽出精製して, その酵素液をグルテニン・グリアジンに作用させ, SDS-PAG電気泳動を行った結果, 5分間の反応により, グルテニンの分子量104,000, 84,000に相当するバンドおよびグリアジンの分子量46,000に相当するパンドが消失して低分子化していることが認められた.以上の結果より天ぷらの衣にしょうが汁を添加するとからりとした好ましい成績が得られることが明らかになった.また魚等の腿臭のある揚げ種にこの衣を用いると, しょうがの芳香も有効に働き, 効果的ではないかと考えられる.
著者
田辺 洋子 飯島 真喜子 島田 淳子 吉松 藤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.357-362, 1986-05-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
13

さとう, ゼラチン, 水というもっとも基本的な材料を用いたマシュマロを試料とし, マシュマロの調製可能な配合を決定し, さとうおよびゼラチン濃度の影響について比重, オーバーラン, テクスチャー特性を測定, 顕微鏡により気泡を観察し, あわせて官能検査を行い, その独得なテクスチャーについて検討した.1) 調製可能な配合はさとう濃度をの (30~60%), ゼラチン濃度をy (2~12%) とすると, 上限濃度y=-0.23x+17.6, 下限濃度y=-0.13x+11.6の2本の直線にはさまれる範囲にあり, さとう濃度の大きいほど, 調製に適当なゼラチンの必要濃度範囲がせまくなった.2) 抱気後比重およびオーバーランとさとう濃度およびゼラチン濃度との間には一定の傾向はみられなかった.3) さとうおよびゼラチン濃度が増加するにつれ, 平均気泡個数は増加し, よって平均気泡体積は減少した。これは気泡が小さく密になることを示している.またそれに伴い白度が増し, 硬さ, 凝集性, ガム性は増大した.4) さとう濃度を増加するとふわふわ感は減少し, 弾力が増しかみ切りにくくなった.テクスチャーの好ましさには差はみられなかった.ゼラチン濃度を増加するとふわふわ感およびかみ切りやすさは減少した.5) ふわふわ感は平均気泡体積と正の相関を有し, 気泡の平均体積が大きくなることがふわふわ感を与える要因となることが示唆された.
著者
金 基淑 藤木 澄子 吉松 藤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.172-177, 1984-03-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11

1) 梨果汁はこれに肉を浸漬することにより肉の軟化効果をあらわすことが認められた.2) 肉軟化の要因はプロテアーゼの存在のためと推測し, その抽出を試み, 抽出した粗酵素について若干の性質を調べた。i) 粗酵素活性の至適pHは5.5で, 梨汁のpHとほぼ一致している.ii) 粗酵素の至適温度は50~55℃で55℃を越すと活性が急速に低下するから, 加熱調理の初期の段階で強く働くものと思われる.iii) 本酵素はHg2+, Ag+, Cu2+等の重金属イオンによって活性が強く阻害された.また, 活性の発現にはD.T.T.システイン, あるいはメルカプトエタノール等のSH基保護試薬を必要とすることから, パパイン, ファイシン, プロメリソ等の植物起源プロテアーゼと同様にSH酵素であろうと思われる.3) 肉軟化効果は梨汁の場合よりも梨抽出粗酵素溶液を用いた場合のほうがよりいっそう顕著であった.4) 粗酵素の筋原繊維タンパク質への影響を調べたところ, ミオシンが反応時間の経過とともに分解されていくことが認められた.これは肉軟化の大きな要因であると考えられる.5) 肉組織の観察の結果から, 粗酵素溶液の肉基質タンパク質への影響もみられた.6) 筋漿タンパク質についても粗酵素によるプロテオリシスがみられた.
著者
牧野 秀子 吉松 藤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.59-63, 1981-02-20

