著者
稲垣 慶之 飯塚 照史 車谷 洋 太田 英之 長谷川 龍一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.763-771, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
37

橈骨遠位端骨折受傷後1ヵ月間は大腿骨近位部骨折の発生リスクが急増するとされる.この一因として,外固定がバランス機能に影響するとされるが,近年では外固定を必要としない早期運動療法の報告がなされている.本研究では,早期運動療法例を対象に,バランス機能の継時的変化について検討した.その結果,動的・包括的バランス機能において術後1週間で低下することが明らかとなった.ただし,転倒を招くとされるカットオフ値を下回っていなかった.このことから,早期運動療法例の動的バランス機能の低下は転倒を誘発する“きっかけ”となり,その他の要因と重なることで術後に転倒リスクを増加させる可能性が示唆された.
著者
石井 陽介 出家 正隆 藤田 直人 車谷 洋 中前 敦雄 石川 正和 林 聖樹 安達 伸生 砂川 融
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0343, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】内側半月板損傷は膝関節の疼痛を呈する。しかし,内側半月板自体に神経線維は少なく,内側半月板損傷の疼痛は他の要因が影響していると考えられる。内側半月板逸脱(medial meniscus extrusion:以下MME)は内側半月板付着部の損傷や伸長によって内側半月板がより内側に逸脱する現象で,膝関節内側部の衝撃吸収を破綻させ,内側大腿脛骨部の荷重負荷を増大させる。しかし,MMEと疼痛との関係は明らかにされておらず,荷重下でのMMEの逸脱量と疼痛に着目した報告は見られない。本研究は,内側半月板損傷者における荷重下MMEの逸脱量が疼痛を増加させるのかを明らかにすることを目的とした。【方法】対象は内側半月板損傷と診断された患者16名16膝(平均年齢57.6±9.5歳)を対象とした。内側半月板の逸脱量は超音波装置(Hivision Avius,HITACHI社)を用いて,内側半月板中節部で測定し,脛骨骨皮質の延長線から垂直に内側半月板の最大内側縁距離を逸脱量として計測した。測定は臥位と立位の2条件で行い,臥位と立位の逸脱量の差から,内側半月板移動量を算出した。先行研究を参考に,対象者を内側半月板の逸脱量が3mm以上の6名をLarge群,3mm未満の10名をSmall群に分類した。疼痛はVASとKOOSを用いて評価した。内側半月板の逸脱量の比較には,群間(Large群,Small群)と条件(臥位,立位)を2要因とした混合2元配置分散分析を行い,交互作用を認めた場合には単純主効果検定を行った。2群間における内側半月板移動量,VAS,およびKOOSの比較には,Mann-WhitneyのU検定を用いた。統計解析には,SPSS Ver19.0(日本IBM社,東京)を用い,統計学的有意水準は5%未満とした。【結果】Large群,Small群ともに,内側半月板逸脱量は臥位よりも立位で有意に大きかった(Large群臥位:3.7±1.2mm,立位:4.5±1.0mm;Small群臥位:1.7±0.5mm,立位:2.1±0.7mm)。内側半月板移動量はLarge群がSmall群より有意に大きかった(Large群:0.9±0.3mm,non Small群:0.4±0.3mm)。VAS値はLarge群がSmall群より有意に高く,KOOSのpain scoreはLarge群がSmall群より有意に低かった。【結論】本研究の結果から,荷重下MMEの逸脱量が疼痛に影響を及ぼす一要因である可能性が示唆された。これは荷重に伴う内側半月板の逸脱が膝関内側部の負荷をより増大させたためと予想される。内側半月板損傷者の疼痛には,荷重下MMEの逸脱量が影響している可能性が示された点に関して,理学療法研究としての意義があると思われる。
著者
金子 文成 車谷 洋 増田 正 村上 恒二 山根 雅仁
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.115-122, 2005-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
13
被引用文献数
2

本研究の目的は,一連の投球動作中に変化する筋活動の様相について,先行研究にあるように投球相毎に平均化するのではなく,連続的時系列データとして動的変化を示し,肩関節回旋筋腱板を構成する筋における活動動態の差異について検討することであった。大学生野球部投手1名の投球中(球種は直球)に,肩関節回旋筋腱板を構成する4筋から筋電図を記録した。そのうち棘上筋,小円筋,肩甲下筋にはワイヤ電極を使用した。棘下筋には能動型表面電極を用いた。筋電図は振幅および時間軸共に規格化した(nRMS)。各関節運動の加速度はビデオカメラで記録した画像から算出した。反復した投球間における,nRMSのばらつきである変動係数は,筋によって異なる特徴を示した。筋活動動態の連続時系列的変化として,10球分のnRMSを平均した(nRMSavg)曲線の最大値出現時間は,筋毎に異なっていた。投球において動的機能が重要視される肩関節回旋筋腱板において,nRMSavgが時々刻々と入れ代わる様子が明らかになった。筋間の相関性も筋の組み合わせによって異なり,棘下筋と小円筋が強く相関していた。反復した投球における筋活動動態のばらつき,連続時系列的なnRMSavgの変化,そして筋間の相関性の特徴は,個人内での筋活動動態の特徴を検出するための指標として有効である可能性があると考えた。
著者
金子 文成 車谷 洋 増田 正 村上 恒二 山根 雅仁
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.115-122, 2005-06-20
被引用文献数
3

