著者
田中 智大 橋本 直明 関川 憲一郎 大久保 政雄 小林 克也 松浦 広 光井 洋 鈴木 丈夫 岸田 由起子 山崎 一人 薬丸 一洋 田村 浩一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.574-580, 2008 (Released:2009-01-09)
参考文献数
23
被引用文献数
1

症例は75歳,女性.65歳時に胃癌にて幽門側胃切除術を受けた.微熱と肝機能障害で近医より紹介受診.来院時,肝胆道系酵素の上昇を認めた.ウイルス性肝炎および自己免疫性肝炎は否定的だった.単純CTで肝および脾のCT値が著明に上昇し,MRIでT1W, T2Wともに著明な低信号を認め,鉄沈着症を疑った.他臓器への鉄沈着を示唆する所見はなかった.血清鉄は210 μg/dlと高値,血清フェリチン値も6600 ng/mlまで上昇していた.生検した肝組織では,Kupffer細胞のみならず肝細胞内にも著明な鉄の沈着を認めた.患者に輸血歴は無かったが,胃癌術後の鉄欠乏性貧血に対し,鉄剤を断続的に約30カ月間静注された既往があり,その前後でのCT所見に変化を認めた.二次性鉄過剰症(続発性ヘモクロマトーシス)と診断し,デフェロキサミン500 mgの筋肉注射を開始,その後瀉血療法を併用し血清フェリチン値は1199 ng/mlまで改善した.鉄剤静注継続の際に注意すべき病態である.
著者
山崎 明男 益田 貞彦 大瀬 良雄 田原 論 中原 和樹 山下 吉重 薬丸 一洋
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.283-288, 1999-06-20
被引用文献数
5

原発性肺癌手術例で40歳未満の若年者症例22例を経験したので臨床的検討を加えた.男性14例,女性8例で,平均年齢34.2歳,最少年齢は23歳であった.発見動機として無症状例が12例(55%),有症状例は10例(45%)であった.無症状例は全例,検診発見例であった.組織型は腺癌が12例(55%),小細胞癌4例(18%),カノレチノイド3例(14%),扁平上皮癌2例(9%),大細胞癌1例(4%)で,40歳以上の肺癌手術症例と比較すると,小細胞癌とカルチノイドの比率は有意に高かった.病理病期は,I期9例,II期4例,IIIA期7例,IIIB期1例,IV期1例であり,IIIA期までの症例が90%を占めていた.また検診発見例は,全例IIIA期までの症例であった.生存率では,非小細胞肺癌,小細胞肺癌共に,40歳以上の肺癌手術症例と比較して有意差はなかった.
著者
山崎 明男 益田 貞彦 大瀬 良雄 田原 稔 中原 和樹 薬丸 一洋
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.871-875, 1998-12-01
被引用文献数
1

症例は62歳、男性。1996年11月に胸部異常陰影を指摘され、当科に入院した。既往歴には高血圧で降圧薬服用があった。胸部X線、CT上、左上葉に45x25mmの辺縁不整な腫瘤影を認めた。全身検索のために行った腹部CTでは、左副腎に内部不均一一影があった。血中、尿中ホルモン値、腹部MRI、1231-MIBGシンチを行い、術前に褐色細胞腫と診断できた。術中、術後の血行動態を考慮し、褐色細胞腫の手術を先行させ、2期的に肺癌の手術を施行する事とした。1997年1月27日、左副腎・腫瘍摘出術を施行した。腫瘍は、副腎外発生であったが、副腎への浸潤はなかった。この手術の1ヵ月後の1997年2月27日、左上葉切除術、肺門縦隔リンパ節郭清(R2b)を施行した。病理は低分化腺癌、術後病理病期は、pT3NOMO stageIIBであった。上葉切除の術中、術後の血行動態は安定しており、安全に管理する事ができた。褐色細胞腫を合併した肺切除では、褐色細胞腫の手術を先行させる事により安全に手術ができると考えられた。