著者
井川 佳子
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
応用糖質科学 (ISSN:13403494)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.517-524, 1996

市販サツマイモ澱粉(わらび餅粉)の性質と粒子径分布,無機質の組成と量,脱脂処理との関係を知る目的で実験を行い,次のような結果を得た. 1)澱粉の石灰水処理および無機質の量と組成は,澱粉糊液の性質や澱粉ゲルの性質に大きな影響を与えなかった. 2)大粒子の多い試料は小粒子の多い試料に比べ,その糊液においてブレークダウンがやや大きく,冷却時の粘度の戻りが小さいこと,また柔らかいゲルを形成することが示された. 3)脱脂により糊液のブレークダウン開始時期が早くなり,冷却時の粘度の戻りが減少すること,また,よりかたさが小さく凝集性の高いゲルを形成することが示された. 以上の結果から,市販サツマイモ澱粉の糊液やゲルの特性は,澱粉粒の崩壊に対する抵抗性の変化と連動しており,この変化には粒子径分布の影響が大きいこと,また脱脂処理の影響も無視できないことを明らかにした.
著者
井川 佳子
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.14-18, 1994

The properties of commercial warabi-mochi flours (sweet potato starches, P, G1, G2) with different characteristics in their gels, and effects of washing them with water on the properties of flours were studied. The results were as follows.<br>1. The amounts of calcium and potassium in flours G1 and G2 decreased after washing, but other properties showed little differences.<br>2. Flour P was different from flours G1 and G2 in calcium content, particle size distribution, swelling power and viscosity.<br>3. It was suggested that calcium content and particle size distribution of the flours were related to characteristics of their gels.
著者
広島県食文化研究グループ 三好 康之 岡本 洋子 前田 ひろみ 井川 佳子 大下 市子 奥田 弘枝 奥山 清美 亀井 文 上村 芳枝 倉田 美恵 土屋 房江 三谷 璋子 吉永 美和子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.369-377, 2006-12-20
被引用文献数
1

広島県で摂取されている魚料理を把握する目的で,広島県在住者171名を対象として質問紙を用いた聞き取り調査を実施した。回答数は4,551件であった。魚料理にはあじ,いか,ぶり,あさり,さばがよく用いられ,広島県で漁獲量の多い牡蠣,ちぬ,たちうお,こいわし,なまこはこれらより少なかった。また,島嶼地域では,自給の魚介類で調理する魚料理が他の地域よりも多かった。調理法は,焼き物が最も多く,なま物,煮物,揚げ物の4つの調理方法で総回答数の75.1%を占めていた。和風調理が多く,焼き物の64.4%を塩焼きが,煮物の75.2%を煮付けが占めていた。対照的に,こしょう,バターなどを用いた洋風調理は少なかった。広島県特有の魚介類であるこいわしは,天ぷらや刺身として,ちぬは塩焼きとして,えびじゃこは汁物や塩茹でとして料理されていた。
著者
岡本 洋子 土屋 房江 前田 ひろみ 三谷 璋子 三好 康之 吉永 美和子 井川 佳子 大下 市子 奥田 弘枝 奥山 清美 上村 芳枝 亀井 文 倉田 美恵 杉山 寿美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.160, 2005

<br>【目的】日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学:魚介類」の一環として、広島県において調査を行った。今回は、あなご、かき、まだこ(食品成分表の食品番号10015:10292:10361)の利用実態について調べることを目的とした。<BR>【方法】広島県内の14地域で、質問紙調査を実施した。14地域を島嶼部、都市沿岸部、都市内陸部、中国山地に4区分した。調査項目は、魚介類の種類、入手方法、手作り・購入、調理法、日常食・行事食度等である。調査対象者は20歳代から70歳代の171名である。調査時期は2003年10月_から_2004年2月。<BR>【結果】(1) 記載魚介類は212種類(食品成分表)、総記載料理数は4,684であった。(2) 調査者数に対するあなごの出現比率では、島嶼部83.5%、都市沿岸部80.6%、都市内陸部45.9%、中国山地18.8%であった。調理法では、焼き物と飯料理が多くみられ、照り焼き、ちらしずし、あなご飯、巻きずし、刺身(島嶼部)、雑煮、茶碗蒸し等に調理された。(3) かきの出現比率では、島嶼部63.1%、都市沿岸部91.2%、都市内陸部89.5%、中国山地73.0%であった。調理法では、4地域いずれにおいても、フライ、鍋物、酢がきが多くみられた。殻付き素焼きやグラタン料理もみられた。(4) まだこの出現比率では、島嶼部69.9%、都市沿岸部63.1%、都市内陸部36.3%、中国山地75.3%であった。調理法では、4地域いずれにおいてもなま物(刺身、酢の物)や茹で物(ゆでだこ、ぬた)が多くみられ、揚げ物(島嶼部ではたこ天)、たこの煮物やたこ飯(都市沿岸部)、にぎり寿司、たこ焼き等に調理された。
著者
井川 佳子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.110-113, 1993-05-20
被引用文献数
1

市販わらび餅粉(サツマイモ澱粉)の品質と加熱方法の違いが,わらび餅としての性質にどのような影響があるのかについて,主にゲルの物性と糊化度などの点から検討し,次のような結果を得た。1)ゲルが透明になった後の継続加熱時間が増すと,概して破断応力や凝集性は大きくなった。2)粉末状のわらび鱗粉(P)のゲルは,粒状のもの(G1とG2)に比べ,かたく凝集性が高かった。3)PとG1やG2で調製したゲルの間には官能的た差が見られ,Pはかたくねばくないと評価されたが,感触的好ましさに統計上の差は見られなかった。4)糊化度と白濁程度の点から,G2が他の2試料に比べ老化しにくいことが示された。
著者
萱島 知子 井川 佳子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.124-131, 2008-09-30 (Released:2008-11-11)
参考文献数
21
被引用文献数
1

消費者雑誌「たしかな目」における食品の機能性に関する記事を調べ, 中高生を対象とした一般雑誌の記事内容についても若干の検討を加え, 以下の結果を得た。1) 食の記事が総記事件数に占める比率は, 平均すると26%程度であった。2) 食品の機能性に関連した記事件数において, 1991-1995年以降は栄養機能に比して生体調節機能が1.5から2倍程度高くなった。3) 機能性成分名の内, 特定期間に高頻度で取り上げたものは栄養機能ではビタミンと無機質, 生体調節機能では脂質と非栄養素であった。4) 一般雑誌において, 非栄養素の出現頻度が高く, また機能性に関して曖昧な表現が散見された。5) 近年の食情報において, 特定の機能性成分に注目させる傾向があった。  本調査より, 家庭科における現代の食情報に対応した学習内容として, 食品の機能性に関する内容を検討する必要性を指摘し, 研究結果を踏まえて2, 3の提案を行った。