著者
中村 雅彦 進士 五十八
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.123-131, 1991-10-31

代々木公園,砧公園,駒沢オリンピック公園,神代植物公園の4公園内に設置された計12売店における売上げ高と(1)公園人口からの距離(2)周辺空間特性(3)売店の見える範囲の大小(4)設備の質(5)新旧感(6)建物の広さの6因子との相関関係を分析した。売上げ高は「売上げ日報」,分析は数量化I類等によった。その結果次の点が明らかになった。売上げへの影響因子は大きいものから(1),(2),(3),(4),(5),(6)の順となっており,売店の売上げは売店そのものの形態よりもその立地に大きく影響されることがわかる。なお休,平日それぞれの平均売上げ高比較は凡そ休日:平日=5:1であり,天候による平均売上げ高比較は凡そ晴天:曇天:雨天=5:2:1である。
著者
青木 いづみ 進士 五十八
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.120-129, 2002-09-20
被引用文献数
1

本研究は,東京都の建築紛争において特に,高さを問題とする紛争を対象に,紛争建築物の階数をその周辺範囲の建築物の平均階数と比較してどの程度突出すると紛争となるか分析し,住民の建築物の高さに対する許容限界について把握することを目的とした。紛争建築物の影響圏は紛争建築物から半径300mの範囲とした。また用途地域・地域性による許容限界の違いについて考察した。その結果,(1) 許容限界は影響圏の建築物の平均階数と相関関係にあり,(2) 許容限界は住居系地域ではY=1.9422X-1.2376,商業系地域ではY=3.0172X-2.7344,工業系地域ではY=6.3698X-8.7268の近似直線で表すことができた。(3) 許容限界は山の手・川の手のような地域性によって異なること,また(4) 影響圏内建築物の平均階数が3階以下で2階建てが70%以上を占めるような町並みでは,建築紛争を避けるためには,住居系・商業系地域では3階,工業系地域では4階を住民の許容限界と見なす方が安全である。
著者
楊 舒洪 進士 五十八
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.465-470, 1997-03-28
被引用文献数
2

中国杭州の「西湖十景」は,南宋時代(1127〜1278)に南宋画院の画家らに画題として描かれることによって成立した風景地である。本研究は,「西湖十景」が成立するまでの背景や形成要因ならびにその発展と変化を史実から明らかにすると共に,このような人文的景勝地(名所)の発展条件について考察した。その結果「西湖十景」は,(1)南宋の都としての杭州の発展(2)杭州と西湖の風土(3)西湖らしさというイメージの固定化と定着(4)権力者の芸術愛好による風景画の興隆と需要増(5)南宋画院における山水画の構図の改変などを背景として成立し,そして媒体の宣伝によって景名が保存されたり,時代とともに見直され,現在にいたっていることが判明した。
著者
小泉 直介 進士 五十八
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.23-32, 2007-06-20

本研究の目的は,我が国造園建設業が継承し,また継承すべき伝統的作庭技術,工法などの造園的本質と特質を明らかにしようとするものである。(1) 飛鳥時代にはじまる作庭をみると,身近に庭をつくるために在所の地勢を活かし,資材に"自然材料・地場材料"を使い,そして作る方法は"自然に順応した工法"をとった。この規範は,近世に至るまで,造られたかたちは変わっても,つくる過程の態様として大きな変化はなかった。(2) 職能分担などの業務形態の発展は,建築土木に比べて仕事の量は劣ったにも拘らず,社会経済の変化につれてこれ等と同様な軌跡を辿った。江戸時代には,植木,石などの資材の販売業が萌芽した。しかし,造園職能のうち現場で直接土に触れる職人の存在は,社会的に認知されることが希薄であった。(3) 作庭の出来を左右する作業者の心象は,素朴にして巧まざる自然の美しさを映そうとする行為を生むものであった。これらのことから現代の造園建設が,伝統として継承すべき根幹的な事項を明らかにした。