著者
太田 紘史 谷辺 哲史
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.3-26, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
63

There is an emerging experimental trend in bioethics and neuroethics. We briefly review several topics in this trend and discuss how the existing and future studies can have normative implications related to bioethical/neuroethical issues. Particularly, we consider three major ways to draw such implications; (1) contributing to conceptual analysis and philosophical (counter-)evidence, (2) figuring out the unreliability of moral thinking and thereby providing a debunking argument, and (3) estimating the feasibility of ethical norms and policies.
著者
谷辺 哲史 唐沢 かおり
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.10-21, 2021 (Released:2021-10-16)
参考文献数
28

本研究は自動運転車による交通事故を題材として,人工知能が人間に危害を与えたときの原因と責任の帰属を検討した。自動運転車が歩行者を轢いて死亡させるというシナリオを提示し,自動車のメーカーとユーザーに対する原因帰属と責任帰属の判断を求めた。人工知能への原因帰属はメーカー,ユーザーへの原因帰属と正の関連を示し,さらに,自律的な機械に意図などの心の機能があると知覚する傾向が高い人ほど,メーカーに事故の原因を帰属した。これらの結果から,人工知能が高い自律性を備えたとしても,人間から独立した行為主体として認知されるわけではないことが示された。また,問題責任(問題を発生させたことへの責任)の帰属はメーカー,ユーザーそれぞれへの原因帰属によって規定されたが,メーカーの解決責任(生じた問題を解決する義務)の帰属は人工知能への原因帰属とも関連しており,原因の所在とは別に開発者という立場ゆえに問題に対処する義務があると判断されることが明らかになった。最後に,人工知能の開発・利用に関する制度設計を議論するために,一般の人々の態度について実証的な知見を得ることの意義を議論した。