著者
足立 克仁
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.603-609, 2006-10-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
26

Duchenne型筋ジストロフィーの確実な女性保因者において骨格筋と心筋の機能さらに中枢神経系の検討も行った. 骨格筋のCT像は左右差がみられ, 中でも大腿二頭筋に最もよく病変がみられた. 心筋障害は拡張型心筋症様を呈し, 好発部位は, 心エコーのwall motion index, 心筋SPECTなどの検索から, Duchenne型病者と同様に左室基部の後下壁に認められた. 保因者(母)と患児の心障害の部位は両者ほぼ同じであったが, 機能面では数値的には明らかな相関はなかった.中枢神経系では, 保因者12名のIQ(WAIS)値は62-122(94.8±18.0, mean±SD)であり, 80台以下の例が5名にみられた. この12名のうち骨格筋機能と心機能を調べたのは5名(43-61歳)であり, このうち2名では骨格筋, 心筋, 中枢神経系のすべてに症状がみられた.すなわち, Duchenne型筋ジストロフィーの女性保因者にはときに骨格筋, 心筋あるいは中枢神経系の障害が認められるものがあり, 軽微ながらDuchenne型病者と同様の病態が存在することが示唆された.
著者
馬木 良文 野崎 園子 杉下 周平 椎本 久美子 橋口 修二 乾 俊夫 足立 克仁
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2+3, pp.90-95, 2009 (Released:2009-03-21)
参考文献数
14
被引用文献数
4 1

[目的]口腔内崩壊錠(以下OD錠)は水が無くても服用できる.嚥下障害患者の内服剤としても有用か.ビデオ内視鏡(以下VE)をもちいて検討した.[対象と方法]嚥下障害と診断されたか自覚した6例に,錠剤とOD錠の模擬製剤(dOD)を内服させ,VEで観察した.[結果]錠剤,dODとも正常に内服できたものは2名,錠剤は正常に内服できたが,dODが咽頭に残留したものが2名,錠剤,dODとも咽頭に残留したものが2名であった.dODが咽頭に残留した4例では残留感がなく,服用には反復嚥下やトロミ水の交互嚥下が必要であった.[考察]嚥下障害のある神経疾患患者にとって,OD錠は必ずしも有用とはいえなかった.
著者
足立 克仁 川井 尚臣
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.38-41, 2008

本文では当院における神経・筋疾患のセカンドオピニオン外来の概略を示す. 当院の患者は介護を要する肢体不自由者が多いため介護者にも配慮し休日でも対応できることが望ましいこと, 平日では医師の配置がしにくいことなどの理由から土曜日に開設した. また神経・筋疾患患者は病気が長期にわたるため, 主治医とのつながりが強く, 紹介状を持参できない場合が多いこと, 本疾患の診断は問診と診察が重要で紹介状がなくても病状把握ができることが多く, 検査資料のみでも疾患の理解に役立つことが多いこと, などの理由から紹介状の有無にかかわらず受け付けることが望ましいと考えた. また, 経過観察も重要であることが多いので期間を置いて複数回相談の必要性が高い. このため相談医の人選はローテート医は不向きで経験豊富な専門医, 可能なら少人数複数が望ましい. 料金の設定には取り扱う疾患や地域の特殊性などに配慮を要する. さらにほかに神経・筋疾患の専門施設が少ないため, 当院での精査の必要が生じることもある. 本疾患は慢性に経過し治療が困難なため放置されやすいので, 機会ある毎にセカンドオピニオン外来をアピールし患者の要望に応える必要があると考えている.