- 著者
-
辻 平治郎
辻 斉
- 出版者
- 甲南女子大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1998
近年特性論の主流となった5因子モデルは特性語を網羅的に収集し分類する「語彙アプローチ」から生れてきた。しかし日本では、これを輸入・翻訳した、研究はあるが、5因子との関連を見た語彙研究はほとんどない。そこで本研究では、日本語で語彙アプローチを試み、5因子が確認されるかどうかを研究してみた。まず、23名の研究者が特性語および特性語化できそうな語を広辞苑から抽出したところ、13,198語となった。次に、18名の研究者がこれらの語が「通じるか」どうかを1〜3の3段階で評定し、現代人にはほとんど通じない語(評定平均値1.5未満)を削除したところ、11,145語が残った。内訳は、名詞8,134語、動詞1,099語、形容詞646語、副詞77語、連体詞4語、慣用句1,185である。さらに18名の研究協力者がこの11,145語の「意味が分かるか」「使うか」の評定を行い、上記の「通じる」評定を加えた3種類の評定平均値が2.5以上のものを、日常的に使われる特性語として選出したところ、3,779語となった。また、この3種類の評定すべてが3となった語が400であったので、これらを尺度化して、自己評定データ(有効回答490名)をとり、因子分析を行ったところ、11因子が抽出された。これらは適切なまとまりを示していたが、欧米の5因子とはかなり異なっていた。このような結果になったのは、(1)日本語に特有の因子構造があるから、(2)400語のリストに真の特性語以外のものが含まれていたから等の理由が考えられる。実際、第2次データベースを特性語化して文法を基礎として整理してみると、(1)人物のタイプを表す名詞、(2)永続的な特徴を表す形容語(形容詞および名詞や動詞を形容語化したもの)、(3)動作的特徴を示す動詞(名詞+動詞を含む)に分化するので、真の特性語に限定すれば、5因子に近いものが抽出されたかもしれない。