- 著者
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標葉 隆馬
飯田 香穂里
中尾 央
菊池 好行
見上 公一
伊藤 憲二
平田 光司
長谷川 眞理子
- 出版者
- 研究・イノベーション学会
- 雑誌
- 研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.2, pp.90-105, 2014
知識経済とグローバル化に対応するための方策として,科学技術政策を始めとする種々の政策において高度知識人材の育成が議論されるようになって久しい。その間,大学-大学院レベルの教育において,高度な専門性に加えて,異分野との協働,コミュニケーション,そして説明・応答責任に関する能力の育成が求められるようになってきた。これらの高度知識人材に必要とされる汎用的能力の育成に関して論じられている事柄は,国内外の「科学と社会」教育が試みてきた「幅広い視野」の育成とも重なる議論である。しかしながら,とりわけ日本において大学院重点化が進められてきた状況を意識しつつ国内外の状況に目を向けるならば,大学院レベルにおける高度教養科目としての「科学と社会」教育プログラムの実施は,内外を問わず試行錯誤が重ねられているのが現状である。本稿ではこの状況を俯瞰しつつ,「総合研究大学院大学(総研大)」の事例を中心に,その現状を記述・検討する。総研大では,研究者の「幅広い視野」涵養を目的として,これまでに必修科目も含めた「科学と社会」教育の取り組みを行ってきた経緯がある。この作業を通じて,今後の「科学と社会」教育の可能性と解決すべき課題について考察する。