- 著者
-
藤谷 健
- 出版者
- 日本教科教育学会
- 雑誌
- 日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, no.2, pp.85-92, 1980-04-30 (Released:2018-01-07)
教科教育における教科間の内容のかかわり合いに関する研究の一環として,女子中等教育における理科化学と家庭科の内容が,相互にどうかかわり合っているかを,教授要目および指導要領の変遷を中心に,歴史的に追跡した。20世紀初頭,高等女学校教授要目が制定された時には,生活に関連した物質は理科化学で扱われており,家事科は専ら技術教育であった。第2次大戦中の教授要目の改訂は,家政科を中心としたコア・カリキュラム的性格をもっており,従って,理科化学分野も生活に関係深い事項や物質が重点的に扱われており,両教科の関係は最も密接であった。そして,戦後の生活理科の時代には,内容としての生活の科学が方法としての問題解決学習と結びついて,化学という学問のもつ系統性を十分に教育にとり込めなかったため,その反動として,その後の指導要領の改訂によって,化学は身近かな生活から離れてゆき,一方,家庭科は技術教育中心の状態からの脱皮が不十分で,現在は,両教科は著るしく離反している。しかし,現今の社会状勢からみて,これは早晩再考を迫られるであろう。