1) 1/2濃度の牛乳液で加熱したじゃがいもは、有意に硬さが増大した。牛乳の成分別に、いもの硬さに及ぼす影響をしらべた結果では、次の傾向が認められた。牛乳の1/2濃度のカゼイン、カルシウム、リン酸の溶液で加熱したじゃがいもは、それぞれ有意に硬さが増大した。油脂混入液で加熱したいも及び加熱いもを油脂で被覆したものでは、硬さは有意に減少した。2) 1/2濃度の牛乳液で加熱したじゃがいものカルシウム含量は、対照にくらべて、1.73:1の量比で増加したことが認められた。また同濃度の牛乳液で加熱したじゃがいものペクチンは,メタリン酸塩可溶剤分(ペクチン酸塩)が増加していることが認められた。このことから、じゃがいものペクチンは、加熱時に牛乳中のカルシウムと結合して劃分が変化し、いもを硬くする一要因となることがわかった。3)牛乳液加熱いも、及び乳脂混入液加熱いもについて、官能検査により、硬さをたしかめたところ、前者は対照より硬くなり、後者は対照よりやわらかくなることが認められた。一般に、いもの煮汁中に、カゼイン、カルシウム、リン酸のいずれかの成分が溶解している場合、水煮よりもいもは硬くなると考えられる。又、いもの煮汁中に、油脂が混入している場合、或は加熱いもに油脂が付着し、いずれも75℃以上であるか、75℃以上に加温した場合、水煮或は油脂付着がない場合よりも、いもはやわらかくなると考えられる。
著者
青柿 節子 黒沢 和子 藤木 澄子 吉松 藤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.451-456, 1982

天ぷらを作る際に衣にしょうが汁を添加すると軽い好ましい衣ができるといわれているのでその理由を検討したところ次のような結果が得られた.<BR>1) 小麦粉のとき水に10%しょうが汁を添加した衣は放置時間に伴ってBL型粘度計による粘度, 揚げ種への付着量, テクスチュロメーターによる硬さ・付着性が低下した.<BR>2) 20分間放置した添加衣を光学顕微鏡により観察すると連続していたグルテンが小さく分散していることが認められた.<BR>3) 揚げ衣はしょうが汁添加後の放置時間の延長に伴って水と油の交代がよく行われた.無添加衣にはこのような傾向は認められなかった.<BR>4) 添加衣, 無添加衣を用いてさつまいもの天ぷらを作り, 官能検査をした結果, 添加衣を20分間放置したものが最も好まれた.<BR>5) しょうがからプロテアーゼを抽出精製して, その酵素液をグルテニン・グリアジンに作用させ, SDS-PAG電気泳動を行った結果, 5分間の反応により, グルテニンの分子量104,000, 84,000に相当するバンドおよびグリアジンの分子量46,000に相当するパンドが消失して低分子化していることが認められた.<BR>以上の結果より天ぷらの衣にしょうが汁を添加するとからりとした好ましい成績が得られることが明らかになった.また魚等の腿臭のある揚げ種にこの衣を用いると, しょうがの芳香も有効に働き, 効果的ではないかと考えられる.
著者
高橋 ユリア 下村 道子 長野 美根 吉松 藤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.111-120, 1990-02-20
被引用文献数
1

文献から抽出した郷土料理,行事食の煮物254種において,主な材料,調理終了時の煮汁の量,材料の種類の数,主な調味料,主な材料の状態およびだしの使用の有無について分類し,全国の各地域で作られている煮物の特徴を知ろうとした。分析には,数量化分析II類,III類およびクラスター分析を用いた。1.地域による煮物の特徴に,最も寄与しているのは主な材料で,クラスター〔北海道・東北,北陸〕,〔関東,関西〕,〔中国〕,〔四国〕,〔中部,九州〕,〔沖縄〕に類型化できた。〔北海道・東北,北陸〕では魚類が最も多く,ついで野菜類,エビ・カニ・イカ・貝類であり,これらが全材料の89%を占めていた。〔関東,関西〕では,魚類と野菜類が多く,次に豆類が多かった。〔中国〕では,魚類,野菜類,エビ・カニ・イカ・貝類に獣鳥肉類が加わっていた。〔四国〕では,野菜類が最も多く,ついでいも類,魚類であった。〔中部,九州〕では,魚類,獣鳥肉類が多く,野菜類が少なかった。〔沖縄〕では,獣鳥肉類が非常に多く,また海藻類,特に昆布の煮物が多かった。2.調理終了時の煮汁の多少によるクラスターは,〔北海道・東北,関西,関東,中国,九州,四国〕,〔北陸,沖縄〕,〔中部〕に類型化できた。〔北陸,沖縄〕では,煮汁のある鍋物類が少なかった。〔中部〕では,煮汁の少ない佃煮,甘露煮類が全国のなかでも最も多い地域であった。3.材料の種類の数では,クラスター〔北海道・東北,四国,中国,沖縄,九州〕,〔北陸,関東〕,〔中部〕,〔関西〕に類型化できた。〔中部〕,〔関西〕では,材料の数が少なく,これらの地域から南の方と北の方に向かって,いずれも材料の数は,増加する傾向であった。4.主な調味料については,各地域ともしょうゆで味つけした煮物が最も多かった。クラスターは〔北海道・東北,北陸,中部,九州〕,〔中国,沖縄〕,〔関東〕,〔関西,四国〕に類型化できた。〔北海道・東北,北陸,中部,九州〕と〔中国,沖縄〕はともにしょうゆの次にみその煮物の多い地域であるが,〔中国,沖縄〕の方が塩の煮物の割合が高い。〔関東〕,〔関西,四国〕は,みその煮物が非常に少ない地域である。〔関東〕はしょうゆの次に塩の煮物が多いが,〔関西,四国〕には塩の煮物はほとんどなかった。5.主な材料が加工食品か生鮮食品かの分類では,クラスター〔北海道・東北〕,〔北陸,関東,中部〕,〔関西,九州,中国,沖縄,四国〕の3つに類型化できた〔北海道・東北〕は加工食品の使用が最も多く,これより南の地域へ向かうにつれ,加工食品の使用が減少し,生鮮食品が増加する傾向であった。6.だしの使用の有無と地域との偏相関係数は非常に低かった。だしの使用の有無と主な材料との関連についての相関は高く,魚介類を使用した煮物では,だしを使用しない傾向であり,植物性の材料を使用した煮物ではだしを使用する傾向にあった。
著者
高橋 ユリア 福田 真由美 下村 道子 吉松 藤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.222-227, 1991-08-20
被引用文献数
2

