- 著者
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釜江 常好
荒船 次郎
- 出版者
- 一般社団法人 日本物理学会
- 雑誌
- 日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.6, pp.409-425, 1976-06-05 (Released:2008-04-14)
- 参考文献数
- 70
1974年秋に米国のブルックヘーヴン国立研究所とスタンフォード線形加速器研究所で, 従来の素粒子とは異質の中間子が発見されてから今日までに, これと同族と思われる一群の新粒子の存在が明らかになってきた. またほぼ同じ時期に, 新粒子群の存在と同様, あるいはそれ以上重大な意味を持つと思われる異常現象が相次いで見出された. そして当然のことながら, これらの発見を, 個別的にあるいは統一的に解釈しようとする理論も数多く提案され, 合せて素粒子物理を大きな渦に巻き込んだ激動の一年余りであった. 各地の実験グループのデータ整理も一段落し, 理論的活動も少し落ち着いてきた1976年2月の時点でこれら新粒子・異常現象関係の発表結果をまとめると共に, 個別的および統一的解釈の試みを解説するのも有意義と考えて, この一文を書いて見た. これと合せて宇宙線研究グループにより報告されている新粒子, 新現象についても解説し, 批評を試みる. 新粒子群と異常現象は, 今後も, 現時点で一応の成功を収めている,「チャーム・クオーク」の導入により説明されてしまう可能性もある. それだけでも偉大な進歩なのだが, 「チャームリオーク」説を踏み越え, 素粒子の構造, 強い相互作用・電磁相互作用・弱い相互作用の全体, レプトンとハドロンの関係等の理解の革命的な飛躍につながって行く可能性も十分にある. 断片的ではあるが, これらの可能性についても随所でふれて見たい.