著者
荒船 次郎 梶田 隆章
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.860-865, 2012-12-05

日本の宇宙線研究を語る際宇宙線研究所の果たしてきた役割を忘れるわけにはいかない.本稿では,宇宙線研究所の前身である宇宙線観測所の時代から現在まで宇宙線研究所の関わってきた宇宙線研究を概観し,宇宙線研究所が日本の宇宙線研究に果たした役割を振り返ってみたい.
著者
釜江 常好 荒船 次郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.409-425, 1976-06-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
70

1974年秋に米国のブルックヘーヴン国立研究所とスタンフォード線形加速器研究所で, 従来の素粒子とは異質の中間子が発見されてから今日までに, これと同族と思われる一群の新粒子の存在が明らかになってきた. またほぼ同じ時期に, 新粒子群の存在と同様, あるいはそれ以上重大な意味を持つと思われる異常現象が相次いで見出された. そして当然のことながら, これらの発見を, 個別的にあるいは統一的に解釈しようとする理論も数多く提案され, 合せて素粒子物理を大きな渦に巻き込んだ激動の一年余りであった. 各地の実験グループのデータ整理も一段落し, 理論的活動も少し落ち着いてきた1976年2月の時点でこれら新粒子・異常現象関係の発表結果をまとめると共に, 個別的および統一的解釈の試みを解説するのも有意義と考えて, この一文を書いて見た. これと合せて宇宙線研究グループにより報告されている新粒子, 新現象についても解説し, 批評を試みる. 新粒子群と異常現象は, 今後も, 現時点で一応の成功を収めている,「チャーム・クオーク」の導入により説明されてしまう可能性もある. それだけでも偉大な進歩なのだが, 「チャームリオーク」説を踏み越え, 素粒子の構造, 強い相互作用・電磁相互作用・弱い相互作用の全体, レプトンとハドロンの関係等の理解の革命的な飛躍につながって行く可能性も十分にある. 断片的ではあるが, これらの可能性についても随所でふれて見たい.
著者
鈴木 洋一郎 佐藤 勝彦 荒船 次郎 中畑 雅行 梶田 隆章 戸塚 洋二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

ニュートリノ物理学・宇宙物理学国際会議のための企画調査を行った。本国際会議はニュートリノ物理学全般に渡るが、主に、(1)太陽ニュートリノ、大気ニュートリノを含む宇宙ニュートリノ、(2)加速器を用いたニュートリノ物理学、(3)理論、(4)その他、について、動向を調査した。国内での企画調査会を3回、外国での情報収集を2回行った。現在、この分野での最大の話題は、ニュートリノの質量の問題である。(1)、(2)、(3)ともに質量問題が中心テーマとなろう。(1)では、特に太陽ニュートリノ、大気ニュートリノの観測データーがニュートリノ振動の証拠であるかが、緊急最重要テーマである。太陽ニュートリノでは、今までに行われた5つの実験すべてから振動の可能性が得られている。特にスーパーカミオカンデは、過去の実験の50倍のスピードでデーターを取得している。これは本国際会議での重要なテーマとなる。いくつかの新しいアイデアも提案されている。たとえば、Ybを使ったエネルギーの低い太陽ニュートリノのスペクトラムの測定である。大気ニュートリノは初期の実験との食い違いが問題であったが、これも高統計のスパーカミオカンデで新たな展開が期待される。(2)では、宇宙暗黒物質の候補としてのニュートリノ質量探しが、本国際会議をめどに新しい結果を出すであろう。また、大気ニュートリノの振動を加速器からのニュートリノを用いて確認するための所諠長基線ニュートリノ振動実験が重要なポイントとなる。