新流通魚のテクスチャーを知ることにより,各々の魚に適した調理方法を探ることを目的とした。新流通魚13種と従来から日本人が食べている魚3種の魚肉について機器測定を行い,得られた測定値を多変量解析で分析し以下の結果を得た。1)カツオのテクスチャーに似ているものはチリマアジ,シマガツオ,アロツナスで,これらは加熱により身がしまり硬くなり,みずっぽさが少なくぱさぱさした口ざわりのものと考えられた。2)マアジのテクスチャーに似ているものはアカダラ,ホキ,ミナミダラ,オレンジラフィーで,これらは硬さ,口ざわりともにカツオとマコガレイの中間にあるものと考えられた。3)マコガレイのテクスチャーに似ているものはテラピア,ギンダラ,メルルーサでこれらの加熱魚肉は柔らかく,みずっぽく,ぱさぱさしていない口ざわりのものと考えられた。4)カツオ,マアジ,マコガレイのテクスチャーに該当しないものは3種あった。オキメダイ,シロサワラの加熱魚肉の硬さは,カツオとマアジの中間であるが,マコガレイよりもみずっぽく,ぱさぱさしていないものと考えられた。ギンブカの加熱魚肉は非常に軟らかくなるものと考えられた。5)魚肉のテクスチャーを知ることにより,各々に適した調理方法を推測できた。
著者
荒木 千佳子 下村 道子 吉松 藤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.184-192, 1991-08-20
被引用文献数
4

すり身に水,卵白またはデンプンを添加した場合,その加熱ゲルの物性がどのように変化するか調べた。1.官能検査において,100%すり身と80%すり身のゲルに卵白を添加すると,添加量が多くなるにつれて,硬さは低下し,水気は多く感じられるようになり,きめは粗くなることが示された。卵白の添加量を増加するにつれ,テクスチュロメーター測定による加熱ゲルの硬さは低下し,針入度に上昇した。ゲルの組織を観察すると,卵白の添加によって,きめが粗くなって,気泡が多くなっているのが観察された。80%すり身のゲルでは卵白の添加は分離液を減少させた。2.すり身にデンプンを添加すると,官能検査では添加量が多くなるにつれて硬くなり,きめは細かくなると評価された。デンプンの添加量を増加すると,加熱ゲルの硬さ,弾力性が上昇し,もろさが低下した。また,きめが細かくなり,分離液量は低下した。デンプン添加のゲルの組織を観察すると,デンプン粒の多くは,膨潤し,糊化しているのがみられた。80%すり身では,100%すり身よりデンプン粒子の膨化がさらに進んでいた。デンプンの添加は,加熱中に魚肉から分離される水分をゲル中に保持し,糊化したデンプン粒子は,硬さ,弾力性の上昇に寄与していると考えられた。
著者
吉松 藤子 下村 道子 岡田 洋子 宮沢 礼子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.471-476, 1977-10-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
5
被引用文献数
1

