著者
鄭 暁静 大竹 美登利
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.95-104, 2018

<p>  Currently, in Japan and Korea, family characteristics and values are undergoing diversification. This is thought to affect students' attitudes toward family and home life. Accordingly, it is necessary to incorporate this situation into the teaching of home economics, in which students study the family and home life. </p><p>  Therefore, in this study, we conducted a questionnaire survey of high school students in Japan and Korea to clarify the structure of learning about gender equality in home economics education and how gender roles are influenced. </p><p>  It was discovered that, the greater the effect of learning about gender equality in home economics education, the more the students are faithful to school life, the more they emphasize the stability of life and work in the future, and the more they highlight the relationship between married couples in both countries. Furthermore, it became apparent that this consciousness has an influence on Japanese male students in that they take a positive stance about women's social participation.</p>
著者
鄭 暁静
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, 2018

【目的】<br>日本と韓国は、少子高齢化や家族形態の多様化、男女共同参画の推進等、家族をめぐる社会的な変化が激しく、その傾向が類似している。家族・家庭生活の学習を中心的に扱っているのは両国とも家庭科であり、相互の学習内容を学びあうことは、今後の両国の家族・家庭生活学習のあり方を検討する際に参考になるものと考える。そこで本研究では、日本と韓国の小学校家庭科における家族・家庭生活領域の学習内容を、教育課程及び教科書を用いて質的に比較分析し、類似点と相違点を明らかにすることを目的とした。<br>【方法】<br>日本と韓国の家庭科教育課程及び教科書の記述内容を質的に比較分析した。教育課程は、現在学校で使用されている教科書に基づき、日本は2008年告示の小学校学習指導要領、韓国は2009年告示の実科(技術・家政)教育課程を対象とした。教科書は、日本は2014年検定済みの小学校5、6年生用の家庭科の教科書2冊(開隆堂、東京書籍)、韓国は2014年検定済みの実科の教科書(5年生)4冊(Chunjae Education、Dong-a Publishing、Kyohaksa、Mirae-N)を対象とした。<br>【結果】<br>(1)教育課程において、日本の小学校学習指導要領解説家庭編では、「少子高齢化や家庭の機能が充分に果たされていない状況に対応し、家族と家庭に関する教育と子育て理解のための体験や高齢者との交流を重視する」と述べており、社会の変化に伴った家族・家庭生活領域の学習に重点を置いていることが分かる。韓国の実科(技術・家政)教育課程解説においても、「実科は多様な国家社会の要求に対応できるようにし、…(省略)…少子高齢社会、多文化社会での個人及び家庭生活に求められる自己管理及び自立的な生活の遂行管理能力を充足させる必要がある」と述べており、日本の家庭科と同様、少子高齢化等、社会の変化に対応した家族・家庭生活の学習が重点化して取り上げるようになっていることが分かった。一方、韓国では「多文化社会」というように、多文化家族(国際結婚家族)が増加している社会状況を踏まえ、家族・家庭生活領域の学習のあり方に多文化理解教育が明示されていることが日本と相違していた。<br>(2)両国の家族・家庭生活領域における内容要素を比較すると、日本の小学校家庭科の『A家庭生活と家族』は「自分の成長と家族」「家庭生活と仕事」「家族や近隣の人々とのかかわり」の3つの項目で構成されており、韓国の初等学校実科の『自分と家庭生活』は「自分の成長と家族」「家庭の仕事と家族員の役割」の2つの項目で構成されていた。両国とも自分の成長や、家庭生活における仕事に関しては同様に扱われていたが、韓国では地域社会を視野に入れた内容要素は扱われていなかった。さらに日本の「家庭生活と仕事」では、生活時間の有効な使い方について扱われているのに対し、韓国は、生活時間についての学習が家族・家庭生活領域では扱われておらず、住生活及び消費・環境領域である『快適な住居と生活資源管理』の「お小遣いと時間の管理」の項目で扱われている違いが見られた。<br>(3)教科書の記述内容をみると、両国とも扱っている「自分の成長と家族」「家庭生活と仕事」の項目についても、具体的な学習内容には違いがあることが明らかになった。例えば「自分の成長と家族」では、日本では、家族に支えられて自分が成長してきたことを理解するという学習内容であるのに対し、韓国では、自分の成長過程を乳児期・幼児期・児童期に分け、身体的・精神的・社会的成長の特徴を理解するという学習内容であった。全体的に韓国の小学校家庭科の教科書の方が、日本より内容量が多く、多文化家族等の様々な家族形態や、家族とジェンダー、家族・家庭生活と関連した職業(健康家庭士や家族相談士等)の紹介等、日本の小学校家庭科の教科書では扱われていない学習内容が多く見られた。
著者
鄭 暁静 大竹 美登利
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

