著者
赤澤 直紀 原田 和宏 大川 直美 岡 泰星 中谷 聖史 山中 理恵子 西川 勝矢 田村 公之 北裏 真己 松井 有史
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100299, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】マッサージは筋機能回復の促進,遅発性筋痛の軽減には効果があると報告されているが関節可動域に与える効果については十分に検証されていない.Hopper(2005)は健常者のハムストリングス筋腹に5分間の揉捏法を施行したマッサージ群とコントロール群のHip Flexion Angle(膝関節伸展位股関節屈曲角度:HFA)変化量に有意差は認めなかったと報告している.一方,Huang(2010)は,健常者のハムストリングス筋腱移行部に対する30秒強擦期のHFA変化量はコントロール期より有意に高値であったと報告している.これら先行研究の結果の違いについては筋腹,筋腱移行部といったマッサージ部位の違いが影響していると推察されるが,関節可動域にマッサージ部位の違いが与える効果を検証した報告は見当たらない.本研究の目的は,健常成人のHFAにハムストリングス筋腹,筋腱移行部といったマッサージ部位の違いが及ぼす効果を検証することである. 【方法】対象は両側他動HFA60°以上の健常成人男性32名(32肢)とし,この対象者を筋腱移行部マッサージ(筋腱移行部)群,筋腹マッサージ(筋腹)群,コントロール群へ無作為に割り付けた.介入マッサージ手技はGoldberg(1992)によって脊髄運動神経興奮抑制の効果が確認されている圧迫を採用した. Goldberg(1992)の報告を参考に圧迫内容はgrasping・lifting・releasing,圧迫周期は0.5Hz,施行時間は3分,圧迫圧は18.7mmHgと設定した.筋腱移行部群のマッサージ部位は大腿骨内・外側上顆から4横指近位の範囲とし,筋腹群のマッサージ部位はさらに4横指近位の範囲とした.コントロール群のマッサージ部位はアウトカム測定下肢の対側ハムストリングス筋腹とした.介入時の対象者肢位は有孔ベッド上腹臥位とした.アウトカムは盲検化された評価者によって測定された介入前後のHFA,HFA60°受動的トルクとした.HFAはデジタルカメラで撮影した画像を基に画像解析ソフトImage Jを用いて0.01°単位で解析した.なお,介入後HFA測定時受動圧は介入前HFA最終域受動圧に一致させた.HFA受動圧測定には徒手保持型筋力測定器を使用し,対象者の踵骨隆起部で測定した.統計解析は各群の介入前後のHFA変化量の比較に介入前HFAを共変量とした共分散分析,事後検定として多重比較法を実施した.またHFA,HFA60°受動的トルクについて各群内の介入前後比較に対応のあるt検定を実施した.本研究における統計学的有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】対象者には研究の趣旨と手順を書面と口頭により説明し,研究の目的,危険性等について理解を得た上で,文書で同意を得た.本研究は吉備国際大学倫理審査委員会の承認を得て実施した.【結果】無作為割り付けの結果,筋腹群11名,筋腱移行部群11名,コントロール群10名となり各測定項目ベースラインで3群間に有意差は認められなかった.共分散分析の結果,主効果を認め多重比較法により筋腱移行部群HFA変化量(4.1±1.4°)はコントロール群(-1.5±1.4°)より有意に高値を示した.筋腹群HFA変化量(0.89±1.4°)と筋腱移行部群,コントロール群HFA変化量には有意差は認めなかった.HFAは筋腱移行部群で介入前と比較し介入後に有意に高値を示した(69.9±3.0°→74.7±4.6°).HFA60°受動的トルクは筋腱移行部群で介入前と比較し介入後に有意に低値を示した(42.5±12.8Nm→36.3±15.4Nm).HFA,HFA60°受動的トルクについて他2群では有意差は認められなかった.【考察】筋腱移行部へのマッサージはHFAを拡大させ得る可能性がある一方,筋腹へのマッサージはHFA拡大に効果が少ない可能性が示唆された.また,筋腱複合体の柔軟性を反映する受動的トルクに関しては筋腱移行部群で介入直後に低下する傾向を示した.近年,関節可動域の拡大においては筋腱複合体の柔軟性向上とstretch toleranceの増大が大きく影響すると報告されている.本研究においては,介入前後のHFA測定時の受動圧を対象者内で統一したためstretch toleranceがHFAに影響を与えたとは考えにくい.従って筋腱移行部群の介入後でのHFA拡大にはハムストリングス筋腱複合体の柔軟性向上が寄与したのではと推察された.【理学療法学研究としての意義】ハムストリングス筋腹,筋腱移行部といったマッサージ部位の違いがHFAに与える効果の差異を明らかにした点で理学療法研究としての意義があると考える.
著者
中口 拓真 石本 泰星 赤澤 直紀
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.235-240, 2018 (Released:2018-04-27)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