1) 産卵直後の新鮮卵のゆで卵は, 卵殻がむけにくく, 保存によりpHは上昇し, 2日後よりむけやすくなった.2) 新鮮卵にアルカリ性ガス処理を行い, pHを上昇させると卵殻はむけやすくなった.調理的見地より, アンモニアガスの処理がよく, 5%のアンモニア水で10分間の処理で効果があった.貯蔵卵に酸性ガス処理を行うと, pHは低下し, 卵殻はむけにくくなった.3) クチクラを剥離して保存すると, 無処理卵より卵白のpHの上昇が速く, 卵殻は26時間でむけやすくなった.4) ゆで卵の卵白の色については, 新鮮卵は不透明で白く, 貯蔵やアンモニア処理によって明るさL値が低下した。卵白のpHとL値との問には, 高度に有意な負の相関関係がみられた.5) ゆで卵の卵白の硬さは, 貯蔵日数により, またアンモニアガス処理により硬くなった.卵白の保水性は, 貯蔵日数, アンモニアガス処理により増した.硬さ, 保水性ともに, アンモニアガス処理は1日貯蔵したほどの効果があった.
著者
辻村 みちよ 山西 貞 吉松 藤子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
お茶の水女子大學自然科學報告 (ISSN:00298190)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.100-104, 1953-03

昆布は海国日本の特有食品で古来より食用に供せられて来た。その産額も非常に多く我国の蔬菜類中第2位を占める漬菜の年産額に近い。従来昆布の食品的意義は主としてその旨味成分のグルタミン酸,マンニット及び無機成分にあると考えられている。之等は昆布中比較的含量多い物質であり,其の他の成分については殆ど不明である。著者の1人は生長促進因子であり且皮膚機能並びに体毛発育を正常ならしめる因子であるFlavinの各種海藻に於ける含量を種々の方法で定量して,昆布中には比較的多量の900γ%内外を含むことを知った。今回は動物試験によって生体に直接作用する結果を究明せんとして次の実験を行った。即ちFlavin欠乏食で30余日飼育し欠乏症顕著となったRat 16匹につき(1)欠乏群,(2)フラビン燐酸エステル給与群及び(3)昆布粉末給与群の3群に分け試験した。その結果,欠乏群は発育惡く,毛並粗く乱れ,遂に死亡するものも出た。之に対しフラビン群及び昆布群は発育何れも正常で毛並も整っていた。猶ほ昆布群は発育,毛の長さ並びに密度,艶等に於てフラビン群よりも一般に良好であった。之により昆布がFlavin以外に何か他の有効物質を含有する如く思われるが之については尚精査を要する。只,今回の実験に於ては少くとも昆布中のFlavinが主として動物の発育,及び毛並を良好ならしめた事実を報告する。
著者
吉松 藤子 下村 道子 福永 淑子 伊藤 汎
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.22-27, 1992-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
12

“Geppei” is a traditional Chinese food. A way of preparing “Geppei” is as follows: First of all, the mixture of sugar, water and vinegar is boiled until the sugar content becomes 67%. This sugar solution is used after aging for several weeks. Then, the sugar solution, lard, wheat flour, and “kan-sui”, which is a Chinese special alkaline solution, are kneaded to a dough. Bean paste wrapped in the dough is baked into “Geppei”. A characteristic of the crust of “Geppei” is that it retains its soft texture during several weeks storage. In this study, the effects of the vinegar in the sugar solution on the physical properties of the crust were studied.The crust made of the sugar solution with the vinegar was softer than the crust without vinegar. Invert sugar was produced markedly in the sugar solution with the vinegar during boiling or aging. The crusts were made using the sugar solution which contains sucrose, glucose and fructose in various ratio, and the breaking strength was measured by a Rheoner. The more the glucose and fructose was included, the smaller the breaking strength and the softer the crust was. This is thought to be due to high hygroscopic property of invert sugar. In addition, the effect of “kan-sui” was to make the crust a desirable brown color.
著者
吉松 藤子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.359-361, 1954

