著者
豊倉 穣 菅原 敬 林 智美 西村 葉子 村山 理恵
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.306-311, 2009-05-18 (Released:2009-06-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2

近年考案された注意障害の行動評価尺度 (BAAD,Behavioral Assessment of Attentional Disturbance) は,原則的に作業療法施行中の場面を作業療法士 (OT) が観察してスコア化する.今回,家庭での家族による評価を実施し,注意障害の評価に有用か検討した.脳障害者 (脳卒中,脳外傷など) 53 名を対象とした.OT,家族による評価合計点 (最高18 点) はほぼ一致し,級内相関係数も0.89と高値を示した.項目別に検討すると,6 個中5 項目では64 %以上で両検者のスコアが完全に一致したが,1 項目のみ43 %に留まった.以上より家庭での評価も「注意」障害の検出に有用と考えられた.
著者
村井 活史 浦久保 知也 西田 靖武 洪 苑起 菅原 敬信 岡村 元義 小田 昌宏 川俣 治 小杉 公彦 塩見 哲次 高橋 英晴 殿守 俊介 林 秀樹 丸山 裕一
出版者
一般社団法人日本PDA製薬学会
雑誌
日本PDA学術誌 GMPとバリデーション (ISSN:13444891)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.6-31, 2007 (Released:2008-06-06)
被引用文献数
1

The Bio-virus safety committee, one of the committees of the Parental Drug Association Japan (PDA Japan), has discussed various concerns on biopharmaceuticals from scientific, technical and regulatory perspective. One of the most significant concerns is the risk of viral contamination into the products. This risk should be addressed, as required per the international regulations, by minimizing to use raw materials sourced from animal origin and by performing viral clearance studies in order to evaluate capability of purification processing to reduce and/or inactivate known and/or adventitious viruses. The Bio-virus safety Committee has reported the conclusions of discussion how to prepare and qualify cell bank system as one of raw materials and how much Log Reduction Value (LRV) should be targeted in virus clearance studies in the annual conference of the PDA Japan in 20051). The Bio-virus safety committee has discussed the practical experimental procedures for viral clearance studies since 2006 and reported the conclusions in the annual conference of the PDA Japan in 2007. In this report, standardized and practical experimental procedures for viral clearance studies are shown, considering not only requirements for submission to regulatory agencies but also experimental technique. In addition, trouble shooting based upon experiences of the members, information regarding Contract Research Organizations (CROs), reference of international guidelines, and worksheets of viral clearance study are provided.
著者
菅原 敬 藤井 紀行 加藤 英寿
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

カンアオイ属タイリンアオイ節植物は,九州南部に分布するサツマアオイ,九州北部から中国地方西部に分布するタイリンアオイ,東海地方のカギガタアオイ,伊豆半島のアマギカンアオイ,そして関東地方南部の多摩丘陵に分布するタマノカンアオイからなる一群である.これらは,日本列島の東西に隔離分布するにもかかわらず,萼筒の形態や内壁の襞紋様,舷部の形態などによる類似性から,一つの分類群(節)にまとめられている.また,この節内の分化については,九州地方産種から関東地方産種へ萼筒の形や柱頭の形に勾配的な変異が認められるとして,西から東への分布拡大の過程で分化したのではないかと考えられている(前川,1953).しかし,二地域間には地理的距離の大きな隔たりがあり,また,花形質で指摘されてきた変異は必ずしも勾配的変異とはいえない.そこで,本研究では,分子系統学的解析に基づいて,タイリンアオイ節の単系統性と同節種間の系統関係を明らかにし,地理的分布との関連について考察することを目的とした.カンアオイ属植物についての分子系統学的解析は,これまでにKelly (1998)による核DNAのITS領域の解析による報告があるが,この一群についての解析はない.葉緑体DNAのtrnL遺伝子間領域の塩基配列,そして核DNAのITS-1領域の塩基配列の比較による系統解析を進めた.その結果,葉緑体DNAについては,系統解析を進める上で有効な情報を得ることはできなかったが,ITS領域については多くの変異がみられ,系統推定のための情報を得ることができた.ITS領域に基づく分子系統解析の結果,タイリンアオイ節の九州産2種と東海・関東産の3種は,それぞれ別のクレードに属し,単系統性は認められないという結果が得られた.これは,タイリンアオイ節諸種が西から東への分布拡大の過程で分化したものではないことを示唆している.
著者
加藤 英寿 菅原 敬 可知 直毅
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

