- 著者
-
吉川 虎雄
貝塚 爽平
太田 陽子
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:00167444)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.12, pp.627-648, 1964-12-01 (Released:2008-12-24)
- 参考文献数
- 18
- 被引用文献数
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土佐湾北東岸に発達する海鍛丘は,上位より羽根岬面,室戸岬面および沖鷲地に分け皇れ,いずれも南東より北西に低くなる.室戸岬面の高さは南海地震の際の隆起量と正の相関を不し,地震削の沈降量とは負の相関を示す.約120年を周期としておこった大地震の際の室戸岬付近の隆起は,その間の沈降よりも大きく,段丘面の高度分布はこのような隆起沈降を差引した結果である南東より北西への傾動陸起にキって決定されたと考えられる.このような隆起地域であるにもかかわらず,各段丘面の形成過程に沈水期が挾まれているのは,氷期後の海面上昇速度が地盤の隆起速度を上回ったからに他ならない. 室戸岬面は,その地形発達の過程より判断して,約9万年前にはじまる. Riss- Würm問氷期に形成されたと考えられる.室戸岬付近の大地震1周期の問における地盤隆起の平均速度は約2mm/年と算定され,もしRiss-Würm問氷期以後かかる性質の地殼変動が一様に継続したとすれば,室戸岬面は室戸岬付近において約180mの高さにあるはずであるが,これは事実と一致する.また水準測量の結果によると,安田の水準点を基準とした吉良川の水準点の高度は,大地震1周期の問に平均1.2mm/年の割含で増大しているが,もしRiss.Würm間氷期以後このような地殼変動がつづV・てきたのであれば,室戸岬面は吉良川において安田よりも細10m高いはずであるが,これも事実とほぼ一致する.したがって, Riss-Würm間糊以後,室戸岬付近は現在と同じく平均2mm/年の速さで北西へ傾動しつつ隆起してきたと考えられる. このような地殼変動と第四紀における海面変化とを複合した結果は,この海岸の地形発達の過程とよく一致するので,この地域の海岸段丘の分化を生じたのは,地殻変動の緩急ではなく・海面変化の結果であり,その間地殼変動はほぼ一様に推移したと考えられる.