著者
水野 寛 萩原 素之
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.64-68, 2003

普通ソバ品種信濃1号における開花期の水ストレスが受精から登熟の過程に及ぼす影響を調査・検討した.水ストレス強度の指標にはcrop water stress index (CWSI)を用いた.受精率(受精小花数/開花小花数)は水ストレスの影響を受けなかったが, 結実率(結実粒数/開花小花数)および登熟率(登熟粒数/開花小花数)は水ストレスで低下した.結実率, 登熟率とCWSIとの間に一定の傾向は認められなかった.対照区では結実粒数が一定数を越えると登熟粒数が減少し, 光合成産物量による登熟粒数の決定機構が示唆された.一方, 水ストレス下では結実数が制限されたため, 登熟粒数の頭打ちはみられなかった.
著者
萩原 素之 井村 光夫
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.441-446, 1991-09-05
被引用文献数
3

水稲種子を湛水土壌中に播種すると, 出芽・苗立ちが不良となるが, 酸素発生剤であるCaO_2を種子に被覆して播種した場合には出芽・苗立ちが促進される. これは, CaO_2が嫌気状態の湛水土壌中で発芽している種子に酸素を供給するためと一般に理解されてきた. しかしCaO_2を被覆した種子でも, 出芽後は, 鞘葉を通じて湛水中または空中から酸素が供給されなければ, 本葉抽出が抑制されることが知られている. 本実験では, それ自身では酸素を発生しないが, 土壌を酸化するKNO_3の種子被覆が湛水土壌中に播種した水稲の出芽・苗立ちにおよぼす効果を調査した. KNO_3被覆種子では無被覆種子に比べて出芽・苗立ちが早まり, 出芽・苗立ち率も高まった. KNO_3の効果は温度が低い場合には, CaO_2とほぼ同等ないし, むしろより顕著な傾向であった. これらの結果は, 湛水土壌中に播種した水稲の出芽・苗立ち不良の主要な原因は湛水土壌中の酸素不足ではないことを示唆している. したがって, 出芽・苗立ちの促進に種子への酸素供給が必須かどうか, また, CaO_2がなぜ出芽・苗立ちを促進するのかがさらに詳細に調査される必要があろう.