著者
柴田 紗知 松原 主典 萱島 知子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.163, 2012 (Released:2013-09-18)

目的 シソ科ハーブであるローズマリーの主な機能成分として知られているカルノシン酸には、抗酸化作用や細胞の酸化ストレス生体防御機能(Keap1-Nrf2 システム)活性化作用が報告されている。本研究室では、カルノシン酸の新規機能として血管新生抑制作用を明らかにしている。血管新生抑制作用はガンとの関係がよく知られているが、近年脳疾患のリスク低下との関連性が注目されている。血管新生抑制物質による脳機能保護作用は、血管に対する間接的な効果と神経細胞に対する直接的な効果が考えられる。そこで本研究では、カルノシン酸の直接的な脳神経細胞保護作用について検討した。方法 実験には、ヒト神経芽細胞腫由来のSH-SY5Y 細胞を用いた。過酸化水素による酸化ストレス、神経毒、飢餓に対するカルノシン酸の神経細胞保護効果を発色試薬による細胞数測定法で評価した。また、カルノシン酸の細胞保護作用機序ついては、細胞情報伝達タンパク質リン酸化酵素に対する阻害剤を用いて検討した。結果 酸化ストレス、神経毒及び飢餓に対するカルノシン酸の脳神経細胞保護作用を検討した結果、カルノシン酸は酸化ストレスと飢餓において有意な保護作用を示した。一方、神経毒に対する保護作用は認められなかった。カルノシン酸の保護作用機序について、情報伝達タンパク質リン酸化酵素に対する阻害剤を用いて検討したところ、酸化ストレスと飢餓に対するカルノシン酸の保護作用が消失した。従って、カルノシン酸による細胞保護作用には細胞内情報伝達タンパク質のリン酸化に対する作用も関連していると推測された。
著者
萱島 知子 武富 和美 副島 順子 橋本 由美子 成清 ヨシヱ 西岡 征子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】九州北部にある佐賀県は、北は玄界灘、南は有明海という異なる海に面し、肥沃な佐賀平野では二毛作が盛んに行われてきた穀倉地帯である。また、世界的に知られている有田焼のように陶磁器の産業も発展してきた。これまで、昭和35〜45年頃の家庭料理について「主食」、「おやつ」、「主菜」、「副菜」の聞き取り調査の内容を報告し、地域特性にあわせた暮らしぶりを明らかにしてきた。今回は、さらに「行事食」について報告し、次世代に伝え継ぐ家庭料理として、その特徴を考察する。</p><p>【方法】調査時期は、平成24〜26年度である。対象者は地域の食文化に精通し、現地居住歴が長い方とした。地域毎に聞き取り調査を行い、一部の料理は実際に調理してもらった。調査地域は、地理的特徴から県内を7地域に分け、松浦郡有田町、武雄市山内町、杵島郡白石町、鹿島市、唐津市、佐賀市、神埼市を対象とした。</p><p>【結果・考察】まず、正月料理として、焼き物の里として知られる有田地域にて、窯元ならではのエピソードが「鏡餅」や「にらみいわし」といった料理にて語られた。また、1月7日には、「七草の味噌おつゆ」という味噌汁を、無病息災を祈願し朝食で食べていた。さらに、6月1日は山登りの日とされ、仲間と一緒に「えんどう豆のおにぎり」を食べていた。次に、秋のおくんち料理として、有田地域では「栗入りせっかん」、「煮ごみ」、「鯛の煮ふたち」といった料理が、色鮮やかな有田焼の大皿に盛り付けられ、振る舞われていた。「煮ごみ」は、山内地域でも作られ地域による相違点がみられた。以上より、年中行事を大切にし、人々の交流と共に食を楽しむ様子がみられ、地域特性にあわせた豊かな暮らしぶりがうかがえた。</p>
著者
河原 咲子 萱島 知子 松原 主典
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.69, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 これまで我々は、シソ科ハーブのローズマリーの機能性成分であるカルノシン酸とカルノソールが血管新生を抑制することを明らかにした。血管新生はガンの進行に関与していることが知られている。今回は、卵巣腫瘍細胞に対するローズマリー成分の効果として、細胞増殖とガン進行の因子であるストレスホルモン刺激に対する影響を明らかにすることを目的とした。 方法 卵巣腫瘍細胞(SKOV3)を用い、ローズマリー成分であるカルノシン酸、カルノソール、ロスマリン酸、ミルセンを培地に添加し、一定時間培養後、Cell Counting Kit-8を用い吸光度を測定し細胞数を測定した。またカルノシン酸添加後、ストレスホルモンであるノルエピネフリン添加により刺激を与え、一定時間培養後、上清中の血管内皮細胞増殖因子VEGF量をELISA法にて定量し求めた。 結果 SKOV3の増殖については、コントロールと比較しカルノシン酸添加により、25 µMで50%程度、50 µMで10%程度にまで抑制された。同様に、カルノソール添加によりSKOV3の増殖は有意に抑制された。ストレスホルモン刺激に対する影響については、ノルエピネフリン添加でSKOV3の増殖は増大し、これはカルノシン酸添加により抑制された。また、ノルエピネフリンによるVEGFの増大も、カルノシン酸添加により抑制された。
著者
萱島 知子
出版者
佐賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、ローズマリー成分のカルノシン酸が精神的ストレスによるガン進行に与える影響を明らかにすることである。その結果、卵巣腫瘍細胞においてストレスホルモンにより増大した細胞増殖や血管新生促進因子の発現を、カルノシン酸が抑制することが明らかになった。カルノシン酸が、精神的ストレスによるガン進行の重要なターゲットとされている血管新生の抑制を介して、ガン進行を抑えることが示唆された。
著者
萱島 知子 井川 佳子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.124-131, 2008-09-30 (Released:2008-11-11)
参考文献数
21
被引用文献数
1

消費者雑誌「たしかな目」における食品の機能性に関する記事を調べ, 中高生を対象とした一般雑誌の記事内容についても若干の検討を加え, 以下の結果を得た。1) 食の記事が総記事件数に占める比率は, 平均すると26%程度であった。2) 食品の機能性に関連した記事件数において, 1991-1995年以降は栄養機能に比して生体調節機能が1.5から2倍程度高くなった。3) 機能性成分名の内, 特定期間に高頻度で取り上げたものは栄養機能ではビタミンと無機質, 生体調節機能では脂質と非栄養素であった。4) 一般雑誌において, 非栄養素の出現頻度が高く, また機能性に関して曖昧な表現が散見された。5) 近年の食情報において, 特定の機能性成分に注目させる傾向があった。  本調査より, 家庭科における現代の食情報に対応した学習内容として, 食品の機能性に関する内容を検討する必要性を指摘し, 研究結果を踏まえて2, 3の提案を行った。