著者
標葉 隆馬 飯田 香穂里 中尾 央 菊池 好行 見上 公一 伊藤 憲二 平田 光司 長谷川 眞理子
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.90-105, 2014

知識経済とグローバル化に対応するための方策として,科学技術政策を始めとする種々の政策において高度知識人材の育成が議論されるようになって久しい。その間,大学-大学院レベルの教育において,高度な専門性に加えて,異分野との協働,コミュニケーション,そして説明・応答責任に関する能力の育成が求められるようになってきた。これらの高度知識人材に必要とされる汎用的能力の育成に関して論じられている事柄は,国内外の「科学と社会」教育が試みてきた「幅広い視野」の育成とも重なる議論である。しかしながら,とりわけ日本において大学院重点化が進められてきた状況を意識しつつ国内外の状況に目を向けるならば,大学院レベルにおける高度教養科目としての「科学と社会」教育プログラムの実施は,内外を問わず試行錯誤が重ねられているのが現状である。本稿ではこの状況を俯瞰しつつ,「総合研究大学院大学(総研大)」の事例を中心に,その現状を記述・検討する。総研大では,研究者の「幅広い視野」涵養を目的として,これまでに必修科目も含めた「科学と社会」教育の取り組みを行ってきた経緯がある。この作業を通じて,今後の「科学と社会」教育の可能性と解決すべき課題について考察する。
著者
久保田 明子 青木 睦 高岩 義信 飯田 香穂里 兵藤 友博 小沼 通二 後藤 基行 清原 和之 菊谷 英司
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2017-06-30

日本学術会議所蔵の歴史的資料について、(A)資料を用いた研究(日本の学術体制史研究)と(B)アーカイブズ学にのっとった資料整備を行うことが研究の計画であるが、本研究は特に(A)と(B)を別々に行うのではなく、日本の科学史等当該分野の研究者とアーカイブズ学を専門とする研究者が互いの知見や成果を相互に活用しながら共同で実施する試みである。
著者
飯田 香穂里 プロクター ロバート N Kaori IIDA Robert N PROCTOR
出版者
Latest Publisher : Elsevier(2004-)/ London
雑誌
Lancet = Lancet (ISSN:01406736)
巻号頁・発行日
vol.363, no.9423, pp.1820-1824, 2004-05-29
被引用文献数
16

日本では、第二次大戦後に喫煙率が急上昇し、それに伴い、現在、たばこ関連疾患による死亡率が急増している。20 世紀の大半において、日本のがんによる死亡原因第一位は胃がんだったが、1993 年に肺がんが胃がんを追い抜いた。日本では喫煙が肺がんの主原因であるが、政府が株式の2/3 を保有している日本たばこ産業(JT)は、たばこが疾病と死亡の大きな原因であるかどうかについて疑問を呈し続けている。日本の法廷には企業の内部文書を開示させる制度がないため、たばこと健康に関するJT の戦略について立証するのは困難である。しかし、オンラインアーカイブに保存されているアメリカのたばこ会社の内部文書によれば、JT は、喫煙による健康リスクについて長年知りながら、効果的なたばこ規制を妨害してきたことが明らかである。1980 年代半ばからは、アメリカのたばこメーカーとしばしば協力することで、このような妨害活動を進めてきた。〔アーカイブの〕証拠文書は、特に、フィリップモリスが、喫煙と健康に関するJT の対策や発表に対し助言、時には指導したこともあることを示している。JT の前身である専売公社が出版した論文のデータにおいて、報告された有害性指標値(空気中のニコチン濃度)が故意に低く変えられたという事例もある。国際協力により、JT を含むたばこ企業にとって、効果的な反禁煙(anti-antismoking)戦略の展開がより容易になっている。他の国々でも訴訟が始まれば、このような国際的な企業間協力の実態を明らかにする証拠が今後増えていくであろう。
著者
飯田 香穂里 プロクター ロバート N
出版者
BMJ Pub. Group / London (c1992-)
雑誌
Tobacco Control = Tobacco Control (ISSN:09644563)
巻号頁・発行日
2018-02-04
被引用文献数
66

目的:日本たばこ産業株式会社(JT)が、研究助成機関である喫煙科学研究財団を1986 年になぜどのように設⽴したのかを調べる。また、この財団が⽇本におけるたばこ政策と科学にどの程度影響を及ぼしたのかを探る。⽅法:最近の⽇本国内の訴訟資料、出版されている⽂書、「Truth Tobacco Industry Documents」アーカイブに保存されているたばこ業界の内部⽂書等を分析した。結果:たばこ規制に対するJT の対策は、1980 年代半ば、JT ⺠営化に伴って強化された。⼤蔵省の保護下にとどまったものの、半⺠営化された会社には、(これまでと同等の)「政治家とのパイプ “access to politicos”」はなくなり、海外たばこメーカーとの連携の必要性が出てきた。その解決策の⼀つが、アメリカの会社と密かに情報交換をしながら進めた、第三者機関としての財団の設⽴だった。この財団には⽇本の科学的・医学的権威を取り込むことが期待されていた。政府や学界の影響⼒のある⼈物に守られ、財団は、国内外のたばこ規制政策に影響を及ぼすという⽬標とともにスタートした。財団から助成を受けた研究者は、国際学会、国内の諮問委員会、たばこ訴訟等に参加し、たばこの販売継続を可能にする環境づくりに貢献した。結論:財団は独⽴や中⽴を意図したものではないことが内部⽂書から明らかであり、JTの主張とは異なる。財団の設⽴は、1953 年にアメリカでスタートした業界による “たばこの害否定論キャンペーン” が、海外たばこメーカーの積極的な協⼒により、アジアに⼊ったタイミングを⽰すものと⾔えるだろう。
著者
飯田 香穂里 Kaori IIDA
出版者
総合研究大学院大学 学融合推進センター
雑誌
科学と社会2010
巻号頁・発行日
pp.477-498, 2011-03-31 (Released:2011-09-20)

第Ⅲ部 生命科学と社会2009 第8章 飯田 香穂里 [ジョンズ・ホプキンス大学](*肩書き等は、当時のものを使用しています。)