著者
藤光 康宏 西島 潤 江原 幸雄
出版者
九州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

平成18年度は、前年度に引き続き福岡県中部の警固断層及び福岡県南部の水縄断層を対象とした重力測定を行った。重力測定には既存の2台の相対重力計を用い、また測定点の座標(緯度・経度・標高)の決定は、本研究で導入したGNSS受信機、及び福岡市発行の1/2500都市計画図と久留米市発行の1/2500都市計画図を用いた。警固断層の調査では、福岡市中央区輝国・谷・小笹・平尾地区、及び南区大橋・清水・大楠地区を中心に、高密度に測定点を配置した(測定点間隔50〜200m)重力探査を実施し、平成18年度までの結果と合わせて福岡市重力異常図の詳細部分の範囲をさらに拡大した。また、警固断層を横切る6本の測線を抽出し、基盤岩深度及び堆積層の層厚を推定するために、これらの測線に沿って基盤岩(花崗岩類)・第三紀層・第四紀層の3層構造による鉛直2次元解析を行った。既存ボーリングデータのある地点において鉛直2次元解析で推定された基盤岩深度や第三紀層・第四紀層の層厚と比較したところ、非常に整合性の高い結果が得られた。水縄断層の調査では、平成18年度に実施した水縄断層西端部(久留米市中心部)の重力測定の結果を受け、久留米市市街地で見られる水縄断層の延長線南側の低重力異常がどの程度の規模のものであるかを把握するために、測定点間隔500m程度で久留米市街地西方及び南方の重力探査を行った。その結果、この低重力異常を示す地域は、耳納山地の北側を山地に沿って東西方向に延びる水縄断層とは逆に南側が落ちており、かなりの広がりがあることから久留米市南西部は非常に厚い堆積層に覆われていることが推定された。以上のことより、高密度に測定点を配置して行う重力探査は、基盤構造及び堆積層の層厚の推定に有効であることが判明した。ボーリング調査より短時間で低価格な探査手法であるため、広範囲の基盤構造・堆積層分布調査に適した探査手法であると言える。
著者
江原 幸雄 糸井 龍一 藤光 康宏 今井 亮 西島 潤 UDI Harmoko AGUS Setyawan 蘭 幸太郎 永瀬 大祐 WAHYUDI
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

インドネシア・ジャワ島中央部にある、火山弧に直交する方向に直線的に並ぶ3つの火山、メラピ火山、メルバブ火山およびウンガラン火山において、地球物理学的、地球化学的、および地質学的調査を行い、活動年代、地下構造を解明するとともに、火山体内に発達する熱水系(熱と水の流れのシステム)をコンピュータを使って定量的に解明した。さらに、熱水系が十分発達しているウンガラン火山に関しては、地熱資源量評価を行い、地熱発電(電気出力 : 2~40MW)が可能な資源量が存在していることを明らかにした。
著者
藤光 康宏 江原 幸雄 西島 潤
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、まず熱収支法の中で用いられる地熱流量係数の正確な決定のために、微気象データを連続的にかつ自動で測定する装置を製作した。この微気象連続観測装置を用いて、雲仙地熱地域内の旧八万地獄で観測を行い、熱収支法による放熱量の高精度評価を試みた。その結果、地熱流量係数を連続的に求めることに成功し、得られた地熱流量係数は、時間変化が非常に激しく、分単位もしくは秒単位で変化する値であるということが示された。ヘリコプターに搭載した装置で雲仙地熱地域上空から赤外熱映像を撮像し、得られた地熱流量係数を用いて放熱量を求めたところ、旧八万地獄5.82MW、清七地獄8.87MW、八万地獄9.96MW、お糸地獄9.72MW、大叫喚地獄2.18MW、小地獄1.84MW、雲仙地獄全体では38.39MWとなった。Yuhara et al.(1981)により評価された1978年の放熱量と比較すると、雲仙地獄全体では今回のほうが約5倍大きな値となった。本研究では、地熱流量係数の変動を考慮しているため、今回算出した放熱:量は現在の値を精度よく見積もっていると言える。また、地熱異常面積と放熱量の両者には一般的に良い正の相関が認められるが、今回の結果にも良い正の相関が見られた。さらに、微気象観測で測定される各項目や地熱流量係数の時間変化を把握するために、大分県小松地獄、熊本県阿蘇火山、福岡県九州大学箱崎キャンパスでも微気象観測を行った。その結果、地熱流量係数は短時間に変化しながら日変化が現れるが、地熱異常地域と通常地域とでは日変化のパターンが異なる傾向が見られた。地熱流量係数は時間と共に大きく変動することが判明したため、熱収支法による放熱量測定における過大評価、過小評価を避け、高精度に見積もるためには、現段階では本研究で製作したような微気象観測装置を用いる必要があると考える。