- 著者
-
藤井 紳一郎
伊永 隆史
- 出版者
- 社団法人 環境科学会
- 雑誌
- 環境科学会誌 = Environmental science (ISSN:09150048)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.5, pp.586-592, 2000-12-31
- 参考文献数
- 11
- 被引用文献数
-
1
本研究では、ワカメ養殖加工業から発生する芽株、茎、根などのワカメ未利用物について、その発生量などを明らかにすると共に、ワカメ加工業における物質収支フローチャートを作成した。物質フロー解析結果から、ワカメ未利用物は微生物分解が可能であると判断し、低環境負荷型生物分解システムを開発した。また、熱水抽出法及び炭酸ナトリウム溶解法を用い、ワカメ未利用物からの有効成分分離利用技術を開発した。特に、熱水抽出法により得られた抽出物の分析を行い、免疫賦活物質(β-1,3-グルカン)の含有が確認された。得られた免疫賦活物質について、バキュロウイルス感染クルマエビへの投与試験を行った結果、免疫賦活物質無投与区画では20日後に100%死滅したのに対し、免疫賦活物質投与区画では最高90%の生存率が確認された。実用化可能な免疫力向上性が確認されたため、クルマエビ養殖用餌への免疫賦活添加剤としての利用を検討した。その他、炭酸ナトリウム溶解法により得られた、粗繊維質成分への酵素(セルラーゼ)処理を行うことで、オリゴ糖生産を行った。ワカメ未利用物からの有効成分分離及びその利用について検討し、ワカメ養殖加工で全国3位の実績を誇る、徳島地域における同業種でのゼロエミッション化ネットワークの形成と、その可能性を示した。同時に、熱水抽出法により得られる免疫賦活物質のクルマエビ等養殖用餌添加剤としての利用を前提に、全国的なゼロエミッション化ネットワークの構築についても検討した。