著者
MARTIN Guest 神島 芳宣 徳永 浩雄 前田 吉昭 宮岡 礼子 河野 俊丈 大仁田 義裕 酒井 高司 SERGEI V Ketov 赤穂 まなぶ 乙藤 隆史 小林 真平 黒須 早苗
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

報告者は興味深い非自明な現象を示す,いくつかの重要な例についての進展を得ることが出来た.論文 "Nonlinear PDE aspects of the tt* equations of Cecotti and Vafa" (M. Guest and C.-S. Lin, J. reine angew. Math., 印刷中)では,tt*-戸田方程式の,滑らかな解の族の存在を示した.これは技術的観点に於けるブレイクスルーである,すなわち,既存のループ群論的アプローチが適用できない非コンパクトの場合にも,偏微分方程式論が有用であることを示したことは大きな進展である."Isomonodromy aspects of the tt* equations of Cecotti and Vafa I. Stokes data" (M. Guest, A. Its, and C.-S. Lin, arXiv:1209.2045) に於いてはtt*-戸田方程式の解の大域的な滑らかさを,付随する線形方程式のモノドロミーデータ(ストークスデータ)に関連付けることにより,また別の技術的側面に関するブレイクスルーがあった.より詳しくには,tt*-戸田方程式の全ての滑らかな大域解に対して,そのストークスデータを明示的に計算することが出来た.これらの技術はまた,微分幾何学に於けるその他の問題にも適用可能であると推測される。
著者
赤穂 まなぶ
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は錘型の孤立特異点を持つ特殊ラグランジュ部分多様体のフレアー理論について詳しく調べ、正則曲線の分類についていくつかの結果を得た。カラビ・ヤウ多様体における特殊ラグランジュ部分多様体は、ミラー対称性との関わりで、現在非常に注目を浴びている。この特殊ラグランジュ部分多様体のモジュライ空間をコンパクト化したとき、そのコンパクト化の境界の点に対応するものは、基本的には、特異点を許容する特殊ラグランジュ部分多様体であると考えられる。しかし一般には、その特異点の様子はあまりにも複雑で、まだ現在の技術では到底理解が出来たという段階には至っていない。そこで最も簡単な場合である、錘型の孤立特異点について調べた。まず、ハーベイとローソンによる3次元複素ユークリッド空間の中の特殊ラグランジュ錘と、それを滑らかな特殊ラグランジュ部分多様体に変形したもの(漸近的特殊ラグランジュ錘)を用意する。この変形は1次元分のパラメーターを持っており、そのパラメーターが0のときに原点に錘型の孤立特異点が現れる。そして2次元円盤から複素ユークリッド空間への正則写像で境界がハーベイ・ローソンの漸近的特殊ラグランジュ錘に含まれるようなものを考える。このとき、そのような正則円盤は基本的に標準正則円盤しかないと言うことが証明できた。また先のパラメーターが0になったとき、この標準正則円盤は消滅する。さらに、標準正則円盤は横断正則性を満たしており、これにより標準正則円盤のモジュライ空間は一点からなることが分かった。次の段階として、現在、境界にいくつかの特異点を持つ正則円盤の分類も試みている。これはコンパクトな特異特殊ラグランジュ部分多様体とその滑らかな変形を調べる上で局所モデルとなる、非常に重要な研究材料であり、その解明が期待される。