1. 鰹節の煮出汁をとる場合、材料を沸騰水中に入れても、水に入れて直ちに加熱しても、水浸しておいて加熱しても馬見成分の侵出量に大した差異を認めない。<BR>汁の香気は、沸騰水中に入れたものが最もよい。<BR>2. 鰹節は使用量が増すに従つて、旨味成分の侵出率は低下する。<BR>3. 煮出汁を取るのに用いる鰹節の使用量の最大限度は、水の5%内外とされている。使用量が更に増して8%にもなると、煮出汁の味は渋みを伴つて不味である。<BR>4. 一番煮出汁に用いた水の量の半分の水を用いて取つた二番煮出汁、三番煮出汁中に侵出される旨味成分の侵出率は、材料の使用量の多いもの程低くなる。<BR>5. 血合肉の多い部分の煮出汁は、背の部分の煮出汁に比較して、色や匂が悪いのみでなく旨味成分の侵出量も少い。<BR>6. 手で削つたままのものと、それを更に細をく砕いたものとは、旨味成分の侵出量には差異は認められない。手で削つたままの形が既に侵出し易い状態であると考えられる。<BR>7. 沸騰水中に於ては、鰹節の旨味成分は極めて短時間内に侵出される。
著者
古川 英子 吉松 藤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.246-251, 1980-05-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
4

糖類を吸湿したときの変化について示差熱分析と熱天秤による重量変化を測定した結果次のことがわかった.1) グラニュ糖は150℃付近から部分的な分解に伴う重量減少が始まり, 185℃付近でショ糖分子の分解と考えられる吸熱ピークがみられた.2) 無水ブドウ糖を吸湿させた試料では初め70℃に吸熱ピークがあり, この領域に重量減少もみられた. この段階で吸着水がはなれたと考えられる. さらに165℃に融解に伴うと思われるピークがみられた.3) 結晶ブドウ糖では, 50~80℃の間で急激な重量減少がみられた. この区間に, 含まれている水分のうち, 比較的離脱しやすい水分が蒸発するものと思われる. 次に80~145℃では重量の変化はなく, それ以後急激に重量が減少したのは, 145℃以後結晶水の離脱によると考えられる.
著者
中里 トシ子 宮崎 一恵 吉松 藤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.223-228, 1984-04-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10

かき卵汁の清澄度について検討した結果を要約すると次のとおりである.1) 水を用いたかき卵汁と煮出し汁を用いたかき卵汁の清澄度は, しょうゆを加えた汁以外のかき卵汁では, 煮出し汁を用いた場合に清澄度が高いことが危険率1%で認められた.水を用いたかき卵汁の清澄度は, 食酢を加えた汁が最も高く, 調味料無添加の汁が最も低い.煮出し汁を用いたかき卵汁の清澄度は, 食酢を加えた汁が最も高く, 食塩, しょうゆを加えた汁は無添加の汁より低い.2) 卵濃度5%のかき卵汁では, 食塩濃度が増加するにしたがって清澄度が低く, 卵濃度を10%にしたかき卵汁では, 食塩濃度1%の汁の清澄度が高い.3) 汁の中に卵液を加えるさい, 卵の加熱温度が高くなるに従って清澄度は高い.4) 卵黄のみを用いたかき卵汁では, 98℃前後で加熱しても汁全体が白濁して清澄度が低い.卵白のみを用いたかき卵汁は, 清澄度が高く, 80℃で加熱した場合でも全卵で98℃前後で加熱したかき卵汁の清澄度とほとんど同程度である.5) 産卵当日の卵は, 清澄度にばらつきがみられるが, 産卵後7日前後経過した卵を用いた汁の清澄度は高く, 安定している.6) かつお節使用量1%より2%の煮出し汁を用いたかき卵汁のほうが清澄度は高い.
著者
吉松 藤子 下村 道子 福永 淑子 伊藤 汎
出版者
調理科学研究会
雑誌
調理科学
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.22-27, 1992

月餅の皮は日数を経過しても軟らかさを保っている、この理由を明らかにし、また材料の1つであるかん水の役割について検討した。(1)従来法により調製した月餅皮のドウ及び焼成した皮について検討した結果月餅のドウは食酢の添加の有無及び糖水の保存期間の長短にかかわらず物性の変化は殆どみられなかった。しかし焼成した皮では食酢を添加した糖水、あるいは長期間保存した糖水を用いた場合には軟らかい皮が得られた。また焼成1週間後のものは焼成直後のものより軟らかいものが得られた。(2)酸を添加した糖水の成分の変化をグラニュー糖を用いて調べた。その結果加熱過程中に転化糖が生成されることが明らかになり、またこれを保存することにより転化の進行が認められ、保存温度20℃より37℃の方が転化度は高かった。酸の無添加の糖水ではほとんど転化は見られなかった。(3)転化糖の存在が皮を軟らかくするように思われたのでモデル実験を行った。すなわち転化糖の量を三段階に変化させた糖水を用いて月餅皮を焼成した結果、転化糖量の多いものほど、しっとりとした軟らかい皮が得られ、転化糖が皮の物性に寄与していることが判明した。(4)かん水の使用が月餅皮の色に及ぼす影響について、かん水を用いないものを対照として比較したところ焼き色に好ましい色を与えることが明らかになった。
著者
武田 たつ代 吉松 藤子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.49-54, 1981

