- 著者
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大谷 雅夫
YANG K.
YANG Kunpeng
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2009
二十二年度の主たる実績は、科学研究費補助金「和漢聯句の研究」(基盤B、代表大谷雅夫教授)における討議をもととして『看聞日記紙背和漢聯句訳注』を臨川書店より2011年2月に刊行したことである。代表者大谷雅夫、研究分担者楊昆鵬はともに研究会に常に出席するとともに、訳注執筆を担当した。次に、楊昆鵬は、前年度に引き続いて、近世初期の和漢聯句作品資料の翻刻と紹介を進め、慶長九年(1604)後陽成天皇主催の和漢千句を取り上げ、「慶長九年和漢千句翻刻と解題」(中村健史と共著)として『京都大学国文学論叢』(第25号、2011年3月、85-111頁)に掲載した。この千句は近世初頭の堂上和漢聯句の第一次資料であり、当時の和歌・連歌また漢文学などの研究にも資することの多いものである。そのような重要な資料を新たに学界の共有財産となしえた功績は小さくないと考えられる。楊昆鵬は、さらに俳文学会第六十二回全国大会(2010年10月16日、徳島四国大学)において「和漢聯句にみえる友情の連想」という題で研究発表を行った。本発表は和漢比較文学の視点から、友情を最大の主題とする漢詩文と、あまり正面から友情を詠う事のない和歌・連歌という異なる文学の伝統が、和漢聯句においてどのように接触し、結合したかを検討するものである。友情をめぐる連想に、歌や俳諧と同じ付合文芸でありながら、和漢聯句にはそれら歌俳に見られない独自な特徴のあることが見いだされるという楊昆鵬の発表は、新発見を含むものとして高く評価された。楊は、本発表を基に論文を執筆し、現在学術雑誌に投稿中である。