著者
近藤 龍彰
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.38-46, 2014 (Released:2016-03-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究は,幼児は答えられない質問に適切に「わからない」と回答するのか,およびその発達的変化を検討した。年少児27名(男児15名,女児12名,平均月齢49.81カ月),年中児31名(男児16名,女児15名,平均月齢61.45カ月),年長児34名(男児19名,女児15名,平均月齢73.74カ月)を対象に,3つの課題を行った。いずれの課題でも,幼児に答えがわかるだけの十分な情報を示した質問(答えられる質問)と,情報を示していない質問(答えられない質問)を行った。また,幼児の「わからない」という反応を引き出しやすくするために,「わからない」ことを視覚的に示す選択肢(「?」カード)を用意した。その結果,年少児時点でも答えられない質問に対して,適切な「わからない」反応を行うこと,「わからない」反応は年中段階で低下することが示された。さらに,明確な「わからない」反応以外にも「わからない」ことを示す非言語的な指標が存在することが示唆された。このことより,「わからない」反応を行える年齢が,先行研究で示されているよりも年齢の低い時期にまで拡張されること,年少児と年中児では「わからない」反応を行うことの意味が異なってくることが示唆された。
著者
魯 敏慧 井上 真理子 近藤 龍彰
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.13-32, 2020-10-23

本研究では,日本と中国のいじめに関する教育心理学的知見を比較し,両者の異同を検討した。その結果,「いじめの影響」についての知見では,精神的健康,自尊心といった概念を扱っているという共通性が見られた。ただし,「いじめの要因」,特にいじめを抑制するという観点,については中国の文献では見当たらず,逆に直接的に友達関係を尋ねる調査は日本の文献では見られなかった。いじめの実態としては,いじめと無関係の子どもの割合が多い,小学生よりも中・高校生でいじめ被害の割合が低下する,言葉いじめの割合が相対的に高いなど,日中で共通している部分は見られた。しかしそもそも日本ではいじめの種類で分類した研究が少なく,中国では身体いじめが必ず含まれているといった違いも見られた。加えて,中国ではどこで調査したのかという地域が言及されている一方で,日本ではそのような言及はまれであり,土地感覚の違いがうかがえた。今後の課題としては,扱う論文の範囲と量を拡大していくこと,特に社会心理学の分野を含め,広範な文献のレビューおよび文化比較を行う必要性が挙げられた。
著者
近藤 龍彰
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-18, 2022-03-30 (Released:2022-03-30)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究では,幼児はなぜ答えられない質問に「わからない(DK)」反応を行わないのかを検討した。本研究の参加児は3歳児24名(男児10名,女児14名),4歳児31名(男児12名,女児19名),5歳児35名(男児18名,女児17名)であった。参加児は,クローズドおよびオープン形式で答えられるあるいは答えられない質問が尋ねられた。次に,なぜ答えがわかったのか(わからなかったのか)を尋ねられ,その答えが正しいのかが確認された。その結果,5歳児のクローズド形式の答えられない質問へのDK反応は3歳児および4歳児よりも少ない,ただしオープン形式の答えられない質問へのDK反応に年齢差は見られない,5歳児はクローズド形式の答えられない質問の答えがなぜわかったのかを説明するのに推測したことに言及することが示された。5歳児は確認質問に対して「回答の変更」や「推測」の反応をする傾向はあったものの,これらの反応に年齢と関連した違いは見られなかった。これらの結果は,2つの異なった認知プロセス(「推測の無自覚」と「推測の自覚」)が,なぜ子どもがDK反応を行わないのかを説明しうることを示唆していた。
著者
近藤 龍彰
出版者
心理科学研究会
雑誌
心理科学 (ISSN:03883299)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.25-37, 2017 (Released:2018-03-15)
参考文献数
10
著者
近藤 龍彰
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.38-46, 2014

本研究は,幼児は答えられない質問に適切に「わからない」と回答するのか,およびその発達的変化を検討した。年少児27名(男児15名,女児12名,平均月齢49.81カ月),年中児31名(男児16名,女児15名,平均月齢61.45カ月),年長児34名(男児19名,女児15名,平均月齢73.74カ月)を対象に,3つの課題を行った。いずれの課題でも,幼児に答えがわかるだけの十分な情報を示した質問(答えられる質問)と,情報を示していない質問(答えられない質問)を行った。また,幼児の「わからない」という反応を引き出しやすくするために,「わからない」ことを視覚的に示す選択肢(「?」カード)を用意した。その結果,年少児時点でも答えられない質問に対して,適切な「わからない」反応を行うこと,「わからない」反応は年中段階で低下することが示された。さらに,明確な「わからない」反応以外にも「わからない」ことを示す非言語的な指標が存在することが示唆された。このことより,「わからない」反応を行える年齢が,先行研究で示されているよりも年齢の低い時期にまで拡張されること,年少児と年中児では「わからない」反応を行うことの意味が異なってくることが示唆された。