著者
高瀬 雅良 饗庭 絵里子 田中 里弥 藤澤 隆史 赤塚 諭 下斗米 貴之 長田 典子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第10回大会
巻号頁・発行日
pp.132, 2012 (Released:2012-07-20)

和音は, 音楽聴取で喚起される情動に大きな影響力を持つ。先行研究の多くは単一の和音を対象としているが, 音楽では和音進行が重要な役割を持っていると考えられる。本研究においては, 和音進行聴取時の脳活動と心理的な印象について,fMRI およびSD 法を用いた検証を行った。その結果,長三和音を含む和音進行の聴取によって, 眼窩前頭皮質(BA47)での賦活が 確認された。また, 和音進行の印象には不協和度・モダリティ(長調的/短調的)・緊張度の3因子があることが示された.さらに和音進行前あるいは進行後の和音の印象 に有意な変化が生じる和音進行が存在することが明らかになり,和音進行の結果として得られる印象が,単一の和音によって得られる印象とは 異なることが分かった。長三和音が特に明確な印象を引き起こす和音であることも示され, 脳活動との間にも整合性が見られた。
著者
藤澤 隆史 高見 和彰 Norman D. COOK
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.25-34, 2004-05-31 (Released:2010-10-28)
参考文献数
32

感情的発話のピッチ曲線に見られる“音楽性”,特に和音性の定量的評価のために,2つの新たな手法を開発した.1つ目はピッチ曲線の中で用いられた主要なピッチを抽出するための手法で,ピッチ曲線を時系列にかかわらずピッチ軸上へと射影し,1次元の散布データに変換する.その後,正規分布の合成モデル(cluster)を用いて,評価にかかわる主要なピッチ群を特定した.2つ目は得られた主要ピッチ群から,和音性を定量化するための手法で,音楽知覚の2つの定量化モデル(不協和度,緊張度とモダリティ)を用いて,発話のピッチに含まれる和音性の定量化を行った.次にこれら2つの手法の評価を行うために感情的発話に関する実験を行った.まず感情的な発話を収集し,次に得られた発話データのピッチ成分のみの情報で新たな被験者に評価させた.上記の手法で,全ての発話文について各指標を算出し,感情状態の評定値との関連性を検討した結果,ポジティブな感情状態であると評価された発話群は,ネガティブな発話群に比較して,長調的な成分が含まれること,またネガティブな発話群には,短調的な成分,不協和的な成分が相対的に多く含まれていることが明らかになった.
著者
石盛 真徳 藤澤 隆史 小杉 考司 清水 裕士 渡邊 太 藤澤 等
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.159-168, 2008-10-05
被引用文献数
1

本研究では、ソシオン理論の家族システム論に基づいて、家族成員間関係から家族システムの機能を把握するアプローチと家族システムの全体的機能に関して直接的に取り扱う研究アプローチとが融合し得るか、について検討を行った。具体的には、家族成員間の感情コミュニケーションにおける思いやりと家族全体システムの機能との関連性が調査された。その結果は、家族システムへのアプローチとして、家族成員間関係に基づくアプローチと全体的機能へのアプローチを重ね合わせて検討することの有効性を示していた。また家族構成や家族成員のジェンダーといった家族システムの内的構造変数に、社会階層意識といった外的構造変数も加えて、家族成員間関係と全体的機能との関連性を分析することによって、家族援助の実践的取り組みに対するより役立つ基礎データが提供可能となることも示された。本研究のデータは、ソシオン理論の家族システム理論に基づいて要請される完全な二相三元非対称データではなく、4人家族の子供のみを調査協力者として収集された部分的なデータであったので、今後は完全な二相三元非対称データに基づいた検討が必要とされる。
著者
藤澤隆史 NormanD Cook 長田典子 片寄晴弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.39, pp.9-14, 2006-05-03

和音/和声(chord/harmony)は,メロディ(melody),リズム(rhythm)とともに音楽を形作る重要な要素である.音楽の物理的な音響的特徴とその心理的な印象や感性との関連性について定量的に評価するために,本研究では和音性についての評価モデルを構築した.和音性は,(1)協和度(心地よい-わるい,澄んだ-濁った),(2)緊張度(緊張した-落ちついた),さらに長調か短調かといった性質を決定する(3)モダリティ(明るい-暗い,うれしい-悲しい)から構成される.本研究において提案されたモデルと,これまで経験的に知られている様々な和音タイプおよび得られた実験データとの整合性を確認し,妥当性の検討を行なった.A psychophysical model designed to explain the phenomena of resolved/unresolved harmonies and the major/minor modalities in traditional Western diatonic music is presented. The model uses solely the acoustical features of the pitch combinations for calculation of the total"dissonance","tension"and"modality"of chords. Dissonance is defined as a 2-tone effect, similar to the model of Plomp&Levelt. Tension is defined as a3-tone effect due to the relative size of intervals,following the"intervllic equivalence" by Leonard Meyer. The total sonolity of any number of tonal combinations can be computed on the basis of these two concepts.