本研究の目的は, 一連の投球動作中に変化する筋活動の様相について, 先行研究にあるように投球相毎に平均化するのではなく, 連続的時系列データとして動的変化を示し, 肩関節回旋筋腱板を構成する筋における活動動態の差異について検討することであった。大学生野球部投手1名の投球中(球種は直球)に, 肩関節回旋筋腱板を構成する4筋から筋電図を記録した。そのうち棘上筋, 小円筋, 肩甲下筋にはワイヤ電極を使用した。棘下筋には能動型表面電極を用いた。筋電図は振幅および時間軸共に規格化した(nRMS)。各関節運動の加速度はビデオカメラで記録した画像から算出した。反復した投球間における, nRMSのばらつきである変動係数は, 筋によって異なる特徴を示した。筋活動動態の連続時系列的変化として, 10球分のnRMSを平均した(nRMSavg)曲線の最大値出現時間は, 筋毎に異なっていた。投球において動的機能が重要視される肩関節回旋筋腱板において, nRMSavgが時々刻々と入れ代わる様子が明らかになった。筋間の相関性も筋の組み合わせによって異なり, 棘下筋と小円筋が強く相関していた。反復した投球における筋活動動態のばらつき, 連続時系列的なnRMSavgの変化, そして筋間の相関性の特徴は, 個人内での筋活動動態の特徴を検出するための指標として有効である可能性があると考えた。
著者
松原 麻子 車谷 洋 村上 恒二 青山 信一
出版者
広島大学保健学出版会
雑誌
広島大学保健学ジャーナル (ISSN:13477323)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.27-34, 2004-03
被引用文献数
1

頸髄損傷者の食事動作に関して,スプーンの使用方法を替えることにより,上肢各関節(肩・肘・前腕・手関節)の角度と運動の範囲がどのように変化するかを明らかにするために,三次元動作解析を行った.対象はC6レベルの頸髄損傷者5人で,「ヨーグルトを食べる」という課題を2種類の自助具(自助具1:母指側使用,自助具2:手掌側使用)を用い実施した.撮影された画像から時間と上肢各関節角度を求め,自助具1,自助具2使用時で比較検討した.結果,自助具1使用時には自助具2使用時と比べ,1回の食事動作におけるすくう動作が占める割合が多い傾向にあった.また,食物をすくう際に肩関節屈曲,肩関節外転の運動が多く必要とされ,一連の動作を通じて前腕が回内方向に移行し,肩関節が屈曲・外転方向に移行することが明らかとなった.以上より,前腕の回外運動が十分可能である場合には手掌側使用の自助具の導入が望ましく,また母指側使用で食事を行う場合には,食物を口へ運ぶ動作だけでなく,すくう動作においても肩関節の運動が必要になることを十分に考慮した上で,自助具の提供やセッティングを行うことが重要であることが示唆された.The purpose of the present experiment was to examine how the upper limb movements (shoulder, elbow, forearm, wrist) of patients with spinal cord injury (C6 level) were affected while using two types (type 1: pronation type, type 2: supination type) of self-helping device. Five subjects were required to eat 5 spoonfuls of yoghurt. We recorded the position of 11 light reflecting markers attached to the subjects' body with three cameras. We divided the eating action into three phases, the scoop phase, reach-to-mouth phase, and reach-to-plate phase. These kinematic landmarks were used to define the dependent variables. We calculated five joint angles (shoulder flexion, shoulder abduction, elbow flexion, forearm supination, wrist extension) with a three-dimensional video-based motion analysis system (APAS System, Ariel Dynamics), and analyzed how they changed at each phase. We compared them while using type 1 and type 2. While using type 1, the scoop phase played a larger part than other phases, and shoulder flexion, shoulder abduction and elbow flexion angles increased, not only in the reach-to-mouth phase but also in the scoop phase, and the supination angle decreased. This result suggests that patients who can supinate their forearm had better use type 2, and also that it is important to consider upper limb movements in the scoop phase when we provide patients with a self-helping device. In this study, however, we focused only on upper limb movements. We also have to analyze head, neck and trunk movements and examine the relationship among upper limb, head, neck and trunk.