〔目的〕回復期リハ病棟の運動器疾患患者におけるFIM運動スコア利得の臨床的意義のある最小差(MCID)を明らかにすること.〔対象と方法〕対象は回復期リハ病棟患者102名であった.入院時FIM運動スコアから30日後FIM運動スコアを差分し利得を求めた.FIMの外的指標は,患者が変化度合いを報告する指標であるGlobal rating of change scale (GRC)で調査した.GRC –1と1を日常生活動作の改善のSmall change群とし,平均値をMCIDとした.〔結果〕Small change群のFIM運動スコア利得の平均値は14.6点であった.〔結語〕今回の対象では,回復期リハ病棟の運動器疾患患者が,日常生活動作改善を自覚するFIM運動スコア利得のMCIDは14.6点である.
著者
貴志 将紀 日野 斗史和 石本 泰星 田村 公之 赤澤 直紀
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11978, (Released:2021-03-18)
参考文献数
52

【目的】本研究の目的は,高齢肺炎患者における嚥下能力と大腿四頭筋の筋内非収縮組織量との関連を調査することである。【方法】対象は入院高齢肺炎患者47 名とした。嚥下能力はFood Intake Level Scale(以下,FILS)を用い,大腿四頭筋の筋内非収縮組織量は超音波画像の筋輝度から評価した。大腿四頭筋の筋輝度は左右の大腿直筋と中間広筋の平均値とした。筋輝度は筋内非収縮組織が多いほど高値を示す。FILS を従属変数,筋輝度,筋厚,皮下脂肪厚,年齢,性別,発症からの期間,GNRI,CRP,UCCI,投薬数を独立変数とした重回帰分析を実施した。【結果】重回帰分析の結果,筋輝度(β:–0.386),GNRI(β:0.529),皮下脂肪厚(β:–0.339)が独立し有意な変数として選択された(R2:0.484)。【結論】高齢肺炎患者の嚥下能力には,大腿四頭筋の筋量よりも,筋内非収縮組織量が関連することが明らかとなった。
著者
赤澤 直紀 松井 有史 原田 和宏 大川 直美 岡 泰星 中谷 聖史 山中 理恵子 西川 勝矢 田村 公之 北裏 真己
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.71-78, 2013
参考文献数
27

【目的】健常成人男性のHip Flexion Angle(HFA)値にハムストリングスのマッサージ部位の違いが及ぼす効果を検証することである。【方法】健常成人男性32名(32肢)へのマッサージ部位について無作為に筋腱移行部群(11名),筋腹群(11名)およびコントロール(対側下肢筋腹)群(10名)に割りつけ,3分間のマッサージ介入を同一の圧迫圧で行った。アウトカムは盲検化された評価者によって測定された介入前,介入直後,3分後,6分後,9分後,15分後のHFA値とした。【結果】マッサージ介入直後,3分後,6分後の筋腱移行部群のHFA値はコントロール群より有意に高値を示した。【結論】ハムストリングス筋腱移行部へのマッサージはHFA値を拡大させる可能性を示唆した。
著者
赤澤 直紀 原田 和宏 大川 直美 岡 泰星 中谷 聖史 山中 理恵子 西川 勝矢 田村 公之 北裏 真己 松井 有史
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.71-78, 2013-04-20 (Released:2018-04-12)
参考文献数
27

【目的】健常成人男性のHip Flexion Angle(HFA)値にハムストリングスのマッサージ部位の違いが及ぼす効果を検証することである。【方法】健常成人男性32名(32肢)へのマッサージ部位について無作為に筋腱移行部群(11名),筋腹群(11名)およびコントロール(対側下肢筋腹)群(10名)に割りつけ,3分間のマッサージ介入を同一の圧迫圧で行った。アウトカムは盲検化された評価者によって測定された介入前,介入直後,3分後,6分後,9分後,15分後のHFA値とした。【結果】マッサージ介入直後,3分後,6分後の筋腱移行部群のHFA値はコントロール群より有意に高値を示した。【結論】ハムストリングス筋腱移行部へのマッサージはHFA値を拡大させる可能性を示唆した。
著者
石本 泰星 泊 麻美 赤澤 直紀
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.135-141, 2019 (Released:2019-02-26)
参考文献数
43

〔目的〕本研究の目的は回復期リハ病棟に入院する脳卒中患者の大腿四頭筋における筋内脂肪量の縦断的変化を調査することである.〔対象と方法〕対象は回復期リハ病棟に入院された脳卒中患者2例とした.入院時と3ヵ月後において,非麻痺側と麻痺側の大腿四頭筋の筋内脂肪量を超音波画像診断装置にて測定した.〔結果〕両症例ともに入院時と比較し,3ヵ月後に筋内脂肪量は減少を示した〔症例A(麻痺側:-2%,非麻痺側:-12.1%),症例B(麻痺側:-30.7%,非麻痺側:-25.1%)〕.またFIM,FMA下肢スコアは両症例ともに入院時と比較し,3ヵ月後に高値を示した.〔結語〕回復期リハ病棟入院脳卒中患者の大腿四頭筋における筋内脂肪量は,3ヵ月間のリハビリプログラムと下肢機能の改善に伴い,減少する可能性が示された.