小笠原諸島南硫黄島は国内で最も謎に満ちた地であり、山頂部を含めた学術調査は過去2回実施されただけである。そこで2007年6月に東京都との合同で南硫黄島自然環境調査を25年ぶりに実施し、生物多様性の現状を把握すると共に、植物の集団遺伝学的・分子系統学的解析に基づく種分化過程の推定などを試みた。その結果、小笠原諸島に広く分布する種の場合、南硫黄島個体群は遺伝的に大きく分化していることなどが明らかとなった。
著者
浦久保 知也 大場 徹也 岡村 元義 金田 伸一 川俣 治 塩見 哲次 重松 弘樹 菅谷 真二 菅原 敬信 曲田 純二 丸山 裕一 元木 政道
出版者
一般社団法人日本PDA製薬学会
雑誌
日本PDA学術誌 GMPとバリデーション (ISSN:13444891)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.23-36, 2008 (Released:2009-12-04)
参考文献数
6

The Bio-Virus Safety Committee (BV-Committee), one of the committees of the Parental Drug Association Japan (PDA Japan), has discussed various concerns on biopharmaceuticals from scientific, technical and regulatory perspective. One of the most significant concerns is the risk of contamination of infectious agents into manufacturing process and products. This risk should be addressed, as required per the international regulations, by minimizing to use raw materials sourced from animal origin and by performing viral clearance studies in order to evaluate capability of purification process to reduce and/or inactivate known and/or adventitious viruses. BV-Committee reported the conclusions of discussion how to prepare and qualify cell bank system as one of raw materials and how much Log Reduction Value (LRV) should be targeted in virus clearance studies in the 13th annual conference of the PDA Japan in 2005 and published in the PDA Journal1). Since 2007, BV-Committee discussed the practical experimental procedures for viral clearance studies and reported the conclusions in the 14th annual conference of the PDA Japan in 2007 and reported in the PDA journal2). In the report, standardized and practical experimental procedures for viral clearance studies were proposed, considering not only requirements for submission to the regulatory agencies but also experimental technique. In addition, trouble shooting based upon the actual experience of the members, information regarding Contract Research Organizations (CROs), references of international guidelines, and worksheets for viral clearance study are provided.   Since 2008, BV-Committee has discussed how the Quality Risk Management (QRM) approach can be applied to manufacturing and quality control of biopharmaceuticals through a case study of a recombinant monoclonal antibody. The conclusion was presented in the 15th annual conference of the PDA Japan in 2008. In the case study, we supposed that viral contamination and residual process related impurities could be the source of quality risk. Risk assessment practice was performed, focusing on the following five categories, “Cell Banking”, “Cell Culture”, “Purification”, “Medium/Buffer Preparation” and “Viral Inactivation and Filtration”. In certain items, where the assessment showed higher risk, preventative measures to control the risk were discussed.
著者
菅原 敬
出版者
Japanese Society for Plant Systematics
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.1-17, 1998-07-28 (Released:2017-09-25)
参考文献数
17

1996年新潟県北部の荒川流域で奇妙なカンアオイ属植物が確認された。この植物は,同地城周辺から従来報告されていたコシノカンアオイ(Asarum megacalyx F.Maek.),あるいはユキグニカンアオイ(A.ikegamii [F.Maek.ex Y.Maek.] T.Sugaw.)によく似るが,花の形態はそれらの中間型のようにみえる。一方,新潟県西部から富山県東部の地域には未記載種クロヒメカンアオイ(Heterotropa yoshikawai nom. nud.)が知られていた。この植物もコシノカンアオイに近縁と見なされてきたが,いまだその実体は充分に解明されていない。そこでこれら問題の植物の分類学的位置づけ,ならびに既存の2種との関連を明らかにするため,花の形態ならびに染色体からの比較研究を進めた。その結果,未記載種クロヒメカンアオイは独立種とみなしうることが判明したので,Asarum yoshikawae T. Sugaw.の学名で正式な記載を行った,また荒川流域の問題のカンアオイ属植物はユキグニカンアオイの新変種と位置づけられ,アラカワカンアオイ(A. ikegamii var. fujimakii T. Sugaw.)として記載した。クロヒメカンアオイは萼筒が上方に狭まった筒形で,萼筒口が径4mm以下と著しく狭く,萼筒内壁の襞は著しく複雑化する。また中期染色体でも4本の次中部型染色体を含む固有の核型をもつ特異な種である。一方新変種のアラカワカンアオイは狭義のユキグニカンアオイ(var. ikegamii)に比べて萼筒がより大きく,口環もより発達して目だつ。また,花柱附属突起はユキグニカンアオイのように萼筒口の高さにまで達することはなく,常に萼筒内におさまっている。この新変種は荒川流域に沿って新潟県関川村から山形県小国町付近まで分布する。
著者
菅原 敬 堀井 雄治郎 久原 秦雅 平田 聡子
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.21-26, 1999-08-28