1.目的 今日、家族・家庭生活には様々な課題があり、日本と韓国はこれらの状況が類似している。家庭科教育はこうした家族・家庭生活に関する課題を主に扱っており、どのような内容を取り上げどのように学ばせるかは、教師の家族・家庭生活意識に影響されることも多い。また、その授業内容や方法によって生徒の学びは相違し、生徒の家族・家庭生活意識に与える影響は大きいと考えられる。そこで、本研究においては、日本と韓国の家庭科教師を対象に、教師の家族・家庭生活意識及び授業実態を調査し、日本と韓国の家族・家庭生活領域の教育の実態の違いを明らかにすることを目的とした。2.研究方法 (1)調査方法:日本の普通科高等学校(2000校)と韓国の一般系高等学校(1500校)の家庭科教師宛にアンケート用紙を郵送し、返送してもらった。 (2)調査期間:韓国は2013年3月上旬発送、日本は5月上旬発送し、それぞれ3週間後を締め切りとして返送してもらった。 (3)調査対象:有効回収数、韓国209名、日本570名であった。 (4)調査内容:学校の雰囲気、男女平等意識、結婚・家族生活意識及び授業の内容など。3.結果 (1)学校の雰囲気は家庭科教師自身の男女平等意識や家庭生活観に影響を与えるものと考えられる。そこで、学校の雰囲気について「周囲と違う意見を言いにくい雰囲気がある」など、9つの項目について尋ね、「全くそう思わない」(1点)、「そう思わない」(2点)、「そう思う」(3点)、「とてもそう思う」(4点)の4選択肢の中から1つを選ばせ、4段階評定尺度によって平均値を出し得点化した。その結果、「教員間の意思疎通がうまく取れている」、「教員会議などで活発な議論が交わされている」、「男性教員の方が女性教員より管理職から信頼されている」の項目においては韓国の方が得点が高く、日韓の間に1%水準で有意な差があった。一方、「新しいことをはじめにくい雰囲気がある」の項目は日本の方が得点が高く、日韓の間に1%水準で有意差があった。 (2)男女平等意識をはかるため、「能力や適性は男女で異なる」など、11の項目について、4段階評定尺度によって得点化した。その結果、「女性の校長、教頭を増やした方がよい」という項目において、日本の方が得点が高く、日韓の間に1%水準で有意差があった。 (3)結婚生活に求めるものの重要度について「精神的な親密さ」など、10の項目について尋ね、4段階評定尺度によって得点化した。その結果、「経済的な安定」以外の全ての項目において韓国の方が得点が高く、中でも「性的満足度」、「子どもを生み育てること」、「趣味が同じであること」、「社会的な地位を築くこと」、「同じ人生観、価値観を持っていること」、「親や周囲の期待に応えられること」の項目で1%水準で有意差があった。 (4)家庭科の授業内容の中で、現在、重点をおいて教えている内容について、複数回答で尋ねた。その結果、韓国は「配偶者の選択と結婚」が75.0%、「妊娠と出産」が63.0%、「家族の関係と家庭の機能」が54.2%など、結婚・家族に関しての内容が多く扱われていた。一方、日本は「食事と健康」が91.7%と突出して多かった。また、今後、重点をおいて教えたい内容について、複数回答で訪ねた結果、日本と韓国両国とも1位は現在と変わらないが、韓国は「高齢者・障害者の問題」、「共生社会と福祉・社会的支援」が、日本は「職業・キャリア教育」、「生活設計」が新たに注目されていた。