著者
西 隆一郎
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.97-103, 2008-02-29

一般の海域利用者は,漂着物ゴミのない綺麗で健康的な海岸を良い海岸環境と評価しがちである.筆者も良好な海岸環境を求めて10年間以上海岸清掃を続け,その知見に基づいて海岸廃棄物の定性的な考察だけを行ったことがある(西ほか,1996).しかし,漂着物(ゴミ)の管理を行うには,定量的な解析法が必要である.そこで,本論文では沿岸域の漂着物に関する問題のうち,特に陸起源漂着物の定量的評価法について考察する.つまり,陸起源物質の移動経路である山地〜河川〜河口〜沿岸域に渡る水系でのゴミ移動を取り扱う手法を提案する.ただし,漂着物収集に携わる一般市民レベルでも使いやすい解析手法とするために,土木工学で用いられる流砂系・漂砂系での土砂収支と言われる巨視的なアプローチを適用する.なお,本数値解析手法は,山地,河川,沿岸領域で収集されたゴミデータに基づいて有効性が検証されるべきであるが,この点に関しては,実際に陸起源漂着物(ゴミ)を調査している研究者の応用に委ねることにする.
著者
西 隆一郎 金子 有理 福永 和久 鶴成 悦久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_941-I_946, 2020 (Released:2020-09-28)

2014年10月に来襲した台風1418号と1419号により,鹿児島県奄美大島の南南東側で太平洋に面する瀬戸内町嘉徳集落前の嘉徳海岸で顕著な侵食被害が生じた.この時,後浜の侵食に加えて,嘉徳集落の墓地や民家の数m近くまで海岸砂丘が侵食され,砂丘としては20m程度後退した.台風銀座とも呼ばれる地域でもあり,台風は毎年来襲する可能性が高い.加えて,海岸砂丘上にある集落を護るために海岸保全の要望が地域住民からあった.一方,海岸保全だけでなく,絶滅危惧種オカヤドカリを含む海岸生態系への影響や景観および世界自然遺産登録への影響を考慮する必要性のある海岸でもあった.そこで,本論文では,台風1418号と1419号に伴う本海岸の海岸侵食機構の解明と,経年的な海岸過程について明らかにし,その後,海岸保全,環境保全,海岸利用が適切に調和した海岸保全の方向性に関し検討することにした.
著者
宇多 高明 西 隆一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.581-585, 2002-10-10 (Released:2010-03-17)
参考文献数
5

鹿児島県東部に位置する志布志湾で志布志港に隣接する菱田川から安楽川に広がる海岸中央部では, 防波堤による波の遮蔽効果や長期的な海岸過程の傾向のみからは十分説明できない特異な海岸侵食が台風0111号により生じた. そこで, 一種の侵食ホットスポット地形と考えられる当海域の海岸過程について空中写真解析, 深浅測量・波浪観測データの解析, および現地踏査にもとづいて考察した. また今後の防災対策について検討し, 高波浪の制御のために低天端リーフを提案した.