著者
豊倉 穣
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.320-328, 2008-09-30 (Released:2009-10-27)
参考文献数
16
被引用文献数
7 6

注意障害に関する臨床的事項を概説した。軽微な注意障害はADL に影響せず,臨床上見逃されることが少なくない。日頃から注意障害を疑う姿勢が重要である。日本高次脳機能障害学会は日本人で標準化された標準注意力検査を開発した。Trail Making Test もよく用いられる課題である。非利き手での成績が利き手での動作と同等に扱えること,施行時間は動作プロセスより認知プロセスに大きく依存すること,などの報告がある。日常生活の問題に還元しやすいとの利点から,注意障害の行動評価も検討されている。一例として著者の考案したBAAD(Behavioral Assessment of Attentional Disturbance)を紹介した。認知リハビリテーションとして多くのプログラムが紹介されている。APT(Attention Process Training)およびより軽症例を対象とするAPT IIは特異的に注意障害を改善する訓練プログラムとして開発されたものである。
著者
豊倉 穣 菅原 敬 林 智美 西村 葉子 村山 理恵
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.306-311, 2009-05-18 (Released:2009-06-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2

近年考案された注意障害の行動評価尺度 (BAAD,Behavioral Assessment of Attentional Disturbance) は,原則的に作業療法施行中の場面を作業療法士 (OT) が観察してスコア化する.今回,家庭での家族による評価を実施し,注意障害の評価に有用か検討した.脳障害者 (脳卒中,脳外傷など) 53 名を対象とした.OT,家族による評価合計点 (最高18 点) はほぼ一致し,級内相関係数も0.89と高値を示した.項目別に検討すると,6 個中5 項目では64 %以上で両検者のスコアが完全に一致したが,1 項目のみ43 %に留まった.以上より家庭での評価も「注意」障害の検出に有用と考えられた.
著者
豊倉 穣
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.193-203, 2021-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
35

2 つの課題を同時に行うと成績が低下する二重課題コストの発現機序は完全には解明されていない。 機能画像, 事象関連電位, 磁気刺激, 動物実験など多彩な研究手法によって二重課題の処理メカニズムが検討されている。最近の機能画像のメタアナリシスでは, 両側の 3 領域(背側前運動野, 頭頂間溝, 前頭弁蓋部)と左側の 2 領域(下前頭溝~中前頭回, 下前頭回~上側頭回の前部)が処理要求の増大に対処する資源共有モデルの能動的, 機能的適応プロセスを反映していると報告されている。  脳損傷はしばしば情報処理速度の低下をもたらすが, 分配性注意の障害をきたすこともある。両者は並存することが少なくない。その場合, 分配性注意障害の正確な診断は困難となる。  複数作業の同時処理困難に対して二重課題を用いた認知リハビリテーションの効果が報告されている。 これによって実生活での改善も期待できる可能性がある。
著者
豊倉 穣 本田 哲三 石田 暉 村上 恵一
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.153-158, 1992-02-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
11
被引用文献数
7 5

注意障害に対する訓練として,SohlbergらのAttention process trainingを日本語訳し,原版よりその手技を簡便化したうえで外来患者の家庭訓練に用いた.注意障害を有する脳障害患者の慢性期2症例で施行した結果,注意障害評価法としての机上テストで改善が認められ,日常生活上,社会生活上にもその効果が示唆された.以上よりAPTは認知リハビリテーションの一手技として有効である可能性が示された.
著者
才藤 栄一 小徳 勇人 保坂 隆 浜田 暁子 寺川 ゆかり 中嶋 真須美 豊倉 穣 田中 博 神内 拡行 石田 暉 村上 恵一
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.51-58, 1989-01-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
24

医療者110名へのアンケートにより医療者のリハ患者に対する陰性感情を検討した.(1)回収率75%.問題患者は対象246名中45名18%であった.(2)疾患では脳血管障害,脳外傷で問題率が高く,脳血管障害では重度障害例ほど多数の看護婦が問題視した.(3)全職種が問題とした症例は,陳旧性重度脳血管障害や各医療者の経験の浅い脊損などであった.(4)問題理由のうち,医療者側の因子が15%を占めた.以上の結果は,障害の重篤さやチームの問題などが,陰性感情,即ち陰性逆転移を生じる原因となることを意味している.従って,陰性逆転移の認識,役割論的観点からの検討,チーム構造の明確さ,チームの学習機能の充実などが,より良い医療者-患者関係の樹立に必要であろう.
著者
角谷 直彦 豊倉 穣 古川 俊明 小山 裕司 石田 暉
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

健常者と嚥下障害者の咽頭期嚥下音と舌骨上筋群の表面筋電図による嚥下評価我々は嚥下障害を呈した脳血管障害者20名と健康成人20名を対象者としてインフォームドコンセントを施行した。脳血管障害者20名は、男性10名女性10名で平均年齢が69.5歳であった。Control群である健常者20名は、男性2名女性18名で平均年齢が26.6歳であった。検査は頚部を軽度屈曲位にした座位姿勢にて液体(1ml,3ml,5ml,7ml,10ml)と固形物(丸呑み嚥下,咀嚼後の嚥下)に分類し、嚥下した時の咽頭期嚥下音と舌骨上筋群の表面筋電図で嚥下評価を施行した。健常者の評価では舌骨上筋群の持続時間は食形態や量に関わらず平均400msec以内となり嚥下音の高振幅が出現する時間は平均240msec以内になった。嚥下音の最大振幅は液体と固形間で有意差を示し、特に液体の3ml,5ml,7mlが嚥下障害の診断に有用と考えられた。MEMは液体7ml以上また固形物の嚥下で平均1000Hz以上の高周波を認めた。以上から嚥下障害を診断する為のparameterを検討した。parameterは舌骨上筋群の1)持続時間、2)平均振幅、3)嚥下音の持続時間、4)舌骨上筋群の大振幅を呈した筋活動の開始から嚥下音の第II成分が出現するまでの時間、5)嚥下音の周波数特性をControl群(健常者)と嚥下障害者で算出した。1)舌骨上筋群の平均持続時間(msec)はControl群で442(3ml),605(5ml),430(7ml)を示し嚥下障害者は986(3ml),1100(5ml),823(7ml)と有意な遅延を示した。2)平均振幅はControl群と嚥下障害者の間で有意差がなかった。3)嚥下音の持続時間はControl群で平均500msec以内で嚥下障害者との間で有意差を認めた。4)筋電図と嚥下第II成分までの時間はControl群で平均240msec以内、嚥下障害者は液体3ml,5mlの間で有意差を認めた。嚥下音の周波数特性では3ml,7mlで有意差を生じた。この検査は簡便であり、嚥下障害を診断するのに非常に有効であると考えられた。
著者
豊倉穣
雑誌
脳と粘神の医学
巻号頁・発行日
vol.7, pp.401-409, 1996
被引用文献数
9
著者
豊倉 穣 本田 哲三 石田 暉 村上 恵一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.153-158, 1992-02-18
被引用文献数
8

注意障害に対する訓練として,SohlbergらのAttention process trainingを日本語訳し,原版よりその手技を簡便化したうえで外来患者の家庭訓練に用いた.注意障害を有する脳障害患者の慢性期2症例で施行した結果,注意障害評価法としての机上テストで改善が認められ,日常生活上,社会生活上にもその効果が示唆された.以上よりAPTは認知リハビリテーションの一手技として有効である可能性が示された.