著者
小川 容子 嶋田 由美
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.161, pp.87-94, 2016

本研究は,大学生を対象に,短い旋律を記憶再認する際にどのようなリズム変容がおこるのか信号検出理論に則って検討したものである。実験に用いた旋律は,リズム(等拍・ぴょんこ)×歌詞(促音,撥音,拗音を含んだもの・促音,撥音,拗音を含まないもの)×歌詞のイメージ(動的・静的)×旋律構造(順次進行・跳躍進行)に配慮して作成した6種類の新規旋律である。実験1では音楽専攻学生と非音楽専攻学生を対象とした再認実験を,実験2では音楽専攻学生を対象に直後再認と遅延再認実験を実施した。実験1の結果から音楽専攻学生の方が非音楽専攻学生に比べて強い確信度を保持し高い正答率を獲得していること,両者とも「ぴょんこ」リズムの記憶が等拍リズムよりも不安定であることが明らかにされた。実験2の結果からは,直後再認の結果が遅延再認の結果を上回ること,直後再認時の「ぴょんこ」リズムの記憶が等拍リズムよりもきわめて不安定であることが認められた。音楽専攻の有無に関わらず,等拍リズムに比べて「ぴょんこ」リズムの記憶がかなり曖昧になることから,我が国の明治後期以降の唱歌調全盛期にみられる唱歌のリズム変容との関わりが,示唆された。
著者
小川 容子 山崎晃男 桑野 園子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.40, pp.103-108, 2002-05-18

本論文は,駅で流されている発車サイン音楽が,電車利用者にどのような印象を与えているのかフィールド調査及びイメージ調査によって明らかにしたものである。回答者は18歳から58歳までの26名。山手線を一駅ずつ乗・降りしながら,各プラットホームで,発車サイン音楽に関する質問,形容詞印象評定と駅全体の印象に関する各質問に回答させ,併せて2ヶ月後に,同じ回答者に駅のイメージ調査をおこなった。その結果,各駅で流されている発車音楽サインのふさわしい度にはそれほど違いがみられないが,発車サイン音楽を含めたサイン音全体に対する不満が「わずらわしさ」や「耳障りである」といった印象を形成していることが分かった。2つの調査でおこなった「形容詞を用いた印象評定」では,迫力性,美的,金属製の3因子が同様に抽出され,実際の乗り降りをおこなっている時の印象とイメージとして思い浮かべる印象の間には,美的因子に関する相関が見られた。The purpose of the present study is to investigate people's impressions to signal music, which rings at platforms. Two kinds of social survey were designed to investigate the subjects' impressions using Semantic Differential and the results were compared with those of laboratory experiments. Three main results were observed: (a) All responses to the signal music could be divided into the same 3 main factors: powerful, pleasant and metallic. (b) There was a correlation on the pleasant factor between social survey and laboratory experiment. (c) Similar feelings (metallic or pleasant) for 6 kinds of signal music were evoked in both conditions: social survey and laboratory experiment.
著者
片寄 晴弘 橋田 光代 小川 容子 古屋 晋一
出版者
関西学院大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

名演奏に心打たれるという体験をした人は少なくないであろう。しかしながら、その理由、メカニズムについてはほとんどわかっていない。本研究では、コンテスト優勝者クラスのピアニストの協力のもと、世界最高峰の制度を持つセンサを用い、タッチまで含めたピアノ演奏(ポリフォニー)の演奏制御情報を計測する。あわせて、普段、必ずしも意識下に上がってこないレベルのものも含めて演奏者が解するポリフォニーレベルでの音楽構造の徹底的な聞き取りを実施する。得られた演奏制御情報と音楽構造の関係について、最新の数理解析手法を用いて分析し、ピアニストが演奏表現にこめた感動のデザインについて探っていく。
著者
小川容子 出口 友康 村尾 忠廣
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.74(1995-MUS-011), pp.49-53, 1995-07-21

テーマ辞典をもとにフレーズ開始の音程がアナクルーシスを形成するものを選び出し、これを音程、音長別にわけて分析した。その結果、音程で上行4度と1度、音長で1:2と1:1が双璧をなすアナクルーシスであることが明らかになった。(両者の組み合わせから実際には4つの典型的パターンが抽出される。)これを基に、典型的アフタクトの音程2種類と、そうでない音程1種類、これに典型的な音長2種類とそうでない音長1種類の3種類を組み合わせることによって合計9つのパターンを作り出した。これらのアナクルーシスは、そうでないパターンと演奏上どう区別されるだろうか。パターンの違いによる違いはどうか。さらに、音長間係の楽譜からの逸脱を示す一般的な演奏傾向との関係はどうか。本研究は、以上の一連の研究の途中報告である。
著者
早川 倫子 小川 容子 虫明 眞砂子
出版者
岡山大学教師教育開発センター
雑誌
岡山大学教師教育開発センター紀要 (ISSN:21861323)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.32-41, 2013-03-08

「学生オペラ」の発信は,教育現場で活躍できる人材育成と,岡山大学を文化活動の拠点とした文化・芸術活動の盛んな地域づくりを目指すことを目的として実施したものである。本稿では,約半年間の準備期間の様子とその成果を報告し,筆者らが取り組んださまざまな連携のあり方と課題について考察した。連携に関しては,①教育学部内の教員の連携(教科内容専門の教員と教科教育専門の教員),②附属学校との連携,③他学部との連携,④地域や卒業生との連携に焦点を当てて検討した。また,オペラ終演後に実施したアンケート結果からは,来場された多くの方が非常に満足されており,これからも継続してほしいと要望していることが明らかになった。
著者
小川 容子 嶋田 由美 杉江 淑子 林 睦 村尾 忠廣
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

歴史的研究, 調査研究, 実験的研究の3分野に分かれて音楽科に求められる「学力」について検討し, 音楽学力に関する幅広い議論を積み上げるための基礎づくりをおこなった。歴史的研究では,(1) 戦後の文部省研究指定校や研究実験校, 調査協力校に関する報告書・資料集の収集,(2) 調査対象地域及び対象県の選定とフィールドワークを主とした実態把握を中心に研究を進めた。調査研究では,(1) 全国の元音楽教師, 現役音楽教師を対象とした質問紙調査の実施,(2) 調査対象者並びに対象グループの選定とインタビューを主とした聞き取り調査の実施を中心に研究を進めた。実験的研究では,(1) 音楽能力調査及び学力検査の追試と分析,(2) 国際比較に基づく児童・生徒の音楽学力の実態把握,(3) 新音楽学力調査問題の開発作成をおこなった。