アオモリマンテマは本州北部の青森県然岳とその周辺地域(白神山地の一部),秋田県男鹿半島,和賀山塊の限られた地域に産するナデシコ科の多年草である。この植物は,垂直に切り立った岩壁に生育し,また生育地も互いに離れていることから集団間に何らかの分化が生じていることが予想され,実際野外調査で和賀山塊産の個体は一見して花が大きいように思われた。そこで青森県および秋田県の5集団を用いて,この種の花形態(特に花冠サイズに着目)ならびに核形態を調査した。その結果,秋田県の集団(男鹿,和賀山塊の3集団)は花弁の幅が確かに青森県の集団(然岳,暗門)より広い傾向にあるが,全体としては連続した変異であることがわかった。また,染色体数は2n=72で,集団間に核型においても違いは認められなかった。この染色体数はこれまで報告された日本産種のなかではもっとも多く,同属の染色体基本数x=12を考慮すると倍数性(6倍体)由来と推定された。形態比較や染色体のデータに基づいて近縁と考えられるタカネマンテマとの関係についても若干の考察を試みた。
著者
菅原 敬 中村 文子 神林 真理 星 秀章 三上 美代子
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.23-31, 1994-09-30
被引用文献数
2

エゾカワラナデシコ(ナデシコ科)には両性花をつける株に混じって雌花のみをつける株が見られることが知られている。しかし, このような雌雄性の分化(雌性両全性異株性)にともなって, この植物の両性花と雌花との間で花の形態や開花習性, 送粉や交配にかかわる特性にどのような差異が生じているのか, また野外での種子や果実の形成, 花粉媒介者はどのようなものか, などについてはほとんど知られていない。そこで, 性型の異なる二つの花の基本的特性を明らかし, 野外での送粉や繁殖の様子を探ることを目的に, 青森県内の2つの集団を用いて調査を進めてきた。両性花と雌花との間には, 花の付属器官(花弁やがくなど)における大きさの違いが認められるが, 開花習性の上でもいくつかの興味深い違いが認められた。その一つは, 花柱発達時期(雌性期)のずれである。雌花では, 開花時にすでに花柱を高く伸ばして柱頭組織を発達させ, 受粉可能な状態にあるが, 両性花では雌性期が開花から2,3日後であった。もう一つは, 開花期間における雌性期の長さで, 雌花では両性花よりもかなり長い雌性期をもっていることが明らかになった。これらは, 雌花の受粉の機会を高めているように思われる。しかし, 野外での果実あたりの種子の生産数は必ずしも両性花より高くなく, 同様な性型を示す他の植物とはやや異なる状況であった。
著者
邑田 仁 東馬 哲雄 田中 伸幸 秋山 弘之 林 蘇娟 米倉 浩司 菅原 敬 根本 智行 永益 英敏 遊川 知久
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

ミャンマーに延べ6回18人を派遣し合計5282点の標本資料を採集した。その他地域から補足的に収集した標本、および従前の「南ヒマラヤの植物多様性」調査で収集した標本資料等を合わせて分子系統解析を含めた系統分類学的解析を行い、新分類群を含む多数のミャンマー新産植物を発見した。このうち45新産植物、1新属、6新種はすでに論文等で公表した。この結果南ヒマラヤ地域の植物相は日華区系の西端としての特徴を示すと同時にインド区系の東端やインドシナ区系の北西端としての性格をもっていることが再確認され, 区系地理学的境界領域としてのより精度の高い解析の必要があることが明らかとなった。