- 著者
-
谷村 禎一
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 新学術領域研究(研究領域提案型)
- 巻号頁・発行日
- 2009
生物の行動は、プログラムされた本能的側面と、経験や環境により適応的に変化できる可塑的な側面から成り立っている。これまでの昆虫の行動の研究は、固定化された反射、本能行動が中心であり、行動の可塑性はあまり注目されてこなかった。生物は自己の維持、成長、増殖のために外界から栄養を取り込む必要がある。生物が栄養となる食物を識別する上で味覚感覚は重要であるが、生物は食物の栄養価をどのように感知しているのであろうか。ショウジョウバエの成虫の雌は生涯に個体当たり3000個もの卵を生むが、そのために多量のアミノ酸の摂取が必要とされる。産卵時に糖だけを含む培地では雌の産卵数が低下することがわかった。ショウジョウバエがアミノ酸をどのように感知しているかを調べるために、食用色素を利用したtwo-choice preference test、CAFE assay、吻伸展反射、唇弁感覚子からの電気生理学的記録によって、ショウジョウバエはアミノ酸溶液を識別して摂食し、さらにアミノ酸欠乏状態に置かれた交尾後の雌は、アミノ酸の摂食量が増加することがわかった。交尾後に雄から雌に渡されるsex peptideの受容体の機能がアミノ酸に対する嗜好度の上昇にかかわっているのか調べた。またアミノ酸受容体遺伝子の検索を行った。