著者
門脇 浩明 西田 隆義
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.91, 2005 (Released:2005-03-17)

生物群集の形成過程において、種間相互作用は競争種間の形質置換や資源分割、分布様式を決定するメカニズムとして注目されてきた。本研究では、キノコ(硬質菌)をめぐる昆虫群集を対象として、種間相互作用と環境要因の2つの視点から群集の構造と形成過程の説明を試みた。タコウキン科の一種ヒトクチタケには3種のスペシャリスト昆虫(カブトゴミムシダマシ・ヒラタキノコゴミムシダマシ(いずれも甲虫)とオオヒロズコガの1種(蛾))がほぼ同じ密度で棲息・産卵し、幼虫が激しく食害した。空間分布解析の結果、甲虫2種は共存するが、甲虫と蛾は原則的に共存せず、後者では種間相互作用が産卵を通じて影響した可能性があった。これに対して飼育実験では、同一子実体に共存させた甲虫2種の間にほとんど影響はなく、甲虫と蛾の間には負の影響が認められた。一方、群集構造と環境要因との相関はほとんど認められなかった。これらの結果から、ヒトクチタケをめぐる昆虫群集では3種が互角な消費型競争を繰り広げ、それゆえに環境要因よりも種間相互作用のほうが群集形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。
著者
西田 隆義
出版者
滋賀県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

食植性昆虫であるマダラテントウ類の3種、ニジュウヤホシテントウ、オオニジュウヤホシテントウ、ヤマトアザミテントウについて、野外分布調査と繁殖干渉についての室内実験を行った。同じ寄主植物を利用するニジュウヤホシテントウとオオニジュウヤホシテントウの分布境界は、年平均気温の上昇にもかかわらず滋賀県では過去と比較してほとんど移動しておらず、両種間には繁殖干渉があることが分かった。異なる寄主植物を利用するオオニジュウヤホシとヤマトアザミの間にも強い繁殖干渉が生じていた。いずれの現象も繁殖干渉により合理的に説明可能であった。
著者
西田 隆義
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.287-293, 2012-07-30

生物の分布と個体数を、生物間の相互作用によって統一的に説明することは生態学のもっとも基本的な目標である。しかし、資源競争説が徐々に衰退するにつれ、統一的な説明のみこみは低下し続けているようだ。本論文では、近縁種間に潜在的にある繁殖干渉を説明の第一原理として取り込むことにより、分布、生息場所選択、ニッチ分割、競争排除、外来種による近縁在来種の急速な駆逐など、資源競争では説明が困難であった多様な生態現象が統一的に説明できることについてのべる。そして、過去の研究においてなぜ繁殖干渉がほとんど見逃されてきたかについて、資源競争や交雑の効果と比較検討することにより考察する。
著者
西田 佐知子 西田 隆義 内貴 章世 市岡 孝朗 西田 隆義 内貴 章世 市岡 孝朗
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

他生物との共進化を類推させながらも、その多様化の原因や経緯が明らかではない器官に「ダニ室」がある。本研究ではガマズミ属植物を用い、ダニ室の形態・生態的多様性の実態を明らかにするため、形態学、分子系統樹との比較、生態学の調査を行った。その結果、45の調査種で、ダニ室の有無は地域・系統などでは分かれなかった。ダニ室の多くは毛束型だった。同地域の形態が異なるダニ室、同じ形態でも違う地域のダニ室、同地域で同形態だが違う季節のダニ室では、それぞれダニの種類や数が、一部重複はするものの異なった。これらの結果から、ガマズミ属のダニ室は環境に応じて並行的に進化し、特定のダニとの強い共生関係より、緩やかで多様な関係を保つ共生器官として機能している可能性が示唆された。