著者
野崎 園子 神野 進
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.267-271, 2006-04-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
7

嚥下障害を疑われたのち, 通常の透視検査を施行されてバリウムを誤嚥した2例の患者の胸部エックス線写真を追跡した.症例1は84歳男性, 脳幹梗塞があり, 胸部CTで慢性的な誤嚥を疑われた. 胃食道逆流症の検索のため, 胃食道透視検査を受け, バリウムを誤嚥した. 胸部単純レントゲン像を2年にわたり追跡できたが, バリウムは肺の末梢に徐々に拡散していった.症例2は64歳女性, 突然の嚥下困難で発症, 脳梗塞を疑われ, 嚥下障害の検索のため, 近医で胃食道透視検査を受けてバリウムを誤嚥した. その後当院へ受診し, 右前部弁蓋部症候群と診断した. 5ヵ月後の胸部CTにて高信号影の点在を認めた.バリウム誤嚥後の胸部エックス線写真は, 他の呼吸器疾患との鑑別が必要となり, 時に胸部の画像診断を困難にする. また, バリウム誤嚥による重篤な呼吸不全も報告されている.高齢者や神経筋疾患などの基礎疾患を有する患者にバリウムによる造影検査を行う場合は, その適応と誤嚥のリスクを十分考慮すべきである.
著者
野崎 園子 芳川 浩男 道免 和久 土肥 信之 石蔵 礼一 安藤 久美子
出版者
兵庫医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

メトロノームによる嚥下訓練とカプサイシンゼリーの6か月間の嚥下訓練における、在宅での長期継続性と訓練の長期効果について検討した。メトロノーム訓練では、12名中10名が継続。嚥下造影(VF)評価では口腔移送時間の短縮と咽頭残留の減少を認めた。肺炎発症はなく、5名でむせや咳が改善した。カプサイシンゼリー訓練では、15名中12名が継続、VF評価は有意な変化は認めなかったが、4名で嚥下自覚症状の改善がみられた。肺炎発症は2名であった。メトロノームによる嚥下訓練は、長期継続可能性と長期訓練効果が期待できる。
著者
馬木 良文 野崎 園子 杉下 周平 椎本 久美子 橋口 修二 乾 俊夫 足立 克仁
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2+3, pp.90-95, 2009 (Released:2009-03-21)
参考文献数
14
被引用文献数
4 1

[目的]口腔内崩壊錠(以下OD錠)は水が無くても服用できる.嚥下障害患者の内服剤としても有用か.ビデオ内視鏡(以下VE)をもちいて検討した.[対象と方法]嚥下障害と診断されたか自覚した6例に,錠剤とOD錠の模擬製剤(dOD)を内服させ,VEで観察した.[結果]錠剤,dODとも正常に内服できたものは2名,錠剤は正常に内服できたが,dODが咽頭に残留したものが2名,錠剤,dODとも咽頭に残留したものが2名であった.dODが咽頭に残留した4例では残留感がなく,服用には反復嚥下やトロミ水の交互嚥下が必要であった.[考察]嚥下障害のある神経疾患患者にとって,OD錠は必ずしも有用とはいえなかった.
著者
野崎 園子
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.99-103, 2007-02-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
16
被引用文献数
1

パーキンソン病の摂食・嚥下障害の特徴は, 患者の約半数に嚥下障害が存在し, 病初期から存在することもあり, 身体機能の重症度とは必ずしも関連しないこと, 摂食・嚥下障害の自覚に乏しく, むせのない誤嚥が多いこと, 摂食・嚥下の各相にわたる多様な障害があることである. 抗パーキンソン病薬の副作用としてのジスキネジア, 口腔乾燥, off症状が摂食・嚥下機能を悪化させることがあり, また, 自律神経障害による食事性低血圧では, 時に失神するため, 食物を窒息するリスクがあることなどがある.その対処法としては, 患者の訴えがなくても, 疑いがあれば嚥下機能を評価し, “On”時間を延長させ, “On”時間帯に摂食させるように抗パーキンソン病薬(とくにL-ドーパ)を調整する. また積極的に嚥下訓練を行うとともに, 必要に応じて, 補助栄養や経管栄養, 外科的介入を行う必要がある.
著者
福岡 達之 吉川 直子 川阪 尚子 野崎 園子 寺山 修史 福田 能啓 道免 和久
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.Suppl.2, pp.S207-S214, 2010 (Released:2011-12-01)
参考文献数
20
被引用文献数
2

本研究の目的は、舌骨上筋群に対する筋力トレーニングの方法として、等尺性収縮による舌挙上運動の有用性を検討することである。対象は健常成人 10 名 (平均年齢 27.4 ± 3.8歳)、方法は各対象者の最大舌圧を測定した後、最大舌圧の 20%、40%、60%、80%の負荷強度で舌を挙上させた時の舌骨上筋群筋活動を表面筋電図で記録した。さらに、最大舌圧で舌を挙上させた時と頭部挙上、Mendelsohn 手技、挺舌について、各動作時の舌骨上筋群筋活動を記録した。舌骨上筋群筋活動は最大舌圧時の値を 100%として正規化し%RMS を用いて比較した。結果から、舌圧が上昇するに従い舌骨上筋群筋活動も増大を示し各強度で有意差を認めた。種々のトレーニング動作の比較では、最大舌圧による舌挙上時の舌骨上筋群筋活動が最も高く、頭部挙上 (34.8 ± 15.6%)、Mendelsohn 手技 (42.5 ± 14.8%)、挺舌 (43.0 ± 16.4%) と比べて有意差を認めた。以上より、等尺性収縮による舌挙上運動が、舌骨上筋群に対する筋力トレーニングの方法として有用となる可能性が示唆された。