鰹節の水だし汁のとり方について浸出温度,時間と試料形態について検討した結果は次のようであった.<BR>1.浸出温度20℃ では,粉砕のもので16時間,薄片状で20時間,5℃ では,いずれも32時間で旨味成分の浸出量が最高に達することが認められた.<BR>2.各成分の浸出量は,時間の経過に伴って増加したが一定時間の後は減少した.従って過度の浸出時間は,かえってマイナスになる.<BR>3,だし汁の採取量は,自然湧過では薄片状の方が,吸引游過では粉砕のものの方が,より多く得られた.<BR>4.5'-AMPの浸出量は一定時間の経過後に減少し入れかわりに5'-IMPが増加した.<BR>5.各成分の浸出量は10~30分の浸出でも,かなり高く5'-AMPは煮だし汁の66~77%,5'-IMPは80%であった.<BR>6.水だし汁(最高の浸出条件)と煮だし汁の5'-AMP,5'-IMPの浸出率を比較すると5'-IMPでは煮だし汁は鰹節中の含有量の約70%であり,水だし汁は煮だし汁の約光であった.5'-IMPについては両者間に大きな差はなく約80~90%であった.
著者
吉松 藤子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.359-361, 1954-12-21 (Released:2010-03-09)
参考文献数
6
被引用文献数
1

1. 鰹節の煮出汁をとる場合、材料を沸騰水中に入れても、水に入れて直ちに加熱しても、水浸しておいて加熱しても馬見成分の侵出量に大した差異を認めない。汁の香気は、沸騰水中に入れたものが最もよい。2. 鰹節は使用量が増すに従つて、旨味成分の侵出率は低下する。3. 煮出汁を取るのに用いる鰹節の使用量の最大限度は、水の5%内外とされている。使用量が更に増して8%にもなると、煮出汁の味は渋みを伴つて不味である。4. 一番煮出汁に用いた水の量の半分の水を用いて取つた二番煮出汁、三番煮出汁中に侵出される旨味成分の侵出率は、材料の使用量の多いもの程低くなる。5. 血合肉の多い部分の煮出汁は、背の部分の煮出汁に比較して、色や匂が悪いのみでなく旨味成分の侵出量も少い。6. 手で削つたままのものと、それを更に細をく砕いたものとは、旨味成分の侵出量には差異は認められない。手で削つたままの形が既に侵出し易い状態であると考えられる。7. 沸騰水中に於ては、鰹節の旨味成分は極めて短時間内に侵出される。
著者
吉松 藤子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.25-27, 1957-03-31 (Released:2010-03-09)
参考文献数
3
被引用文献数
1

1. 二番煮出汁を取る際の水の量を従来行のれている量の倍量用いてみたが、成分の浸出量に大差は認められなかつた。一般に二番煮出汁の旨味成分の含有量は多くないが、実際に語理に応用するには従来行われているように一番煮出汁の半量の水を用いて取るのが適当と思われる。二番煮出汁への旨味成分の浸出が悪いのは一番煮出汁を取る際の加熱による影響かと考えられる。2. 浸出温度の影響については、低温においても可成りの旨味成分の浸出をみたが(100℃の時に比較して40℃で総N91% アミノ態N75%)味・香・清澄度が幾分劣るようである。3. 土佐醤油については、1cc当りの総N及びアミノ態N量を原料の醤油に比較してみると著しい増加ではないが、アミノ酸組成が複雑化して来るので、古くより行われているものと考えられる。4. 食塩の添加による影響は、アミノ態Nは無添加の場合と差異は認められなかつたが総Nにおいては食塩添加6%の所に山が出来更に添加量が増すと総N量は減少する傾向が認められた。5. ダシガラと共に放置した場合の変化は総N量には変化が認められなかつたがアミノ態N量は時間の経過と共に幾分減少してゆくようである。